54.祠の不思議
祠は神様がやって来るところだそうだ。いつもはいない神様がたまに訪れる場所らしい。マリーは小さい時から祠と一緒だったこともあり、祠がやってくると思っていたようだが、祠はそんなに面倒見のいいものではないようだ。それに祠には常に神がいるわけでもなく、いないときもあるようだ。
知世は、広が忙しいと言って最近会ってくれないので、頭に来ていた。今日は知世一人で行動することにした。そして、以前見た祠を探し出して、祠に広があってくれない不満をぶちまけることにした。
家を出て、車で以前見た祠のところに行った。しかし見付からない。記憶もはっきりしない。たぶんこのあたり、そんないいかげんな感覚で探し回っている。時間だけが過ぎていく。
「もういいや、帰ろうかな」
そんな言葉をつぶやいた時、頭の中に
「こっちだよ」
という声が聞こえてきた。
「もっと早く言ってくれればいいのに」
と思ったが、神様は気まぐれなのか、知世が右往左往するのを楽しんでいたのか、それとも今神様がこの祠に降臨されたのかそれは分からない。
その声の方角に歩いて行くと、はたして祠があった。
「こんなに草に覆われていたら見つけられるわけないじゃないの」
そう言って、知世は草刈りを始めた。
ついでに祠に付いた苔や、祠の中にあった落ち葉を取って、掃除してあげた。しばらくすると祠は見違えるように綺麗になった。
「こんなものかな、せっかく綺麗にしたのだからついでに写真に撮って」
と思ってカメラを構えた。すると周りの草が目に入る。
「ああ面倒」
そう言ってまた草刈りを始めた。
そして、やっと写真を撮ることが出来た。
すると祠が
「ありがとう。このお礼はするね」
そう言ったような気がした。
その後は今日の本命、広の悪口と愚痴を言いだした。
「広はね、結婚すると言っておきながらなかなか式の日を決めてくれないのよ。私がこの日にしようと言うと、広がそのあたりは会社が忙しいというのよ。
そこで日を変えたら、今やってプロジェクトの佳境に入った時期だとか文句ばかり言う。こんなこと言っていたらいつまで待っても結婚できないじゃないの。
私は釣った魚じゃないのよ、エサももらわないと逃げちゃうわよ。今度広に会ったら言ってやろうかしら。でも分かれるとか言われると私立ち直れないし、やっぱり今の言葉なしね。
それから中々デートしてくれないのよ。休日まで会社に行く必要ないじゃないの。私なんて休日はすべて広のために空けてあるのに。
今日だって、本当は2人で映画を見に行くはずだったのに、昨日の夕方急に電話してきて、『悪い明日行けなくなった。この埋め合わせはいずれする』って、あんまりじゃないの。それに埋め合わせをするって何時のことになるのか分からないじゃないの。それからね、………」
そうやって一頻り広の悪口と愚痴を言ったら、腹の虫がおさまった。
しばらく辺りを見て、さわやかな空気を吸って、瞑想。
「うんなんかいい気分」
一区切りついたので、帰ることにした。
行くときはずいぶん迷った道だったが、帰りは祠の導きかすんなり帰れた。
家に帰って、取ってきた写真をパソコンで見てみたら、草の刈り残しが目立つ。どうしようかなと思ったが、これはすべて広のせい、広が会ってくれないから悪いことにした。悪いのはすべて広のせいすることで気持ちが落ち着いた。
でも祠さんに悪いような気がして
「ごめんね、祠さん。今度行った時はもっと綺麗に草を刈るから」
そう謝る知世であった。
その後、知世が前世で死んだとき、マリーとして転生できたのは祠のお礼かもしれない。そして、広がニーゲンブルグ公爵として転生できたのも祠の導きかもしれない。
(終わり)
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
続けてこの後7:10、7:20、7:30、7:40に次回作品「ダンゴムシの記憶を持つ男の物語」の1話から4話を公開したいと思います。
今後とも私の小説
(連載中)「転生者とバグでない異世界人の物語」
(連載中)「牛乳とチーズは違う味がする(顔だけ男の気ままな旅)」
(完結)「泡沫の恋の行方と花時計の思い」
(完結)「帝国皇女の憂鬱(前世の夫の生まれ変わりを捕まえろ)」
(短編・完結)「妖精に成れなかったダンゴムシの物語」
(短編・完結)「真冬の祭りそして祠がつなぐもの」
(短編・完結)「雨の日は嫌い、雨の日はやっぱり嫌、でも雨の日もちょっぴり好きかも」
(短編・完結)「北の関を死守せよ、野望は泡沫の夢と消えて」
をよろしくお願いします。




