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マリーの思い家族の思いそして祠がつなぐもの  作者: @000ーooo


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15/54

15.前世の記憶

 雨上がりの朝、いつものように寮を出て、教室へ行こうとしたら、庭の片隅が朝露にきらりと光った。何だろうと思って近づいてみると祠がそこにあった。懐かしさがこみ上げてくる。

 いつものように、二礼二拍手一礼、祠を拝んだ。

「祠さん、久しぶり」

「おお、マリー元気にしていたか」

「あまり元気じゃないけど、それはいつものこと」

「どうしてだ」

「だって家族と離れているし、ジゲンハルト町も遠いし」

「そうだな、マリーはまだ幼いからな、家族が懐かしいのもわかる」

「今日はマリーに渡すものがあってきた。たぶん忘れているだろうが、マリーが小さい時に封印したものさ。こんなものを持っていたら、マリーが変人扱いされると思って封印したのだが、もういいだろうと思って返しに来た」

「それは何」


 マリーが祠をのぞき込むと頭の中に膨大な記憶が流れ込んできた。急に頭が痛くなった。そして、その場に倒れこんだ。「今日は学院に行くのは無理」と思って寮へ引き返して、管理人さんから学院に欠席を伝えてもらった。管理人さんが私の真っ青な顔を見て心配そうにしていたが

「多分寝たら治ると思う」

と言って部屋に戻った。


 ベッドに横になりながら、頭の中に流れ込んできた記憶を検証してみた。そして、「これは前世の記憶だ」そう思った。


 私は前世の名前は「知世」、苗字は思い出せない。そして、恋人がいた。名前は「広」、これも苗字は思い出せない。2人は大学で知り合った。そして、付き合うようになった。そして将来は結婚する約束をした。


 大学を卒業して、2人は別々の会社に就職した。彼は忙しくて毎日残業ばかり。私は会えない寂しさを、料理を作ったり、ネット小説を読んだりすることで紛らせていた。


 大学の時に「将来は結婚する」と誓ったはずなのに、いつまでたっても広が何もしてくれないのでイライラしていた。


 そのうえ最近は「忙しい」の連発、デートもままならない。電話やメールは対応してくれるが、それも出ないこともある。


 その後2人が結婚したのかどうかは思い出せない。それを思い出そうとすると、急に頭が痛くなる。無理に思い出そうとしたら、耐えられなくなって気絶してしまった。気が付くと午後だった。


 食堂へ降りて行くと、管理人さんが

「少しはよくなったかい?」

「うん、まだ万全じゃないけど少し楽になった」

「そう、それはよかった。何か食べるかい?」

「うん、軽い物なら食べる。すこしお腹も減ったし」

「それなら、パンと野菜の煮物でいいかい」

「それでお願いします」


 その後、お腹の中に少し食べ物を入れると落ち着いた。

「楽になったので、少し庭を散歩してくる」

そう言って、マリーは寮の玄関を出た。そして朝、祠のあったあたりに行ったが祠はなかった。

「記憶の飛んでいるところを聞きたかったのだけど無理みたいね」


 しばらく庭を散歩して、また寮に戻った。そして管理人さんに

「また、部屋に戻って休みます」

そう言って部屋に戻った。


 いつもは騒がしいばかりの寮の部屋も1人でいると、ぽつんとして自分だけの空間にいるような気がした。


 窓から差し込んで来る光が、部屋の中の机の上に落ちている。窓を開けるとさわやかな風が部屋に流れ込んでくる。その空気を胸いっぱいに吸い込んでいると、心も落ち着いてきた。


 さて、これからどうしよう。私の前世は知世、今世はマリー、知世の記憶を持ったマリー、でも今はマリーとして生きていくしかない。もう知世には戻れない。数学や勉強がよくできたのは潜在的に体が覚えていたからなのだと思った。


 それともう1つ気になることは広がどうなったかだ。結婚の約束をしたのだから履行すべきだ。忙しいで片付けられたらたまったものじゃない。


 広もこの世界に転生しているのかどうか。でもどうやって調べたらいいのか。広も私みたいに前世の記憶を封印されていたら、それこそまったく分からない。


 結局これも、調べようがないことが分かった。まさか

「あなた前世の記憶を持っていますか」

なんて聞いて回ったらそれこそ変人扱いされる。


 でも確か私には鑑定がある、この能力を使えば転生者なら分かるのではないかと考えて、自分に鑑定をかけてみた。


 すると

「マリアンヌ・ジゲンハルト11歳、10月1日の誕生日が来ると12歳、男爵令嬢、学院生、生活魔法(、言語理解、鑑定、ステータス隠蔽、異空間収納)、ただし、( )の中は他人に見えない」

と出てきた。


 そこに転生者の表示はなかった。これでは調べようがない。もうマリアンヌとして生きていくしかないと悟った瞬間だった。


 広が遠くに行ったような気がして涙が出来てきた。そして広と過ごした懐かしい思い出が走馬灯のようによみがえる。


 そのあと布団にもぐってひたすら泣いた。そして眠りに落ちた。

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