42 身勝手
夜空に光る明るい一番星。
一等星か。
ランランと光る金色の瞳が俺たちを見つめる。
まるで獲物を狩る前の猛獣のように。
その顔は俺たちを嘲るように笑っていた。
「お、お前は何をした。」
「すべての奴隷のスキルをw、奪い取ったのさ~。」
「奪い、とった?」
奴の周りには無数の人が倒れている。
生気を吸い取られたかのように。
干からびたかのように。
(こいつにそんな容量が?)
マジか。
すべて奪い取れるほどの容量があるのか。
「どういうことなの?」
「俺が契約した、まぁ奴隷だな。のスキルを無条件で奪い取ることができる。」
「そ、そんな。」
「奪い取られた人はどうなる。」
「知らん。」
(無責任なことを言いやがって。)
「勝手に倒れているだけだし、死んだんじゃね。」
「何馬鹿なこと言ってんだよ。他人の命を無下に__」
「お前もさ、余裕で俺の奴隷殺していただろ。お前に命のあり方を語る資格はない。」
「チッ、そうだな。」
(俺が命を語れるはずがないよな。)
悔しいが同感だ。
人の生死を軽く見すぎている。
「私の、お母さんは?」
「は?そんなんいちいち覚えているわけないだろ!」
「ふざけないで。」
彼女の青い瞳が輝く。
静かな怒りが空気そのものを凍り付かせるような気配。
「あなたは自分が何をしているか、本当に理解しているの?」
「黙れよ女。俺は、俺が生きたいように生きる。」
「あなたを、殺す。」
「来いよ、遊んでやる。」
スキル発動:『アブソルート・ゼロ 』
世界が再び氷河期に塗り替わった。
雪が舞い、町全体が瞬時に凍り付く。
パラスは見事に氷漬けにされた。
その表情は変わらない。
笑っている。
「殺す。絶対に殺す。」
怒りと、悲しみと。
奴にぶつけるために。
スキル発動:『フリア・フェンリル』
氷霊の狼が咆哮を上げ、彼を喰らいつくす。
何度も何度も、牙を突き立て引き裂く。
絶え間なく響く氷の割れる音。
だがフレンの表情は晴れない。
スキル発動:『ヘルフレイム 』
関係なかった。
氷なんて。
周囲が一瞬で地獄の業火に包まれた。
先ほどの冷たさを忘れるように。
先ほどの悲しみを焼き切るように。
狂乱に包まれる。
(スキルの名前、中二病すぎんだろ。)
蚊帳の外でしか見ることはできないのか。
俺にできることは__
「ははwこんなものか、お前の冷徹さは?」
「殺す、お母さんを、お父さんを返せ!」
両者が構え激突する。
スキル発動:『フリーズン・ブラスト』
スキル発動:『ファイア+ホーリー』→『フレイム・ブラスト』
赤と青の極光が正面からぶつかり合い、空気を激しく歪める。
氷が炎に溶かされ、炎が氷に凍らされ。
両者一歩も引かない。
衝突音が響き地面をえぐる。
どうする俺は?
『放つもの』が言っていた
(『今の彼女なら君が呼べば数分で着くんじゃないかな。』)
イグサを、呼ぶ。
(ははwマジで最低だな。)
自分で捨てて、で?
なに?
