41 力を
「_て_きて。」
(ね、むい。)
「__きて__起きて!」
(ねた、い。)
「起きなさいよ!」
「あ、はい。」
毛布を取られ寒さが一気に流れ込んできた。
外から爆発音が地下を揺らす。
「な、なにがあった?」
「わからない。奇襲を受けた。」
「は?」
数人が怪我をして倒れている。
口から血を流していて、傷口は黒く染まっている。
治療をしているが治りが悪そうに見える。
「お、おい。どういうことだよ。」
「わからない。それにお父さんもいない。」
「ギルアさんが?」
(クソッ、何がどうなっている。)
上から響く轟音から、壮絶な戦闘を繰り広げていることはわかるが。
爆風で埃が舞う。
「早く、戦うよ!」
「え、ええ。」
俺は状況を理解していなかった。
ただフレンは一度このような経験をしているので慣れているのだろう。
あまり慣れない方がいいと思うが。
そしてただ言われるがまま地上に出た。
階段を登った瞬間、熱風が頬をかすめた。
近くから爆発音が響き、硝煙と血の匂いが鼻をつく。
「ははw死ね!俺に逆らった愚か者たちよ!」
「あれがパラス、か。」
金髪、高身長でイケメン。
金色の瞳はどこか濁っているようにも見えた。
(狂気で歪んだのか。)
高台に上って俺たちを見下ろしている。
(いかにも悪者って感じだな。)
「奴隷たちよ!自分の仲間たちを!殺し合え!」
後続に控えていた奴隷たちも次々と出てくる。
そしてスキルの打ち合いが始まる。
火、水、風、氷、様々な系統のスキルが飛び交い、夜を彩る。
「あれ、スキルで狙えないの?」
「無理、狙おうとしたら奴隷を使って自分を守らせる。」
「そうか。」
「それに奴隷たちは__」
彼女の顔が一瞬曇る。
「わかった。」
「うん。」
(おそらく顔見知りがちらほらいるんだろう。)
目がうつろで、動きには生気はない。
強制された兵士のように。
当初の予定では主人が死んだら契約は破棄されるから主人を殺そうと思っていたが、もう主人とか悠長なことを言っていられる状態じゃなくなってきたな。
あれ、俺一回死んだよな。
ノーカンなのかな?
(とりあえずはどうするか。)
パラスが手を振ると一人の男が出てきた。
「いけ!そこの赤髪の奴隷。見せてやれ。」
「__はい。」
スキル発動:『ブレイジング・ブラスト』
巨大な爆炎が地面をえぐり、俺たちの足元が揺れた。
冬とは思えない暑さが俺たちを襲う。
(クソ、まずいな。)
無限に奴隷たちは湧いてくると思っていい。
それに『ゼロ』を使っても気絶する保証はない。
なにせ俺が気絶しなかったから。
「フレン、とりあえずは奴隷を狩る。」
「_うん。わかった。」
「俺が前線に向かうからお前は父親を捜せ。」
「えっ?」
「行け!」
フレンは戸惑いながら走っていった。
俺の覚悟を受け取ったように、振り替えず。
(今のごちゃごちゃの状態なら『鑑定』を使ってもバレねぇ。)
スキル発動:『鑑定』
名前:パラス
状態:狂乱
クラス:スレーブ・トレーダー
スキル:『マニピュレイト』
『ロブ』
「誰だ!今俺を『鑑定』したやつは!」
パラスの怒号が戦場を響かせる。
(やっぱわかるんだな。)
俺も一回くらい受けてみたい。
スキルが飛び交っている中、こんなことを考えている場合じゃないと思う。
マジで。
全員が全員物陰からスキルを打ち合っている。
ただ一人、一人と物量で押されて行っている。
「全員伏せろ!」
(えっ?)
スキル発動:『ファイア+ウォーター』→『スチーム・エクスプロージョン』
あたり一帯が爆発し、その爆風で体ごと吹っ飛ばされた。
地面はえぐれ、がれきが一掃された。
(なんで、合体スキルが。)
固有スキルじゃないのかよ。
わからないがこれじゃ近づけない。
「どうするの?ガキ。」
「ラーサさん。」
(16だ。)
てかいたのか?
いや普通か。
「このままじゃ無理です。」
「何か打開策はあるの?」
(彼女らは氷系統のスキル、たいしてあちらはすべての系統の奴隷をそろえている。)
どうせ氷を解かされて終わりだ。
(ならどうする?)
頭を使え。
「俺が道を切り開きます。」
「えっ?でもどうやって。」
「俺が『ゼロ』を使い、相手の前線を一時的にでも崩します。」
「でもそんな広範囲にやれないじゃない。」
(やりようはある。)
「だから前線が一気に減ったタイミングで攻撃を仕掛けてください。」
「わ、わかったわ。」
「あなたたちはいったん下がって効果範囲外に出てください。」
「ええ。」
「俺を、信じてください。」
強く、その志を受け取ってくれたかのように彼女は下がっていった。
(まぁ、全員気絶できるんだけどね。)
でもパラスが気絶する保証はないし。
いいや、行こう!
