6 私か私以外か
起床8時。
俺はあくびをしながら起きた。
下の階から朝食のにおいが漂ってくる。
(おなかが、おなかが。)
俺はいち早く一階に下りた。
「おはようございます。」
「おはよう。朝食を食べていくかい?」
「はい!」
俺は朝であるにも関わらず、飯をむさぼり食った。
(やはり肉がない。生きている心地がしない。)
「あの肉はないんですか?」
「最近は狩っていないみたいね。私も食べたいわ。」
「あと米ってありますか?」
「あるけどあんなべちゃべちゃなもの食べておいしいのかしら。」
(貴様、米を侮辱するとは。米は日本の魂だぞ。)
「では後でいただきます。」
俺はとりあえず腹に飯を突っ込んで米を貰いにいった。
残念ながら自分で作れと言われたので炊いて塩おにぎりにした。
(やっぱパンより米だよな。昼に食べよう。)
そして更なる情報を得るために次女のもとに向かった。
次女は相変わらず屍のような顔をしていた。
ただ髪はきれいだし、目からは力強さが感じ取れた。
「おはようございます。」
「...おはよう。」
「事件について聞きたくて...。」
「そう、なに?」
「あなたは事件発生時に何をしていたんですか?」
「襲撃の様子を見ていたのよ。」
(つまり犯行現場から離れていたのか。)
「その前後に誰か部屋に入りましたか?」
「入ってないわ。そういえば襲撃前に族長は軽食を取って寝たわ。」
(軽食?毒でも盛ったのか?)
「どうして族長の部屋に入ったのですか?」
「音がしなかったのよ。だから部屋に入ったみると銃殺されていた。はぁなんで入ったんだろう。」
(おかしい襲撃されていたタイミングで起きるはずだ。だけど起きていないということは、やはり軽食に何か混ぜ込まれていた可能性がある。)
「軽食は誰が作ったんですか?」
「使用人だったかしら。なぜか不自然に進めていたけれどお母さんは快くいただいていたわ。」
(使用人も事件に関与している可能性が高い。そして俺の推理通りなら姉も裏で暗躍しているはずだ。)
「お姉さんは使用人と仲が良かったんですか?」
「サルビアはみんなから慕われていたわ。まぁ私は能力も劣っていたからあんまりだったけど。」
(すごい能力の差でもあったのだろうか?)
「私も賛成だよ、サルビアが族長になってから町も活性化したし。」
「族長はあなたを推した理由があったんでしょ。あなたにしかない魅力が。」
「ふふ、ありがとう。」
彼女の白い頬が少し赤くなった。
(なぜか照れている。よっぽど精神的に限界がきていたんだろうな。)
俺は彼女と話しているとき周りから不審な目で見られていたが気にせずに話していた。
まぁ死刑囚と話しているから、その気持ちもわかるけどね。
「あなたは死んでいいんですか?」
「...信じてくれる人がいるってことは、とてもうれしいことなのよ。」
「は?」
「何でもない。」
なぜかそっけない態度をとられた気がする。
(機嫌を損ねてしまったな。おにぎりでもあげてみるか。)
おにぎりをあげると彼女は嬉しそうに受け取った。
「これ好きなの。お母さんがよく作ってくれた。まわりはあまり好きじゃなくて作ってくれなかったから。」
「そうですか。よかったです。」
どうやら機嫌は治ったようだ。
クールキャラだと思っていたが、しかしめんどくさい。
「あなたが作ってくれたの?」
「そうですけど。」
「そう、珍しいわね。これが好きなんて。」
「まぁ俺の魂ですから、米は。」
類は友を呼ぶとはまさにこのことか。異常者同士は惹かれあうのか。
(変な人だな。だから周りから同情もされなかったんだろうけど。)
この際だから俺はいろいろなことを聞いてみることにした。
「射撃は得意ですか?」
「あんまり、弓で育ったから。」
「そうですよね。銃はむずいっすよね。」
(だって俺も大事な場面で二発も外したし。)
「クラスは何ですか?」
「『ボタニスト』植物を操るスキルを使えるわ。」
「檻を壊せますかw」
「まぁ出来ないこともないわね。」
「まじか。」
そのあともいろんなことを質問した。そして一番聞かれたくないであろう質問をした。
「ち、ちなみに執行日は?」
「明々後日よ。」
「...なるほど?」
「心配しないで、たかが一日の仲。私が死んでもあなたはすぐに忘れるわ。」
しかし彼女の瞳は揺らいでいた。
何か期待を込めた目で俺を見つめていた。
「そうですか。いろいろとありがとうございました。」
「...。」
彼女から聞いた意見をまとめるべく宿へ戻った。昼飯はなかった。
(くそ、昼飯あげたの忘れてた。)
ベットに転がりながら俺は意見をまとめた。
事件の流れ:使用人が軽食に毒を混ぜて毒殺。
↓
暴徒による襲撃
↓
次女が部屋を離れる
↓
おそらく使用人が族長の死体を打つ
↓
次女が部屋に戻る
↓
使用人がそのタイミングに部屋に入り次女を犯人にする。
なぜ銃で死体を打ったか。それはもし毒で死亡していなかった場合、犯人がばれてしまう。
だから確実に殺すために襲撃のタイミングに合わせて死体を銃で撃った。
サルビアは慎重だとメガネが言っていた。
(俺はどうすればいいんだ?もしこの推理を話したとしても毒の証拠はない。
仮に証拠があって、使用人及びサルビアが捕まったとする。
その場合はおそらく彼女が族長の座に就くが、サルビアのように政治ができるとは思えない。
本人も劣っていると言っていたし。
つまりこの事件の最適解は、彼女をこっそり檻から連れ出して逃げること。そうすればハッピーエンドなはず。)
妄言に近い推理により、決まった折衷案はあまりにも無謀な作戦。
しかしこれ以上のプランがなく今夜実行することを決めた。
(どうすれば檻から出られるか。そういえば話しているとき強力な攻撃スキルがあるとかないとか言っていた気がする。それで行くか。)
たった今無謀な計画が始まる。
(俺、死ぬかなぁ。でも決めたことだし自分に正直に生きなくては。)
突如ドアをたたく音が聞こえた。
(誰だ?)
「入ってもいいですか?」
「どうぞ。」
俺は警戒しながら来訪者を待った。
「こんばんわ。」
来訪者はサルビアだった。
「どうかな、この町は?」
「楽しいですよ。」
とりあえず笑顔を繕う。
(何が目的だ?)
「それはよかった。それより妹にあったと、聞きましたが。」
「あんたが勧めたんだろ。」
「どうでした?」
「とても犯罪をするようには見えなかった。」
「君にはそう見えるかw。 何か悪いことを考えてはいないだろうな?」
(ばれているのか。いやそんなはずは。今は乗り切ることだけを考えろ。)
「い、いえなにも。」
「そうですか、引き続き楽しんでください。」
サルビアが部屋から出て行った。
出ていくときどこかで見た瞳をしていたような気がするが気のせいだろう。
(やはり狂っている。この町から出ていかなくては。)
俺は再度覚悟を決め寝た。
なぜ早くに実行するかって?
前日はみんな警戒するだろ。
クールキャラが個人的には好きです。




