12.入学式
学院に戻ったマリーは、事務室にアルバイトの書類を提出した。
「貧乏男爵家は大変だね」
事務員からはそう言われた。その言葉の中に蔑むような感情を受け取った。しかし、うちは貧乏男爵家、言い返すこともできない。言葉通りである。
寮の部屋に戻ると他の3人も戻っていた。
「どうだった、マリー」
「工房はおばあさんが1人いるだけ、その手伝いをすることになった」
まさか、「ポーション作りをすべて任された」などと言えるはずがない。適当にごまかした。
「そちらはどうだった」
「すごく楽しかった。工房では色々な服を作っていて猫の手も借りたい忙しさ。私は掃除したり、布を合わせるのを手伝ったり、将来私もそんな仕事につけたらいいなと思った」
「そうなのそれはよかった」
次の日は入学式である。入学式は講堂で開かれる。講堂へ行くと受付があった。そこで新入生だと伝えると並ぶ場所を教えられた。並ぶ順番はクラスごと、順番は受験番号順とのことなので、Aクラスのところに行った。
私の順番はかなり後ろの方だった。列の先頭の方は上級貴族だと思う。堂々としている。それに対して私のいるあたりはオドオドしている。たぶん私と同じ下級貴族か平民だと思う。
しばらくすると
「新入生入場」
という声がした。Fクラスから入場していくようでAクラスは1番後みたいだ。私たちAクラスの番になった。講堂の中に入ると一斉に周りの視線が集まる。こういうのは慣れていない。何となく恥ずかしい。
私たちは所定の位置まで来ると、式の開始の宣言がなされた。
しばらくすると校長の挨拶が始まった。その後、来賓あいさつ、来賓はこの国の第3王子だった。その後生徒会長の挨拶、入学生を代表して主席入学の公爵令息の話があって、式は終了した。
長い間立っているのが疲れた。そう言えば昔もこんな経験あった。長すぎる挨拶に倒れそうになったことがあったと思った。
「あれ、私領地から出たのは初めてのはず。ましてこんな式も初めて。それなのになんで長すぎる挨拶に倒れそうになったのだろう」
疑問符が浮かんでくる。
ボーとしていると前の生徒が動き出した。慌てて私もそれに続いた。私たちはAクラスの教室に行った。
ここでは席は特に決められていないようなので適当に後ろ方に座った。私は下級貴族、目立たない方がいい。
確か校長や来賓の挨拶では「学院内では生徒は身分にとらわれず平等」と盛んに言っていたがどれだけ守られるか分からない。
少なくともこれまで、ちやほやされてきた貴族たちがいきなり平等と言われても気持ちが付いて行かないだろう。それに「学院の外に出れば、この国の身分制度に縛られる」のだからまともに取らない方がいい。
担任はカサンドラ様、伯爵家の2女だそうだが、独身だが今は家を出ているとのこと。得意なのは火魔法だそうだ。
順番に自己紹介が始まった。といっても上級貴族はお互いをよく知っているようだ。知らないのは私たち下級貴族と平民だけのようである。
私の順番になった。
「私はマリアンヌ・ジゲンハルト、ジゲンハルト町の男爵家の娘です。マリーと呼んでください。魔法は生活魔法です。誕生日は10月1日です。兄弟は兄が2人います。今は学院の寮に入っています。田舎から出てきて王都は初めてです。よろしくお願いします」
取りあえず無難な挨拶をした。「男爵家と生活魔法」と聞いて大抵の人は興味を無くしたようだ。自分の利益にならないなら関心を持たない。強い者には媚びへつらう。何となくなく貴族社会の縮図のような気がした。
この自己紹介では新入生代表で挨拶した公爵家の令息名前はアーベル様と、伯爵家の令息アルノルト様、それに公爵令嬢のビアンカ様、伯爵令嬢のエリーザ様、それに子爵令嬢のエミーリア様が目立っていた。あとエリーザ様はうちの男爵家と寄り親が同じのようだ。
「1度に50人も頭に入ってこない」と思ったが、挨拶を順番に私の異空間にコピーしていったらこれがすんなり整理できた。この能力本当に便利。
クラスには私たち下級貴族の令息令嬢は34人にもなる。上級貴族の令息令嬢は10人ほど、後平民の令息令嬢が6人いた。