都合が悪くなったら呼び戻す。
人の上に立つものとしては失格じゃないか。
「くっ、う。」
「さぁ、負けるんじゃないの?」
「私は__負けない。」
今はフレンを助けないと。
フレンの足が徐々に後退し始める。
ここで俺がパラスを撃ったら、フレンのプライドを傷つけることになる。
でも、命は一つだ。
何物にも代えられない。
たくさん奪った、失った。
目の前にあった命でさえ。
「悪いな、フレン。」
「え?」
肩に手を置き、優しく微笑みかけた。
「お前のプライドを踏みにじることになる。」
「おいおい、俺たちの勝負に水を__」
銃口はパラスへ。
そして引き金に指をかける。
「勝負は、世界は、不公平だからな。」
自然と、俺の口角が上がる。
「俺を、撃つn__」
「じゃあな。」
”バンッ”
弾丸はパラスの肩を打ち抜いた。
「あ、がっ、くっ!」
最後の抵抗か何かでバラスは手を自分にかざす。
身体強化か何かのスキルだろう。
だがもう遅い。
フレンの『フリーズン・ブラスト』が直撃し、一瞬で氷漬けにされた。
生死は定かではないが、意識はないだろう。
もう、あとは。奴を殺すだけ。
それですべての奴隷が解放される。
「これで、終わったの?」
「ああ、これで終わらせる。」
フレンは力が抜けたように膝をつく。
俺も正直限界だった。
今日だけでいろいろあったんだ。
少しは休んだ方がいい。
「どれくらい魔力は残ってる?」
「知りたい?なら教えてあげるよ!あと一発デカいのが打てるぐらい。でも回復には時間がかかる。」
(無理に意地を貼っているな。)
笑顔に疲れが見える。
「気にしないで、こんなこと。」
「ごめん。」
「なんで謝るのさ。」
(俺のせい、いや。)
こんなところで自虐をしている時間はない。
「ありがとう。戦ってくれて。」
「うん。」
静かな夜。
地面には何十もの人が倒れている。
中には死体も。
(今、決着をつける。)
遠慮はいらない。
奴の元へと走った。
「眠れ、パラ__はっ!」
奴の体が紫に輝く。
スキル発動:『マニピュレイト』
(なぜ、対象を操るスキルが?)
「まさか__いや、させるか!」
迷わず引き金を引いた。
そして、弾丸は奴を貫く、はずだった。
スキル発動:『ファイア+ウィンド』→『フレイム・サイクロン』
炎の竜巻にはじき返され、俺の腕をかすめる。
戦いが終わったと思っていた、が甘かった。
奴は狡猾だった。
自分で自分を操ったんだ。
戦いはまだ終わっていない。
(あっ、い、意識が。)
『よく聞いて!絶対にフレンを守るの。世界を守るために。』
黒い世界、頭に何かが流れ込んでくる。
「はぁはぁ、なんだ今のは。」
一瞬、境界線に連れていかれたような。
フレンを守れって?
俺にどうしろって。
パラスは狂ったように笑い、フレンに向かって照準を定める。
「アア、殺ス。女ァァァァ!」
「や、やめて。」
(フレンを、守らないと。)
「やめろ、やめろぉぉぉぉ!」
「ア?」
無我夢中に奴の体に飛びつき、地面を転がりながら必死に食らいついた。
殴られたかのような痛みが全身を回る。。
「邪魔ダー!」
スキル発動:『ウィンド+ウィンド』→『サイクロン』
奴の全身を覆うように風が纏い、刃が俺の皮膚を切りかかってくる。
風圧により体が外に弾き飛ばされる。
「ぎぃぃ、俺は!」
(少しでも、回復の時間を!)
俺に残されている手段は微量だ。
でも、それでも。
「俺は、俺は!ここで。」
力なんて残っていなかった。
でも残る力だけで、この拳にすべてを。
「ああああああああ!」
「目障リダ。」
そして奴の体に拳が__
スキル発動:『インパクト』
体に電撃が走る。
手と、足が、震える。
血の味が口に広がる。
「あ、ぐほっ!」
腹に衝撃が走る。
もう立つことさえ、できない。
それでも。
地面を這いで、奴の足にしがみつく。
「はな、さない。」
むなしい抵抗だった。
虫を払うように、足蹴りで終わらせられた。
「アトハ、女ダケ。」
「や、やめてよ。ルーズ、イグサ。助けて。」
(はは、この手は使いたくなかった。)
自分が負けたみたい、いや負けたか。
みっともないな。
でもそれが俺か。
「イグサ、フレンを守れ。」
「えっ?」
「何ヲイッテ言__」
雪が降り始める。
でも暖かい。
一つ一つが体を支えてくれる。
刹那、ここに氷の守護者が舞い降りる。
「お姉ちゃん、久しぶり。」
「イグサ、どうして。」
フレンの表情に明るさを取り戻す。
「ユー、都合がいいね。」
「余計な、言葉を、覚えたな。」
「誰ダ、オ前?」
フレンと似た容姿。
薄い金髪、静かな雰囲気。
しかし今彼女の瞳は青色に輝く、一等星のよう。
「私、イグサ。お姉ちゃん、そして、ユー。」
「守りに来た。」
あら、主人公がボッコボコ。
スキルないと弱いね~。
もっと肉弾戦頑張ってもらわないと。
次回、イグサが活躍。
ディエル、ス___




