47 タイトル未定
「時は、繰り返す。今この瞬間から終わる。いや始まる!」
広い空間にただ二人が立っている。
「久しぶりの再会だな。」
「お前、ヒナを、クラスメイトをどうした。」
「あ?まぁ黙らせただけだよ。」
何事もないように。
さぞ当たり前のように言った。
「黙らせたって、殺したってことか!」
「落ち着け、俺は俺と話をしに来たんだろ。」
「黙れこの状況が見過ごせると思うか。」
「一旦さ、俺とお話をしていただけませんかねぇ。」
(なんなんだよ、これは。)
いざ入り込んでみたらこの現状。どうなっている。
「ふーん、とりあえず深呼吸をして思考をクリアにしろ。No thinking、今は何も考えなくていい。」
「なんだと。」
「今は黙って俺の話を聞いてろよ。」
歯向かおうとした。
少なくとも心は。
でも体は動かなかった。
「あ?」
「そう怒るなって。それじゃ、話そっか。」
魔王が手を下に振り、無理やり座らせられた。
状況が呑み込めない。
視覚情報だけでもいっぱいいっぱいなのに。
「事の発端はお前が最初に草間ヒナと一緒に城を出なかったことだ。」
「何を言っている。」
「それによってこの世界に異変が生じた。」
(異変?)
銃とかか?
「そう、その通り。銃、中世なのにあるなんておかしいだろ。冬なのにソーメンを食べたり、和風らしいところでパスタが出てきたり。」
「ナポリタンだったらよかったのにな。」
「残念だったな。」
(早く、逃げる方法を考えないと。)
少なくともヒナだけは。
ただ倒れていて合図は取れない。
どうするか。
「二つ目はグロリオサ、あいつについていかなかったこと。わざと序盤の先頭を苦にしてやったんだ。そうすれば関係性が築きやすいだろ。」
「俺は、あの時ついていくべきだったのか。」
「ああ、そうだ!でもお前はついていかなかった!」
(『龍・加速』で一気に、でもすぐにバレておしまいか。)
「三つ目、アネモネ。あれが俺の失敗だった。」
「失敗?」
「俺はすでにお前の脚本は完成していた。世界を導くために。」
「お前は、人の命を何だと思っているんだ!アネモネが死んだとき__」
「そうだアネモネが死んだせいで俺の脚本が狂った。」
「は?」
(理解できない。)
まるで人を駒みたいに。
いやもっとひどい、使い捨ての。
「お前、無意識に女との関係を避けているのを分かっているのか?」
「は、何を言っている。俺は女性とそこまで親しくは___。」
「なぁさ、普通はさ「こいつ俺のこと好きなんじゃね?」とか「か、かわいいな。もっと仲良くしたい」とか。」
(気持ちわりぃな。)
「でもお前にはないだろ。」
「俺だってある。」
「いや、ない。少なくともこの世界にきてから、明らかに好意を受け取ったと感じても、お前はそうは思わなかった。ひたすら逃げていた。」
(なんだよ。)
「アネモネの死をきっかけにお前はより一層、他人との心の距離を測った。友人以上恋人未満。」
「友人?いないよ。」
でも魔王は俺の否定を無視して続けた。
「お前は失うことに恐れた。」
「___」
「お前には、その勇気がない。」
「お前に、何がわかる!俺が、あの死がどれだけトラウマになったか!」
あの時、あの瞬間。
俺は悲しみの絶望に落とされた。
だからもう二度と味わいたくない。
逃げたいんだ。
「そうだよな、他人の死なんてどうでもいいよな。」
「なに、言って___!」
「お前はだんだん死に対して何も感じなくなっていたんだ。」
「わかっている、わかっていたさ。でも!」
「そうやって、他人と歩まないから、人の気持ちも理解できないんだよ!」
(そうだけど。)
それを言うならお前も。
いや今は俺の話か。
「お前は仲間がたくさんいた!でもそれをお前は踏みにじった。」
「もういい、もういい!」
「そうやってまた現実から目をそらすのか。」
(黙れよ。)
俺はまだガキなんだよ。
いっちょ前に何かできるわけじゃない。
「ガキを言い訳にしていいのか。」
「うるさい、だまれ!」
