2.スキル授けの儀式
それから月日がたって、マリーは5歳になった。正確には10月1日が誕生日なので、まだ4歳だが、ここフロデント王国では今年5歳になる子は春に教会でスキル授けの儀式を受ける。そこで、神からスキルが与えられるのである。
有能なスキル例えば剣士や治癒魔法などが与えられれば、剣士なら、それだけで国の騎士団に採用される。治癒魔法があれば教会から聖女認定がされたりする。最も聖女認定されると教会で隔離されて、教会の使いつぶしの駒にされたりする。将来平穏無事な生活を送りたいならスキルはありきたりの方がいいのである。
ちなみに、マリーの家族は父アードルフが火魔法、母アリーセが水魔法、上の兄カール10歳が火魔法、下の兄ブルクハルト8歳が水魔法であった。当然マリーも「火魔法か水魔法のどちらかだろう」そう思っていた。家族も同様の思いであった。
マリーは教会へ行く日の朝、いつものように祠を拝んだ。
「祠さん、どうかいいスキルが授かりますように。出来れば父や母のように火魔法か水魔法がいいです」
すると、心の中に祠の語り掛けてくる声が聞こえた。小さい時は祠の声がよく聞こえたのに最近は祠の声が聞こえなかったのに不思議である。
「マリーはいっぱいスキルを持っているよ。でもこれがばれると、大人にいいように扱われて最後は捨てられるから、他の人には見えないようにしておくね。見えるのは生活魔法だけにしておく。帰ったらもう一度私のところに来て、正確なスキルと、使い方を教えるから」
すると父と母の呼ぶ声がした。
「何しているの、もう出かける時間だよ。遅れるとみんなに迷惑がかかる」
「ごめんなさい。祠さんを拝んでいたの」
祠が語り掛けてくることは言わない方がいいと思った。家族の者には祠のことは分からないようで、祠の話をすると家族もいやそうな顔をするので、最近は祠のことを言わなくなった。まして「祠が私に話しかけてきた」と言おうものならおかしい人間と思われてしまう。
教会は男爵邸のある町の中にある。歩いて5分ほどである。いつもは歩いて行っていた教会だが、今日は特別ということで馬車で行った。教会の前に馬車で行くと、もう今日スキル授けの儀式を受ける子供たちが集まってきていた。
男女合わせて30人、ほとんどは顔見知りだが、知らない子もいた。この町だけでなく周辺の村の子も来ていたようだ。スキル授けの儀式はこの教会で行われた後、神父さんが判定の水晶玉を持って順番に周辺の村々回るので、そこでも行われるのであるが、それを待ち切れない子がこの街の教会へ来たようである。
受付をして、中に案内された。受付順に儀式が行われるようである。マリーは最後の方だった。母が
「マリーがぐずぐずしていたから遅くなっちゃったじゃないの」
「ごめんね。私行ってくる」
そう言って、今日儀式を受ける子供が座っている場所に行って椅子に座った。
しばらくして、今日ここで儀式を受ける子供は全員そろったようある。神父さんやシスターが前の方の席に座った。そして、神父さんが私たちの前に出てきた。
「それでは儀式を始めます。皆さんいいですか。順番に名前を言いますので、名前を呼ばれた子は、前に出てこの水晶玉に手を触れてください。手は軽く触れるだけでいいです。
水晶玉に手を触れると、水晶玉にその子が授かったスキルが表示されます。それを私がその子に伝えます。
人に知られるとまずいスキルもありますので、スキルはその子だけに聞こえるように言います。
いいですか、その言われたスキルは、よく覚えておいて、帰ったらお父さんやお母さんに伝えてください。それでは始めます」
そうやって、儀式が始まった。順番に子供が名前を呼ばれる。呼ばれた子供は前に出て、神父さんのところに行って、水晶球に手を触れる。すると水晶玉が軽く光る。そして神父さんが小声でそこのスキルを子供に伝えている。スキルを知らされた子供は後ろの親がいる場所に行って、スキルの内容を伝えている。
マリーの順番になった。マリーは名前を呼ばれると神父さんのところに行った。そして水晶玉に軽く手を触れた。
すると水晶玉がまばゆいばかりに輝いた。隣の神父さんも驚いている。その後、水晶玉に表示された文字を見て
「マリー、貴方のスキルは生活魔法です。しかし何だったのだろう。あの水晶球の輝きは?」
と言っている。
会場が少しざわめいているので、神父さんが
「先ほどマリーが手を触れたとき水晶だが強い光を発しましたが、マリーの授けられたスキルはごく一般的なものでした。水晶球の輝きの理由はよくわかりません。もしかすると水晶玉に少し強く触り過ぎたせいかもしれません。
次の人からは水晶玉は軽く触れるだけにしてください。マリーのように強く掴んだりしないでください」
神父さんが、こう言うと会場から笑いが漏れた。
マリーは、後ろで待っている家族の元へ戻ると
「私のスキルは生活魔法だって、お父ちゃんの火魔法、お母ちゃんの水魔法でなくて少し残念」
「そんなことはないよ。生活魔法は大事なスキルだよ。嫁に行った時に細々としたことが出来るから重宝がられるよ」
「そうだよ、マリーは俺たち違って、嫁に行くのだから、そういうスキルの方がかえって嫁の貰い手が多いかもしれないよ」
「そうね、そうだよね。私は嫁に行くのだものね」
「とにかく無難なスキルでよかった。水晶玉が強く光った時はびっくりした。変わったスキルだとマリーを取られるかもしれないと心配した」
「そうよ、普通のスキルが一番。治癒魔法なんて授かったら、マリーを教会に取られてしまうものね」
「そうなの」
「そうよ、たまに『変わったスキルを授かった子供が、親と離れて寂しい思いをしている』と聞いたことがあるわ」
「そうなの、よかった私、生活魔法で、これで私お父ちゃんと母ちゃんと一緒に暮らせるね」
「そうだよ。マリーはここでずっと暮らしていけばいいのだよ」
「でも、アードルフ、『いくらマリーがかわいい』と言っても一生ここに居たら、結婚もできないじゃない。適当な年になったら嫁に行ってもらわないと」
「アリーセはマリーにきついな」
「そんなことはありません。女は結婚して、子供を産むのが女の幸せです」
こうしてマリーのスキル授けの儀式は終わった。




