51.学院卒業
王都の騎士団によるダンジョンの魔獣討伐は難航しているようである。しかし、騎士団が夜もダンジョンで魔獣が出てくるのを阻止しているので、王都の夜の魔獣襲撃はなくなった。
王都の市民や寮もやっといつもの体制に戻った。学院祭も中止なったことから、またいつもの日常が戻ってきた。もうマリーも3年生、あと3か月ほどすると学院も卒業である。いろいろあった学院、しかし、そのほとんどの場面に魔獣の氾濫が関係している。
1番印象に残っているのは、スタンピードが発生して、王都の東側が魔獣に蹂躙された時である。しかし、一番危険だったのは寮に魔獣の襲撃があり。寮生を庇いながら、多数のバッタと対峙した時である。祠が「死ぬなよ」と言っていた意味が分かったような気がした。
もう広のことを考えるのはやめにした。考えても無駄である。自分は広以外の人と結婚する。時々、すべてを投げ捨てて「愛に生きてみたい」と思う時もあるが、しかし、その愛の相手である広がどこにいるのか分からない。
この世界に転生しているのかさえ分からない。いるかいないか分からない相手に操をささげても意味がないのである。
それに家族や領民の顔を思い浮かべると、やっぱり公爵と結婚するしかないと思う。私は私の生まれたジゲンハルト男爵領が好きだ。みんなが顔見知り、そしてみんなが家族、そんな暖かい町が好きだ。公爵と結婚してもジゲンハルト男爵領のことを思って生きて行こう。出来ることなら私が産んだ子供がジゲンハルト男爵領を好きになってくれたらいいなと思っている。
あれから祠にも会えない。祠も忙しいと言っていた。祠は何なのか。最初は神に等しい存在かと思っていたが、そうでもないようだ。最後に会った時は、もがいているようだったし、時間がないとも言っていた。出来ないこともあるようだ。
そして期末試験になった。結果はいつもと同じ5番だった。これで学院の教育課程はすべて終了。公爵夫人になるのなら必要はないかと思ったが薬師の資格は取った。これで自分が作ったポーションを自分の名前で販売できる。若し公爵に離縁されても生きていける。
卒業式は淡々と進んで行く。前世の記憶があるので、比べてしまう。ただ、色々なことがあって覚めているのか涙は出て来ない。
成績優良者として表彰された。卒業証書をもらった時校長が
「マリー、おめでとう」
と言われた。私は
「ありがとうございます」
儀礼的な言葉を返した。
これが前世だったら、涙していたように思う。高校の時は制服、大学の時は袴?着物?いまいち、記憶がはっきりしない。ただ前世と一番違っていることは広がいないことだ。大学の卒業式は広に見てもらう。そのため明いっぱいおしゃれをしたように思う。
そんな事を考えていたら卒業式が終わっていた。
卒業式の後は学院主催の卒業パーティーが行われる。婚約者のいる生徒は婚約者と、いない生徒は家族と一緒に参加するらしいが、私の場合婚約者はいるが、さすがに親と同じぐらいの年、しかも豚の様な体形、気後れしたのか
「パーティーには出席できないので一人で参加するように」
との連絡をもらった。
家族もうちは貧乏男爵家、王都へ来るのにも金がかかる。同じく欠席の連絡をもらった。家族が王都に居る卒業生は家族がきているようだが、寮生ではアンナとディアナは家族が来るそうだが、エルザは私と同じで1人で出席だそうだ。
卒業パーティーも冷めた目で見ている。広のいない世界はやはり自分を傍観者にしてしまう。決められたことを淡々とこなす。そこに感情がない。
主催者の挨拶があり、生徒会長の挨拶、そして生徒会長の婚約者とのダンス、その後の参加者のダンス、私はダンスはしない。婚約者がいるのに他の男性とのダンスは控えるべきだ。
壁の近くで食事をとっていると。そんな婚約者もいなくて、家族も来ていない学生が集まってくる。すると
「マリーさんありがとう」
と言われた。
キョトンとした顔をしていると
「王都が魔獣に襲われた時、教会の中に侵入した魔獣を倒してくれましたよね。マリーさんがいなかったら私は死んでいたと思います」
と言われた。
ほかにも
「ダンジョン研修ではいち早く魔獣の襲撃を知らせてくれたし、私たちを守ってマリーさんは襲ってくる魔獣を倒してくれましたよね。私は逃げるのに精一杯で何の助けもできなくマリーさんには悪いことをしたと思っているのですよ」
と言われたりした。
私が助けた生徒も多かったようだ。こうして卒業パーティーは終わった。
後は結婚式を迎えるだけとなった。




