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42/53

42 身勝手

夜空に光る明るい一番星。

一等星か。


ランランと光る金色の瞳が俺たちを見つめる。

まるで獲物を狩る前の猛獣のように。

その顔は俺たちを嘲るように笑っていた。


「お、お前は何をした。」

「すべての奴隷のスキルをw、奪い取ったのさ~。」

「奪い、とった?」


奴の周りには無数の人が倒れている。

生気を吸い取られたかのように。

干からびたかのように。


(こいつにそんな容量が?)


マジか。

すべて奪い取れるほどの容量があるのか。


「どういうことなの?」

「俺が契約した、まぁ奴隷だな。のスキルを無条件で奪い取ることができる。」

「そ、そんな。」

「奪い取られた人はどうなる。」

「知らん。」


(無責任なことを言いやがって。)


「勝手に倒れているだけだし、死んだんじゃね。」

「何馬鹿なこと言ってんだよ。他人の命を無下に__」

「お前もさ、余裕で俺の奴隷殺していただろ。お前に命のあり方を語る資格はない。」

「チッ、そうだな。」


(俺が命を語れるはずがないよな。)


悔しいが同感だ。

人の生死を軽く見すぎている。


「私の、お母さんは?」

「は?そんなんいちいち覚えているわけないだろ!」

「ふざけないで。」


彼女の青い瞳が輝く。

静かな怒りが空気そのものを凍り付かせるような気配。


「あなたは自分が何をしているか、本当に理解しているの?」

「黙れよ女。俺は、俺が生きたいように生きる。」

「あなたを、殺す。」

「来いよ、遊んでやる。」


スキル発動:『アブソルート・ゼロ 』


世界が再び氷河期に塗り替わった。

雪が舞い、町全体が瞬時に凍り付く。


パラスは見事に氷漬けにされた。

その表情は変わらない。

笑っている。


「殺す。絶対に殺す。」


怒りと、悲しみと。

奴にぶつけるために。


スキル発動:『フリア・フェンリル』


氷霊の狼が咆哮を上げ、彼を喰らいつくす。

何度も何度も、牙を突き立て引き裂く。


絶え間なく響く氷の割れる音。

だがフレンの表情は晴れない。


スキル発動:『ヘルフレイム 』


関係なかった。

氷なんて。

周囲が一瞬で地獄の業火に包まれた。


先ほどの冷たさを忘れるように。

先ほどの悲しみを焼き切るように。

狂乱に包まれる。


(スキルの名前、中二病すぎんだろ。)


蚊帳の外でしか見ることはできないのか。

俺にできることは__


「ははwこんなものか、お前の冷徹さは?」

「殺す、お母さんを、お父さんを返せ!」


両者が構え激突する。


スキル発動:『フリーズン・ブラスト』

スキル発動:『ファイア+ホーリー』→『フレイム・ブラスト』


赤と青の極光が正面からぶつかり合い、空気を激しく歪める。

氷が炎に溶かされ、炎が氷に凍らされ。


両者一歩も引かない。


衝突音が響き地面をえぐる。


どうする俺は?

『放つもの』が言っていた


(『今の彼女なら君が呼べば数分で着くんじゃないかな。』)


イグサを、呼ぶ。


(ははwマジで最低だな。)


自分で捨てて、で?

なに?

都合が悪くなったら呼び戻す。

人の上に立つものとしては失格じゃないか。


「くっ、う。」

「さぁ、負けるんじゃないの?」

「私は__負けない。」


今はフレンを助けないと。


フレンの足が徐々に後退し始める。

ここで俺がパラスを撃ったら、フレンのプライドを傷つけることになる。

でも、命は一つだ。

何物にも代えられない。


たくさん奪った、失った。

目の前にあった命でさえ。


「悪いな、フレン。」

「え?」


肩に手を置き、優しく微笑みかけた。


「お前のプライドを踏みにじることになる。」

「おいおい、俺たちの勝負に水を__」


銃口はパラスへ。

そして引き金に指をかける。


「勝負は、世界は、不公平だからな。」


自然と、俺の口角が上がる。


「俺を、撃つn__」

「じゃあな。」



”バンッ”



