14.お茶会と祠との再会
そうして学院生活にもなじんできたころ、お茶会の案内を受けた。私のジゲンハルト男爵家はニーゲンブルグ公爵家の寄子なのだけど、その寄子同士で親睦を深めるということで集まることになった。
言い出したのは伯爵令嬢のエリーザ様、「私がお茶会は始めて」と言うと、段取りはほかの人にやらせたみたい。私は、ほかのメンバーにお茶会の案内を持っていくことだけ。エリーザ様からは
「使えない人ね」
という評価を頂いた。
お茶会はエリーザ様の王都の伯爵邸で行われた。その日は私はポーション工房は休みにした。朝から、エリーザ様から言われたことをただするだけ。こういうのを「パシリ」というのだと思った。「あれ、こんな言葉あったけ」ふと思った。
お茶会には3年生の従姉も来ていた。王都に来てから忙しくて受験参考書を貸してもらったのにお礼にも行っていなくて少し後ろめたかったけど
「久しぶり、マリー、学院は慣れた」
気軽に声をかけてくれた。うれしかった。
「参考書貸してもらったのにお礼にも行かないでごめんなさい」
「そんなこと気にしなくてもいいのに。それにマリーはAクラスだよね。優秀なんだ」
「たまたま試験の出来が良かっただけ」
全体で20番は言わないことにした。
お茶会は無事終了。終わってからも後片づけで、いいように使われた。でも、寄子の生徒の名前を覚えられたのはよかった。
それからしばらくしてクラスの平民の令嬢エマから祭りに誘われた。王都でも場所によっては祭りが行われるのだそうだ。下町の町内の秋祭りだそうだ。
そう言えばジゲンハルト町でも秋になると収穫祭と言って、農地の恵みに感謝する祭りが行われたことを思い出した。ちょうど同じころだと思ったら、ちょっぴり寂しくなった。
こう言うのを5月病というのだと思った。「あれ、5月病なんて言葉あったけ」最近は知らない言葉ふと浮かんでくる不思議だ。
当日、エマの家まで行った。エマの家は王都の下町と言われるような所にあった。エマの家はそこで商会を営んでいる。エマの家は大きな商店だった。
「今日はお誘頂いてありがとうございます」
「そんな、貴族の令嬢が、うちみたいな平民のところに、ようこそおいでいただきました」
エマが出てきて
「行こ」
一緒に祭りの開かれている近所の公園に行った。
公園に入ると屋台の店も並んでいるし、ゲームやカードの興じる人たちもいる。そして、大きな木の根元を見ると「祠」があった。
頭の中で
「祠さんこんにちわ。久し振り」
と語りかけると
「よっ、久しぶり。元気にしていたか」
やっぱり私の知っている祠さんだった。
エマに
「ここの祠は昔からあるの」
と聞くと
「祠、それ何、そんなものここにないわよ」
えっ、どうもこの祠はほかの人には見えないようだ。そこで頭の中で
「祠さんはほかの人には見えないの」
「見えないことはないと思うけど、気が付かないかもしれないな。マリーは特別だから、見えるのじゃないか。俺もマリー以外とは話できないし」
「そうなの。祠さんはここにずっといるの」
「今日はマリーに会いたくなったから来ただけ。また元の場所に戻るよ、そのうち学院にも遊びに行くよ」
「いつでも来て、私学院の寮に入っているから。来るなら寮の庭に来てくれると嬉しいな」
「それなら、学院の寮の庭に行くよ」
「マリー、どうしたの、ボーとして」
「ううん、ちょっと考え事」
「そう、ねえ、こんな下町の祭りはどう」
「いいと思うよ。ジゲンハルト町でもこんな祭りがあって、そこでは無礼講、男たちは大抵酔いつぶれていた。すると後始末はみんな女に来るので、男が飲むと女が怒るの。いつも母さんが怒っていた」
「そうなの、なんか楽しそうね」
「うん、ジゲンハルト町はいいところだよ。みんな顔見知り。小さい時は貴族も平民もいつも一緒になって遊んでいた」
それからエマの店に戻ると、お酒が入ったようで、エマのお父さんの顔が赤い。エマが
「お父さんもう飲んだの。まだ、昼間よ」
「大丈夫、これくらい飲んだうちに入らない。それに祭りの準備もすべて終わったし、後は飲むだけだ」
「後片付けはどうするのよ」
「後片付け、そんなもん、かかあがするだろう」
「そんなこと言っていると、また母さんに怒られるわよ」
「かかあが怖くて酒が飲めるか」
これを聞いてマリーは「これはダメだ、出来上がっている」と思った。
今日は祠さんにも会えたし、ジゲンハルト町に似た下町の雰囲気も味わえたし、今日はいい日だったと思った。