「これで分かったな。自分がどういうものか。」
「う、うう。なんだっていうんだよ!」
「もういい、いったん黙れ。」
(もうたくさんだ。)
なんで、俺は秘密を知りたいだけだったのに。
「少し過去の話をしよう。」
「__」
嗚咽しか漏れない。
今まで逃げていたことが一気に降りかかってきた。
正直、心の奥底ではわかっていたんだ。
それでも、嫌だったんだ。
「昔々、あるところにとあるものが二つ落下した。」
「人物じゃないのかよ。」
「人類は関係するが。」
(昔話だろ、人が出てこなきゃ。)
「不思議に思わないか?」
「何が?」
「どうして魔力が存在する?どうして魔力が回復する?」
(そこに疑問を持っちゃだめだろ。)
「異世界だから当たり前?違う。」
「設定だろ、気にするなよ。」
「あ?設定?そんなもので片づけるなよ。」
(異世界といえば魔力、マナ、あって当たり前だろ。)
「『放つもの』そして『吸収するもの』」
「それがどうした?」
「こいつらが昔々この世界に落下した。」
「はぁ?」
「続けるぞ。」
(待てよ。)
質問があるんだが。
「質問は後だ。そいつらがこの世界に落下して新たに魔力という物質が生まれた。」
「物質ね。」
「そう、そいつらは恒久的に魔力を放つ、そして吸収する。」
「わざわざ吸収する意味なくね。」
「そうすれば空気中は魔力で満たされ、生物が呼吸できなくなる。」
(なるほどね。)
二つあることでバランスをとっていたのか。
「そして二つは力を完全に解放できていなかった。」
「封印されていたのか。」
「そうだ。そしてある時魔力の吸いすぎによって力を得すぎてしまったあまり『吸収するもの』が解放されてしまった。」
(解放。)
いきなりすぎる。
ほんと。
でも今までのことを振り返れば納得のいく部分もある。
「てかこのシステムは『吸収するもの』にとって有利すぎないか?」
「そうだな。」
「じゃあどうやって『放つもの』は解放するんだよ。」
「奴曰く、魔力保有量が一定を超えたら、だそうだ。」
「でも放出し続けているから意味なくね。」
「いやプラマイだよプラらしい。」
(まぁ魔力がこの世界にある理屈は理解できた。)
「それで?」
「『吸収するもの』が解放されて奴は世界を吸収しようとした。」
(世界、大胆なことをするな。)
「それを止めるため一人の勇者が奴を討伐しようとした。」
「殺せるのか?」
「いや、無理だった。」
「じゃあどうして今世界はあるんだ?」
「リセット、正確に言えば一度すべてを壊して、そして再構築した。」
(再構築。)
誰か言っていた気がする。
アイリスだったか、あっていたぞ考察。
俺のこと殺そうとしたけど。
「それで幾度も世界を守ってきた。」
「すごいっすね。」
「ただ、お前というイレギュラーな奴のせいで世界は狂った。」
「仕方がないだろ。」
「何を言っている?お前が一度死んだせいで、存在しないといけないやつがこの世からいなくなった。だから世界にバグが発生し『吸収するもの』が早くに解放されたんだ。」
「世界改変とか、バグとか、意味わかんねぇよ。俺に押し付けんなよ。」
「お前は何もわかっていない!」
(こっちだって混乱してんだよ。)
黙ってくれ。
「世界のカギはお前が握っているんだ。なのにお前は。」
「世界の傍観者なんてごめんだよ。」
「自分を取るか、自分以外を取るか。」
「どういうことだ。」
「俺とお前は一緒の道にいる。でもお前がその道を外れれば、世界は終わる。」
(またか、まただ。)
「世界なんて俺にとってはどうでもいいんだよ。」
「お前は、お前が大切に思った人が死ぬんだぞ。」
「大切にw_______大切に思った。」
(今まで出会った人、死んだりもした。)
「なんだよ、大切って。俺はそこまで友好関係を____」
「知らない、覚えていない、そんなあいまいな記憶で済む話じゃない。」
「わかっている。」
「お前は世界を救いたいと思わないのか?」
(俺に、責任を押し付けないでくれ。)
俺は、そんなたいそうな奴じゃない。
