16.広の思い出
今日はデートの日、広と駅で待ち合わせして、動物園に行く。今日は頑張っておしゃれをした。お気に入りのライトグリーンのワンピース、少し大人びた感じがする。髪も前日にセットしてきた。気合を入れて来たのに広の感想はいつもと同じ。頭に来たので足を踏んでやった。すると、
「何そんなに怒っているの」
「しらない」
それでも2人で一緒に切符を買って改札をくぐって駅のホームに行った。電車が来たので乗り込んだ。さすがに休日、あまり人は乗っていなかった。広と並んで座った。
「久々のデートだね。ごめんね、最近忙しくて、知世にはすまないと思っているのだけどなかなか時間が取れなくて」
「いいよ、仕事も大事だものね」
本当は不満をぶつけるつもりだったけど、広の顔を見たらそれも言えなくなってしまった。ちょっとだけ広の肩に体を寄せてみる。すると電車が揺れた。そうしたら、私と広の肩が思いっ切りぶつかった。慌てて、離れようとするが、どうにもならない。顔が真っ赤になって下を向いた。
しばらくして
「今電車揺れたね」
「そうね」
向かいに座っているおじさんがこちらを見てニタニタしている。そんな気がして顔を上げられない。お互いにうつ向いたまま、電車が次の駅に着くのを待った。
次の駅ではいっぱいの人が乗ってきた。その乗客の姿に私たちも隠れてしまったみたい。さっきのニタニタしたおじさんはもういない。ほっとした。
それから、ひとしきりして動物園のある駅に着いた。駅のホームから下って行って、通りに出た。その道を横断して動物園のゲートの前まで来た。
ゲートの前の券売機で券を買って、中に入ると、フラミンゴが見えた。ピンクのフラミンゴがいっぱいいる。
見ると記念撮影している人たちもいる。その人たちが写真を撮り終わるのを待って私たちも2人並んだ。道行く人に頼んで写真を撮ってもらった。
「俺と知世の記念写真だね。今日はいっぱい写真撮ろうね」
「そうね」
それから私たちは最初にクジャクやツルなどの鳥を見た。広は猛獣を見たかったようだが、私が「怖い」と言ったらやめにしてくれた。その後色々な動物を見て回った。
「ねー、広、昔来た時はもっといろいろな動物がいたように記憶しているのだけど、今日来たら、なんか少ないね」
「そうだね、昔はもっといっぱいいたように思うけど。どうしてだろう」
「動物園も赤字で動物を減らしているのかな」
「さあ、どうだか、よくわからないな」
動物園で1日過ごすつもりだったけど、動物が少なくなったからか、私たちが子供でなくなったからか分からないけど、興味が無くなったので、動物園は半日で切り上げて、そのあと町の中心部へまた電車で行った。そして適当な店を見つけると昼食にした。
「これからどうする。今度は駅の北側へ行ってみる」
「でもそこ、人がいっぱいじゃないの」
「じゃ、ここにずっといる」
「それでもいいかも、私歩くの、疲れた」
「知世は根性がないな」
「広がそれを言う」
そこで、夢から覚めた。目覚めると、またいつもの寮の部屋だった。目覚めると夕方だった。先ほどまで日が差し込んでいた窓は夕日に少し赤みを帯びた光に染まっていた。
「ごめん。起こしたかな。ぐっすり眠っていたようだったから、静かにしていたのだけど。今日休んだみたいだけど体の方はどうなの」
エルザの声だった。アンナとディアナも心配そうに私を見ている。
「大丈夫、疲れがたまっていたみたい。今日1日寝たから大丈夫。疲れも取れたと思う」
「ああやっぱり私はマリアンヌとして生きるしかないのだ」と思うと悲しかった。目に涙がにじんだ。
「どうしたの、マリー」
「ちょっと目にゴミが入ったみたい」
「そう、それならいいけど」
それからみんなで夕食を食べに食堂へ行った。そして、その日は終わった。




