32. 夏祭りと領内の魔獣討伐の続き
それからもマリーの男爵領での魔獣狩りは続いた。そして、ジゲンハルト町から北側の地域はほぼ、魔獣の討伐が完了した。
そんな中父親が、
「男爵領の北半分の魔獣狩りも終わったことだし、秋になるとマリーがまた王都へ行ってしまうので、簡単な祭りをしようかなと思うのだがどうだ」
と言い出した。
祭りは久しぶりだ。昨年は王都にいたので秋祭りは行けなかった。昨年はクラスのエマと王都の下町の町内の秋祭りに行っただけだ。あの時は楽しかった。
「お父さん、ありがとう」
「秋祭りみたいに盛大には出来ないが、美味しい物を食べてみんなで騒ぐくらいはいいだろう」
「私も手伝うね」
それから祭りの準備がはじめられた。祭りと言っても、美味しいものを食べるだけ。町の広場にテーブルが並べられて、そこに料理が出されるだけである。
前世の祭りを思い出したマリーは、それを少しアレンジすることにした。中央にステージを作って、そこで歌を歌ったり、芸を披露してもらったりしてもらうことにした。また、ステージの周りを歌に合わせて踊ってもらうことにした。
出来たら前世の屋台の縁日の様にしたかったが、カステラや金魚すくいがないので諦めた。
料理はマリーたちが狩った魔獣の肉がふるまわれた。とにかく魔獣の肉は有り余るくらいあるのである。料理が不足することはなかった。唯お酒は開始早々に無くなった。
その日はみんなで笑い、飲んで騒ぐ、懐かしい顔にも会える。マリーは幸せだった。
兄の子供はもうじき1歳、名前はアルベルト、男の子だ。まだ歩けないが、言葉は「あーあ」とか「うーう」とか言っている。可愛い甥である。
その子にマリーは「マリー」と言わせようと盛んに「マリー」「マリー」と言っている。すると兄が「カール」「カール」と自分の名前を言わせようとしている。
そのうちステージで町の歌自慢の人が歌を歌いだした。それに合わせてみんなが踊り始めた。マリーもその輪に交じって踊った。
そうして夏祭りの夜は更けていった。
次の日はあと始末。しかし、男は二日酔いで役に立たない。女たちが「男は役に立たない」と言いながら、順次後片付けをしていく。残った料理や皿それにテーブルなどは女が片付けたが、ステージは罰として男たちに片付けさせることになった。
二日酔いの頭をくらくらさせながら、女たちの叱責で男たちがステージを片付けていった。それをマリーは笑いながら見ていた。
夏祭りが終わったので、また今度は領内の南半分の魔獣討伐が始まった。このころにはマリーは男爵家の最大戦力として認識されるようになった。
とにかく効率的に魔獣を狩るために、1日が終わると男爵邸に帰るのではなく、宿泊は村に泊めてもらうことにして、ルートを決めて村々を回ることにした。
そして、魔獣が居そうなところを聞いて、そのあたりに行って、マリーが辺り一帯に氷の矢を打ち込み、出てきた魔獣を倒していく方式に切り替えた。マリーの負担は大きいが、これだと短時間に多くの魔獣を狩れる。
今日も、魔獣がいるという森にやって来た。ここは森が深い。強い魔獣が居そうである。マリーが氷の矢を辺り一帯に打ち込むと、遠くで「ウォー」と言う叫び声が聞こえた。従士の一人が「地竜だ」と言い出した。地竜は強い。このあたりでは以前はいなかった魔獣だ。
しばらくすると、大きな音がして木々が倒される音がする。そしてその音がこちらに近付いてくる。地竜は体が固いので剣や槍は通らない。
そこでマリーは落とし穴を作ることにした。とっさにマリーたちの目の前の地面の土をマリーの異空間に収納した。そして穴の開いたところを草で隠した。
すると、すぐに地竜が突っ込んできた。ものすごい迫力である。前世の大型トラックが突っ込んできたような感じである。
そして、そのまま穴に落ちた。そこですかさずマリーは異空間に収納した水を穴に注ぎこんだ。しかし、水の量が少なかったのか頭を水の上に出している。
そこで、以前異空間に収納してあった岩を地竜の頭に落としてやった。すると地竜はぐったりして倒れた。頭も水の下になったので、「しばらくすれば死ぬだろう」と思った。
マジックバッグに収納と唱えたが、最初は収納できなかった。しかし何回かやっているうちに収納できた。地竜は死んだようだ。
その後も村々を回って、魔獣討伐を続けた。そしてマリーが帰るまでには男爵領の南半分も魔獣討伐が完了した。




