44.ダンジョン研修
学院祭が終わって、またいつもの日常が戻ってきた。平日の午前中は座学、午後は実技である。そして休日はポーション作りである。
このままの生活が続くのかなと思っていたら、学院も実践重視の姿勢を貫くため、ダンジョン研修というのが追加になった。午前の座学と午後の実技の時間を入れ替えて、1日でダンジョンにもぐって返って来るということらしい。
もぐる階層は第1階層だそうだが、以前のダンジョンならマリーたちも寮の同室のメンバーともぐっていたので問題ないが、昨年の魔獣の氾濫以来ダンジョンは不気味である。問題ないのかなと思ったが、騎士団が調査済みとのことであった。本当かな、不安だけが付きまとう。
その日は剣術と魔術の先生に連れられてダンジョンの入り口に来た。受付で名前を書いて、教師を先頭にダンジョンの階段を下りて行った。
教師がダンジョンの階段を降りて第1階層に出た時、遠くで魔獣の叫び声が聞こえた。これはゴブリンでない。マリーはとっさにそう思った。教師は気にしていないようである。
マリーの剣術の腕は女子で1番だったので、女子の先頭に居た。そこで、後ろの女子に向かって
「ダンジョンがおかしい。以前は第1階層はゴブリンしかいなかった。今の叫び声はゴブリンじゃない、もっと強力な魔獣がいる」
すると後ろの女子がざわめいて、歩みを止めた。
すると、前を行く男子が
「そうなのか、俺ダンジョンはあまり来たことがないから、危ないのか」
「危ない、私はそう思う」
すると前を行く男子も歩みを止めた。
そうやって男子も女子も前へ進もうとしなくなったので、前を行く教師とそれに従う腕自慢の男子数名だけが前を行く結果となった。そうしたら教師が
「何をしている早く来ないか」
と言ったので
「先生、本当に大丈夫なのですか、何かいるのではないですか」
「何を言っているこのダンジョンの安全は騎士団が調査済みだ。早く来い」
その時何か黒い影がよぎった。マリーはとっさに剣を抜くと一気に歩みを止めた男子の前へ出てその黒い影を切った。ドサッと音がして、その黒いものが横たわった。見ると大きなバッタだった。
「みんな魔獣が出た。すぐに引き返して」
マリーが叫ぶとマリーの後ろにいた女子や歩みを止めた男子は一斉に入り口の階段に駆け寄った。マリーは後ろの男子や女子を庇いながら襲ってくるバッタを切った。
バッタの群れがマリーたちに襲い掛かる。マリーは後ろの男子や女子を庇いながらバッタに睨みを効かす。若しバッタが襲ってくれば目にも止まらない速さで剣を振るう。
もう先行する教師がどうなっているのか分からない。とにかく先行する教師とマリーたちの間に無数のバッタが降って来たのである。
マリーは魔法が使えないことになっている。魔法を使いたいという誘惑にかられるが、それは最後の手段、今は出来るだけ剣で防ぐことにした。
しかしマリーの後ろの男子も女子も不甲斐ない。マリーがこれだけ奮戦しているのだから少しぐらい手助けしてもいいと思うのだけど、逃げることで精いっぱいで襲ってくる魔獣はマリーが何とかすると思っているみたいだ。
それでもようやく第1階層の入り口のところまで避難できた。もう前を行く教師たちのことは分からない。自分たちを守ることで精いっぱいである。
教師は教師で何とかするだろうと思った。今更駆けつけても手遅れである。それに今ここをマリーが離れたら後ろの男子や女子が襲われる。その後は避難した男子や女子全員で階段を上がって受付のところに戻ってダンジョンの異変を知らせた。受付の人はすぐに騎士団を呼びに行ってくれた。
しばらくすると教師たちが戻って来たが全員大怪我をしている。マリーは持っていたポーションをすぐに渡したが、この怪我では全快は無理だと思った。その後騎士団が駆けつけて怪我をした生徒と教師は治癒魔法がかけられたが、後遺症の残る生徒や教師もいるようである。




