27.ダンジョン
学院では武術を推奨しており、同室のメンバーとはこれまでは王都近郊の森に行っていたが、今度ダンジョンに行くことになった。
マリーとしてはどちらにしてもお荷物なので、出来れば簡単な所の方がいいのだが、付き合いなので仕方がない。
城門を出て、ダンジョンまで歩いて行って受付をした。階段を下りて行くと広い空間に出た。地面の下にこんな広い空間があるというのは不思議である。マリーの異空間と同じである。するとこのダンジョンにも管理者みたいのがいるのだろうか。分からないことばかりである。
最初の階層は第1階層、弱い魔物しか出てこない。マリーがアンナとディアナに
「今日も詠唱する気だったら、私手伝わないから、魔物の威嚇はエルザにしてもらって」
「どうして、これまではしてくれたじゃない。それにエルザだと2体出ると無理だし」
「その時は3人仲良く剣で戦いなさい」
「わたし剣苦手、魔獣が近づいてきたら怖くて剣なんて振るえない」
「だったら、最初は弱い魔物から練習することね」
そうやって不毛な言い争いをしていると前からゴブリンが3体やって来た。
「私手を出さないから頑張ってね」
するとエルザが剣を抜いて突っ込んでいった。仕方なく、アンナとディアナも剣を抜いた。しかし足が震えている。
アンナとディアナはゴブリンと対峙したが、剣を交わすどころか、すぐに逃げ出した。そしてマリーの後ろに隠れた。
マリーは「世話の焼ける友達だ」と思いつつも、ゴブリンが近くへ来たので、2体のゴブリンに向って行って、首をはねた。そして返り血がかかるのを、そのまま走り抜けてさけた。マリーの後ろにいたアンナとディアナに首のなくなったゴブリンが倒れ掛かっていった。
「キャー」
ゴブリンの返り血を浴びてアンナとディアナは悲鳴を上げた。
「ゴブリンの返り血を浴びて悲鳴を上げるぐらいなら、『ダンジョンに行こう』なんて言わなきゃいいのに」と思った。
それからも、第1階層でゴブリンを相手に修業したが、アンナとディアナは結局1体のゴブリンも倒すことが出来なかった。エルザはもうゴブリンぐらいだと余裕のようである。
クラスでも男子はパーティーを組んでダンジョンに行っているようである。ダンジョンだと森へ行くより魔獣に出会う確率が高い。それに深い階層に行かなければ、弱い魔獣だけを相手にすることが出来る。つまり効率的にレベルを上げることが出来るのである。
しかし、女子は男子ほどそんなに頻繁には森にもダンジョンにも行っていないようである。学院が推奨するので冒険者登録はしたが、活動はあまりしていないようである。
そういう意味では寮の同室のメンバーは活動的なのだが、マリーありきというのはマリーとして納得がいかない。出来れば自分たちの実力で戦ってほしいと思っている。
先週は、ゴブリンの返り血を浴びたので、今週は行かないのかなと思っていたのだが、朝アンナが「さあ、今日もダンジョンへ行こう」と言い出したので、今日もダンジョンへ行くことになった。
いつものように受付をして、階段を降りるとそこは第1階層、しかし、今日は様子が違っていた。
漂ってくる血の臭い。マリーは
「みんな、気を付けて、今日はおかしい」
そう叫ぶと、剣を抜いて先頭に出た。
辺りを注意深く観察すると、遠くに群れる狼が見える。このダンジョンではこれまでは第1階層ではゴブリンぐらいしかいなかった。狼なんているはずがない。
「みんな、逃げるわよ。狼がいるそれも群れになっている。何匹いるか分からない」
「マリーだったら狼も倒せるのじゃない」
「私が戦っている間、アンナとディアナは自分を守れる?狼は何匹いるか分からないのよ。きっとあなた達にも向かってくるわよ」
「狼なんて無理。わかった。逃げる」
そうして、みんなはまた元来た階段を上がっていった。マリーは最後尾で狼が向ってこないか警戒していたが、狼は階段まではやってこなかった。
受付に戻ると、受付人が不思議そうな顔をしている。
「第1階層で狼の群れに出くわしたので逃げて来た」
そう言うと、受付人はすぐに、「このダンジョンは閉鎖されました」と言う張り紙をした。そして本部へ連絡を入れに行った。
しばらくして騎士団がやってきて、ダンジョンにもぐっている人の救出に向かった。
マリーたちは初心者、とても狼の群れとは戦えない。ここにいてもできることもないのでマリーたちは寮に帰ることにした。
その後の発表で、あのダンジョンには第1階層に本来いるはずのない強い魔獣が現れたそうである。それで、安全と思って入っていった弱い冒険者が10人ほど襲われて、そのほとんどが死んだそうである。
危険を察知することがいかに大事かを身をもって知らされた事件であった。




