26.新学期と学院祭
男爵邸に着いたその日は夜というとこで、玄関で軽い挨拶をした後は、そのまま客室に通された。
次の日の朝食では男爵家の家族の人たちと顔を合わせた。男爵夫妻に、エルザのお兄さん夫婦それにその子供のアンナさん2歳。
昨日のオーガの話になって、私の剣の腕がオーガを単独で倒すぐらいだということで、すごく褒められた。でも
「上位貴族に目をつけられても困るで、どうか内密に」
とお願いした。
男爵領では、小さい町で、あまり観光地のようなところはないようだ。私たちは森へ行ってキノコを採ったり、川で釣りをしたりして暇な日を過ごした。これが田舎の過ごし方だそうだ。
アンナとディアナは物足らないようだったが、私は実家のジゲンハルト町に帰ったようでうれしかった。
それからしばらくして私たちは王都に帰った。もう期末休暇も後残りわずか。それから数日して新学期となった。
新学期では剣術実技と魔法実技の時間がこれまでの週1回から週2回となった。また魔獣学という科目が新たに新設され魔獣の特性などを教わることになった。これで午後はほぼ実践重視の科目となった。
これは、最近の魔獣の氾濫に起因している。私たちがジゲンハルト町に行った時も「普段だったらあんなところでオーガなど出ない」と言われた。そのように普段魔獣が出ないところでも魔獣が頻発するようになったのである。
そのためにより強い従士が求められるようになったためである。
しかし、学生の気質がすぐに変わるわけはなく、これまでの日常が戻ってくる。マリーは平日は学院に通い、週末は1日はポーション工房でポーション作り、ただし作るポーションの量はこれまでの2倍、おばあさんが
「マリーは魔力量が多いね、普通の薬師は一度にこれだけたくさんのポーションは作れないよ」
と言っている。作ったポーションは帰りにギルドに納めている。
次の1日は寮のメンバーと冒険者活動。単独の方が楽だけど、彼女たちはほっておけない。とにかく危なっかしい。
今日も私が、魔獣を威嚇することを前提とし戦い方をしている。「無詠唱」と言っても聞いてくれない。魔獣を見ると必ず詠唱する。そうすると魔獣がすぐ近くにやって来る。威嚇して動きを止めないと彼女たちが死んでしまう。
5月には学院祭が行われる。学院祭では剣術大会や魔術大会が開かれる。楽器の演奏やレース編みや刺しゅう、アクセサリーを展示して売ってもいい。生徒はどれかに参加しなければならない。
どうするか悩んだが、剣術大会に出て上位貴族と当たって、傷つけたりしたら大変である。そこで、簡単な実験をして見せることにした。
マリーの異空間で、ドライアイアイスを作ることにした。二酸化炭素を高圧で圧縮して液体の二酸化炭素にして、それを噴射させて、出来たものを押し固めて作る。人に見せられないため、これらの作業はすべてマリーの異空間の中でした。
できたドライアイスを水に入れて白い霧を作ることにした。単に白い霧が出来るだけなので少し見栄えがしないかなと思ったが、最近は目立ってきているのでちょうどいいかなと思った。
しかし、これだけではあまりつまらないので、水に溶ける紙を使ってその場で刺しゅうして見せることにした。
水に溶ける紙は前世のトイレットペーパーをイメージしてマリーの異空間の中で、細かく切った紙に糊を少な目で力任せに固めて作った。
マリーのショーは、まずコップの中にドライアイスを入れて白い気体を発生させて注目を引く。
次に、水に溶ける紙の上にお客さんの要望する図案を書いてもらう。そしてその図案を布に張り付けて、上から刺しゅうをする。
次に、その布を水に入れて紙を溶かす。
最後に、その布を乾かして完成です。
クラスの男子は剣術大会や魔術大会に出る生徒が多かった。マリーも誘われたが、相手に怪我をさせるといけないと断った。
女子はマリーみたいに刺しゅうやアクセサリーを売る子が多かった。何人かで集まって喫茶店の様な物をする子たちもいた。
マリーは1人ですることにしたので、与えられた場所は校舎裏であまり人の来ない場所だった。
朝からやっていたが、来てくれたのはクラスの女子と寮の同室のメンバーだけだった。その子たちは一様に水の中にドライアイスを入れると白い霧が出ることに驚いていた。
また水に溶ける紙を用いた刺しゅうの仕方は非常に興味を持ってみていた。アンナとディアナには「この紙を是非親の商会で売らしてほしい」と言われた。それで、学院祭が終わったら、商業ギルドで登録して、アンナとディアナの商会と契約することになった。