弾丸はパラスの肩を打ち抜いた。


「あ、がっ、くっ!」


最後の抵抗か何かでバラスは手を自分にかざす。

身体強化か何かのスキルだろう。


だがもう遅い。


フレンの『フリーズン・ブラスト』が直撃し、一瞬で氷漬けにされた。

生死は定かではないが、意識はないだろう。


もう、あとは。奴を殺すだけ。

それですべての奴隷が解放される。


「これで、終わったの?」

「ああ、これで終わらせる。」


フレンは力が抜けたように膝をつく。

俺も正直限界だった。


今日だけでいろいろあったんだ。

少しは休んだ方がいい。


「どれくらい魔力は残ってる?」

「知りたい?なら教えてあげるよ!あと一発デカいのが打てるぐらい。でも回復には時間がかかる。」


(無理に意地を貼っているな。)


笑顔に疲れが見える。


「気にしないで、こんなこと。」

「ごめん。」

「なんで謝るのさ。」


(俺のせい、いや。)


こんなところで自虐をしている時間はない。


「ありがとう。戦ってくれて。」

「うん。」


静かな夜。

地面には何十もの人が倒れている。

中には死体も。


(今、決着をつける。)


遠慮はいらない。

奴の元へと走った。


「眠れ、パラ__はっ!」


奴の体が紫に輝く。


スキル発動:『マニピュレイト』


(なぜ、対象を操るスキルが?)


「まさか__いや、させるか!」


迷わず引き金を引いた。

そして、弾丸は奴を貫く、はずだった。


スキル発動:『ファイア+ウィンド』→『フレイム・サイクロン』


炎の竜巻にはじき返され、俺の腕をかすめる。


戦いが終わったと思っていた、が甘かった。

奴は狡猾だった。


自分で自分を操ったんだ。


戦いはまだ終わっていない。


(あっ、い、意識が。)


『よく聞いて!絶対にフレンを守るの。世界を守るために。』


黒い世界、頭に何かが流れ込んでくる。


「はぁはぁ、なんだ今のは。」


一瞬、境界線に連れていかれたような。


フレンを守れって?

俺にどうしろって。


パラスは狂ったように笑い、フレンに向かって照準を定める。


「アア、殺ス。女ァァァァ!」

「や、やめて。」


(フレンを、守らないと。)


「やめろ、やめろぉぉぉぉ!」

「ア?」


無我夢中に奴の体に飛びつき、地面を転がりながら必死に食らいついた。

殴られたかのような痛みが全身を回る。。


「邪魔ダー!」


スキル発動:『ウィンド+ウィンド』→『サイクロン』


奴の全身を覆うように風が纏い、刃が俺の皮膚を切りかかってくる。

風圧により体が外に弾き飛ばされる。


「ぎぃぃ、俺は!」


(少しでも、回復の時間を!)


俺に残されている手段は微量だ。

でも、それでも。


「俺は、俺は!ここで。」


力なんて残っていなかった。

でも残る力だけで、この拳にすべてを。


「ああああああああ!」

「目障リダ。」


そして奴の体に拳が__


スキル発動:『インパクト』


体に電撃が走る。

手と、足が、震える。

血の味が口に広がる。


「あ、ぐほっ!」


腹に衝撃が走る。

もう立つことさえ、できない。


それでも。

地面を這いで、奴の足にしがみつく。


「はな、さない。」


むなしい抵抗だった。

虫を払うように、足蹴りで終わらせられた。


「アトハ、女ダケ。」

「や、やめてよ。ルーズ、イグサ。助けて。」


(はは、この手は使いたくなかった。)


自分が負けたみたい、いや負けたか。

みっともないな。

でもそれが俺か。


「イグサ、フレンを守れ。」

「えっ?」

「何ヲイッテ言__」


雪が降り始める。

でも暖かい。

一つ一つが体を支えてくれる。


刹那、ここに氷の守護者が舞い降りる。


「お姉ちゃん、久しぶり。」

「イグサ、どうして。」


フレンの表情に明るさを取り戻す。


「ユー、都合がいいね。」

「余計な、言葉を、覚えたな。」

「誰ダ、オ前?」


フレンと似た容姿。

薄い金髪、静かな雰囲気。

しかし今彼女の瞳は青色に輝く、一等星のよう。


「私、イグサ。お姉ちゃん、そして、ユー。」


「守りに来た。」



あら、主人公がボッコボコ。

スキルないと弱いね~。

もっと肉弾戦頑張ってもらわないと。


次回、イグサが活躍。

ディエル、ス___


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