俺は地面をけった。
「うおぉぉぉぉ!」
「な、なんだ?奴隷ども、迎え撃て!」
正面から、左右からスキルが飛んでくる。
俺は身をひるがえし、銃弾を放つ。
頬をかすめ、血が飛び、地面が赤く染まる。
「と、止めろ!」
スキル発動:『ファイア+ファイア』→『メガフレイム』
「お見通しだ。」
転がるように避けた。
熱波が背中を焼くが関係ない。
「っ、小賢しい。だがこっちまで来れるかな?」
(円形なのが今となってはネックだな。)
後ろまで巻き込んでしまう。
服が切れ、足が焼け、視界が暗くなっても、走る。
いや走れ。
そしてどれ痛いの前に来てつぶやいた。
「静まれ。」
スキル発動:『ゼロ』
世界が少し静かになる。
数十人の奴隷が同時にひざを折り、気絶して倒れこんだ。。
前線はいま、崩壊する。
「今です。」
「行くわよ!突撃!」
後方に待機していたラーサ達がこちらに突撃してきた。
「た、立て直せ!奴らを近づけさせるな。」
無意味だ。
もう勢いはこちらの方に傾いた。
「ガキよ。よくやったわ。あとは休んで。」
「あり、がとう。」
ただこの瞬間、俺たちは反撃の狼煙を上げた。
前線を後ろに地下に戻った。
スキルの炸裂音を気にせず。
地価の床には何人かが怪我をして横たわっていた。
「おい、ガキ。すごいじゃないか。」
「ありがとう。」
「ガッツ、すごいな。」
「そうですか、ところでフレンは?」
「え、まだ帰ってきてないが。まさか何かに巻き込まれたんじゃ。」
「いや、父親を捜しに行ったんで。」
「そうか、なら安心だな。」
「こっちに来て、治療するから。」
女性に連れられ椅子に座った。
スキル発動:『ヒール』
「あまり無茶しないでください。子供なんですから。」
「はは、そうですね。」
(もう16だ。)
昔の日本だったら成人しているぞ。
一応ここは中世の世界っぽいけど。
壁に腰を下ろし少し休憩することにした。
(ああ、疲れた。)
フレンが戻ってきていない。
もしかしたら父親はもう、いや待てよ。
母親が死んでいる、または奴隷にされている可能性がある。
現にここには彼女の母親はいない。
そして父親はイグサとフレンを逃がしたと言っていた。
ならどうして父親は生きているんだ?
生きている?
__奴隷
(まさか!)
すでに彼はパラスと奴隷契約を結んでいる。
母親だけが逃がされるはずがない。
スパイとしてここに送り込まれたんだ。
そして俺に襲撃作戦のことがバレたから、急遽強襲をかけることにした。
なぜなら俺はこの国を変えられるスキルを持っていたから。
(だとしたらフレンが危ない!)
「どこ行くんですか?まだ怪我は治っていないんですよ。」
「すみません。急ぎます。」
階段を上り、フレンが走っていった方向へと俺も向かった。
ただ随分と時間が経っている。
発見できるかどうか怪しいが。
瓦礫の跡を走り続けた。
町に人影は見えない。
おそらく自分の家に籠っているのだろう。
奴隷に戦わせるだけたたかわせておいて自分たちは。
そう考えればパラスはまだマシなのか?
「い、いや、お父さん。」
「フ、フレン。ごめん、でも体が。」
開けた場所にフレンとギルアの二人が取っ組み合いをしていた。
いや、ちょっと表現が悪いな。。
父親が銃口を娘に向けていた。
「や、やめてください。ギルアさん。」
「だ、黙れ。お、俺は、pラサsま、めいれあい、さがg。」
(クソ、意識を保つのも限界か。)
いやよく粘った方か。
「フレン。動きを止めるだけでいいんだ。」
「で、でも。」
「パラスを殺さないと、奴隷のままだ。」
「__ごめんお父さん。」
スキル発動:『フリーズン』
彼の足音がゆっくりと凍る。
(低体温症で死ぬんじゃね。)
「はnせ!、あがgか。」
フレンは顔を下げながらひたすら謝っていた。
肩にそっと手を置くことしかできなかった。
「行こう。」
俺たちは静かにそこから立ち去った。
足音がよく聞こえる。
一つ一つが。
なぜ聞こえる?
なぜだ。
「フレン、なんか静かすぎないか。」
「勝った、のかな?」
「だといいけど。」
フレンはずっと俯いたまま。
気持ちが落ち着かないことはわかる。
親に牙をむいたんだから。
パラスを殺せば解決する話だ。
(にしても静かすぎる。)
何か嫌な予感がする。
瓦礫をかき分けながら進んだ先にあったのは__
「な、なんだ。これは。」
これが喉に詰まった。
広がる光景は残酷極まりないものだった。
「なによ、これ?ラーサさん?」
近くにラーサと思わしき女性が倒れていた。
血が止まっていない。
「ラーサさん。何があったんですか。」
「に、げて。」
「えっ?」
前方から殺気を感じた。
そこに立っていたのはただ一人。
「ははwガキじゃねぇか。まだ生きていたのか。ちょうどいい。遊ぼうぜ。」
狂乱状態の男だった。
主人公、がんばって!
頭はちょっと使ったけど、まだあなた何もやっていないじゃない。
ただどうやってパラス倒そうか。
マジで。