「俺が、お前になるってことは救いたくなくても仕方なく救うってことだろ。でもそれは偽善じゃないか!」
「違う、これは運命だ。すでに未来は決定している。」
「そんなに俺を魔王とか傍観者とかよくわからないものにしたいのか!身勝手すぎるだろ!」
「いま何もないよりはましだろ!」
(なんだよそれは。)
俺がちっぽけだから仕方なく称号をあげるってことかよ。
「それに運命から逃げるお前の方が身勝手だ!」
「勝手に決めつけるなよ、人の人生を。」
「なんだと。俺は、お前のためにわざわざ脚本を書いたんだ。脚本家になってやった男だぞ。」
「だから?俺はそんなことを聞きにここに来たんじゃない!」
太陽が完全に落ち、部屋を照らすのはライトだけになった。
淡い光が微かに魔王の顔を照らす。
「朗報だ。今封印していた『吸収するもの』が解き放たれた。」
「な、何してんだよ。」
「もう時間はないと思え。この世界の終わりは刻々と迫っている。」
「おあ、おい!自ら世界を滅ぼすのか!」
「違う、お前に勇者という二つ目の選択肢を提示した。お前はそれを受け入れるだけで済むんだ。」
「だから、俺以外で、いいだろ。」
「お前ももうわかっているはずだ。そのスキルが、『封印』がそれを証明している。」
(『封印』このスキルのせいで!)
全部が、全部が狂ったんだ。
俺の思い描いていた異世界が。
「お前が最後の希望なんだ。」
「人をいいように言いやがって。」
「チッ、これでもダメか。じゃあこれを見ろ。」
突然、無からスクリーンが映し出された。
「みろ、今のゾルバンだ。」
悲惨なものだった。
『成長段階第三フェーズへ移行します。』
固有スキル発動:『スキル吸収』
人々のスキルを、一生ものをすいこんでいる。
人生がこうやって奪われて行っている。
たった一人のエゴによって。
「おい、早く封印しなおせよ。おい、おい!」
「お前があと一歩踏みだせばいい話を。」
(俺は、どうすればいいんだ。)
結局、無駄だったのか。
苦労した意味が。
「最大多数の最大幸福。」
「俺が、犠牲になればいいってことか。」
「そうだ。その欠けた、不完全な勇気を、完全なものにすればいい。」
「今まで見ていてやってきたことは無駄だったのか?」
「どうだろうな。」
(俺は、何のために調べて、何のために救ってきたんだろうな。)
人の笑顔。
でも俺は泣かせていた記憶しかない。
「俺が、関わればみんな不幸に。」
魔王は何も言わない。
ただじっと俺の選択を待つように。
「俺は何回失敗すればいいんだろうな。」
「7回か、お前の失敗は。」
「その失敗が何かわからないんだけどね。」
スクリーンから聞こえてくる悲鳴、衝撃音、すべてがのしかかってくる。
俺が、今こんなことをしているからだ。
「俺が魔王になればどうなる?」
「ん?俺と同じようにこの世界を見る。誰にも邪魔されずにな。」
「それって、自由という名の拘束じゃないか。」
「そうかもな。」
冷たく彼は切り捨てた。
貧乏ゆすりをし、こっちをじろじろと見ている。
彼自身もあわてているんだろう。
時間がないと。
(イグサ、フレン。)
いま彼女らはゾルバンにいる。
これを、止めるためには。
「分かった。」
「ありがとう、我が継承者よ。」
そういって体の拘束が解けた。
だいぶ身軽になった
「さぁ、こっちへ来い。」
「ああ、そうだな。」
そういって立ち上がり、胸の内側に手を伸ばした。
手に触れた冷たい注射を手に取り、腕に刺した。
(久しい感覚だ。)
血が沸き肉が躍る。
スキル発動:『龍・加速』
床を滑るようにしてヒナを抱きかかえた。
「未来への道は、俺が決める。」
「無駄だ、それは後退を意味する。」
(それでも。)
「俺は、俺が!たとえ世界が滅んでも、俺自身の決めた道に!」
そうだ、これでいい。
これでいい!。
静かな叫びが、空間に響いた。
今までの各話のタイトルがあちこちあります。
ニュアンスや意味は変えていますけど。
全部は入れきれませんでしたね。




