24. 学期末試験と男爵領への旅行
年が明けると、もう学期末試験まっしぐらである。普通だと試験勉強で右往左往するのだが、前世の記憶を思い出してからのマリーは優秀であった。
教師が変わって授業の内容が変わった教科でさえ難なく対応できている。とにかく今のマリーは大学卒業程度の学力なのである。学院の授業の内容で困ることはない。
前世になかった魔法理論と貴族の常識と薬学と魔法陣についても、前世のラノベの知識と鑑定のスキルで無難にこなしている。
また、異空間に収納した教科書のコピーをいつでも見られるので、教科書を暗記する必要もない。余った時間はほかのことに利用できる。とにかく効率的に試験勉強が出来るのである。
その上、剣術実技についても魔獣討伐実習でいち早く魔獣の襲撃を察知しクラスに危険と伝えたことで、最大限の評価を受けることとなった。
しかし、マリーは生活魔法なので、威力が小さいとみられている。無詠唱は評価されているが、威力不足なので評価は低い。これはマリーがあえて実力を隠しているせいでもあった。
試験の結果は魔法実技を除いて、マリーはほぼ完ぺきの出来であった。その結果、入学試験の時は20位であっが、今回は5位になった。これにはクラスの同級生だけでなくマリーも驚きであった。
そして、マリーは改めて「なんか目立っちゃったな。上位貴族にねたまれたりしたらどうしよう」と思った。
あれから、ふと1人なると広のことが思い出される。あれから「祠を見つけたら広のことを聞いてみよう」と思っているが、あれから祠には出会わない。
広がどこで、どうしているのか。遅々としてわからない。この世界に転生しているのかさえ分からないのである。何とかして探したいが、その方法も見つからないもどかしい日々が過ぎていく。
そうしていると、期末休暇になった。マリーの実家は遠い。本当は実家へ帰って、両親の顔を見たかったが、期末休暇の間では行って帰ってくることが出来ない。
どうしようかなと思っていたらエルザが
「実家へ帰るからみんなで来ないか」
と誘われた。
アンナとディアナも乗り気な様なので、マリーも行くことにした。
期末休暇が始まった次の日、王都の乗合馬車の乗り場へ行った。エルザの実家フェルゲスト男爵領は、王都から北西に馬車で1日ほど行ったところにある。王国の北西へ行く街道沿いにあるので、乗合馬車が毎日出ているようである。一応前日に4人の予約を入れた。
4人で馬車の発着場に行った。お客さんは、私たち4人と行商のおじさん、それに途中の町まで行く家族連れが4人、それに護衛の冒険者が2人だった。
行商のおじさんとエルザは顔見知りの様で私たちを見ると話しかけてきた。
「エルザ、お嬢様は昨年から王都の学院に通われているのですよね。もう休みになったのですか」
「はい、期末試験も終わって昨日から期末休暇です。私たち4人は寮で同室なのです。休暇の間、『することもない』というので、みんなでうちの実家に行くことにしたのです」
「すると、ほかの4人の方も学院生ですか。それは優秀ですね」
「私は、マリー、男爵令嬢です」
「私はアンナ、平民です」
「私はディアナ、同じく平民です」
「これは丁寧に、私はヨハンです。フェルゲスト男爵領や周辺の貴族領を回っている行商人です」
途中の町で家族連れが下りたので客は私たち4人と行商人のおじさんだけとなった。王都近郊ということで、盗賊はいないそうである。護衛の冒険者が暇そうにしている。
することもないのでマリーは冒険者の人に話しかけてみた。
「護衛の冒険者さん、名前は何というのですか」
「俺か、俺はビリー、こっちは相棒のケン、いつもこの乗合馬車に雇われている。ここは王都の近くで盗賊もいないし魔獣もあまり出ないので安全だ。楽してお金がもらえるので気に入っている。最近は魔獣の被害が多くて、俺たちの仲間でも死んだり怪我したりしている者もいる。長く冒険者家業を続けるには安全が一番さ」
「私も冒険者登録している。ランクはDランク、貴方たちのランクは?」
「俺たちはCランクさ、でもマリーさん、その年でDランクなら大したものだぜ。でも長く続けようと思ったら無理はしないことだな」
「はい、参考になります」




