45.ダンジョンの変化
ダンジョン研修については、けが人が出たことで問題になった。最初、3年生がダンジョンにもぐった時は何も問題がなかった。出てきた魔物もゴブリンぐらいで、学院の生徒でも問題なく倒せた。しかし、今回2年生がもぐった時はバッタの魔獣が襲ってきた。それも群れになってである。とりあえずダンジョン研修は中止となった。
それと問題になったのは最初マリーが異変を伝えたのにそれを無視して教師が先行したことだ。これについては怪我をした生徒の親から強い抗議が寄せられた。教師が魔獣の気配を察知できなというのは、問題である。しかし、魔獣の気配を察知できる教師など学院に居ない。そんな強い人間は騎士団が離さない。学院の教師は騎士団の第一線を退いたような人間がなっている。つまり安全を確保できないのにダンジョン研修を強行した学院が悪いということになった。
それと、今回問題になったのは、ダンジョンから日々出てくる魔獣が変化していることだ。これだと、一旦騎士団が調査して安全とされたダンジョンでも次の日には強い魔獣が出てくる可能性があるということだ。
すると誰もが昨年の王都の魔獣の氾濫を思い浮かべた。そこで王宮は再度騎士団を派遣してダンジョンの調査を行った。すると、第1階層では昆虫の魔物が多数出現している。さらに第2階層に行くと狼系の魔獣が群れになっている。もう以前騎士団が調査したときのダンジョンではなくなっていることが判明した。
王宮としても再度の魔獣の氾濫は防がなければならない。そこで第1~第5階層までの魔獣の討伐を騎士団に命じた。そのようにして騎士団がダンジョンの魔獣討伐を行っている時、王都近郊で新たなダンジョンが発見された。そしてそこから魔獣が湧き出ているというのである。
王宮は、このダンジョンの魔獣討伐を行うために、王都の騎士団を2つに分けて、その分けた騎士団に対応させようとしたが、1つの騎士団を2つに分けたのでは戦力が1/2である。下手するとダンジョン2つとも魔獣討伐に失敗するかもしれない。
そこで王宮は王宮の文官や法衣貴族にも魔獣討伐に参加させた。とにかく人海戦術である。しかし、今まで筆を持っていた人間にいきなり剣を持たせるのである。魔獣討伐は遅々として進まなかった。
王宮は冒険者ギルドにも依頼を出したが腕の立つ冒険者はすでに騎士団に雇用されており、魔獣討伐の依頼を受ける冒険者はいなかった。
そこで、王宮は魔獣討伐用の武器を募集した。とにかくできる対策は何でもする。そうしないと昨年の魔獣氾濫の二の舞である。しかし、募集したからといって、すぐに新しい武器が出てくるわけもなく。これもすぐに実用化できるような武器も出てこなかった。
学院祭で選ばれた銃のように魔石を用いて球を発射する装置も試作品が応募されたが、騎士団が実際に使ってみると、重くて持ち運びが不便なこと、さらに、重いために昆虫のように素早く動く魔獣には狙いがつけられないこと、さらに玉の装填に時間がかかるため連射が効かないということで不採用となった。
最後の方法として、他の騎士団から、応援を募ることにした。すると、その騎士団が派遣されている地方の貴族が大反対した。とにかく魔獣の氾濫は国全体の問題なのである。王都だけ優先するというのは地方を見捨てることになる。
そもそも、魔獣の氾濫を引き起こした一番の原因は王都の騎士団が弱すぎるせいである。このように攻められると王宮としても反論できない。
結局王宮は地方の貴族と交渉して、地方貴族の税を軽減することで、地方貴族の了解が得られた。そして、やっと地方の騎士団からいくらかの人間を王都の騎士団に引き抜くことに成功した。そうして、強化された騎士団をもって、やっと2つのダンジョンの魔獣の封じ込めに成功した。
王都の住民は、やっと王都の安全が確保されたのを知ってほっとした。マリーたち学院生も王都のダンジョンがどうなるか気になるところであったが、封じ込めに成功したとの王宮の発表後はやっと授業に本腰を入れるようになった。
心ここにあらずといった状態が続いていたが、やっと授業に身が入るころには2学年の後期は終わっていた。そして年度末試験になった。
マリーは今回も5位であった。学院は実技重視の姿勢を打ち出して、実技点の配分が高くなっているが、マリーの場合、魔法が生活魔法で評価が低い。だからこれ以上は上がりようがないのである。
しかし、それなら、ダンジョン研修の時に魔獣の相手をマリー以外の生徒がしてくれてもいいのにと思った。その時は気が動転して逃げることに精一杯で、戦うという考えがなかったようである。攻撃魔法が使えても戦うという考えがないと宝の持ち腐れだと思った。




