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40 悲報

「__もう、いい。」

「落ち着け。」


そこは見るに堪えない場所。

家は半壊、いや全壊しているものもあった。

地震が起きたような、それほど荒廃していた。


あたりは建物の残骸だらけ。

敗れた服、壊れた食器、ボロボロの本。

人の見る影など到底あるとは思えなかった。


(でも、ここに反抗組織がいるのか。)


隠れるにはこういうところがいいのか。

かくれんぼはあまりしない方だったけど。


「もういこう。」

「いや待てよ。ここに反抗組織がいるかもしれないって言っていたじゃないか。」

「だから?私たちだけでこの国なんて変えることはできない。」


(悲観的になりすぎている。)


ショックで一時的に興奮しているんだろう。

落ち着け。


「夢を見すぎ、この国は終わり。だから__」

「フレン?どうしてここに?」


背後から声が聞こえた。


(誰だ?)


振り返ってみてもやはりわからん。


「フレ__」

「おとう、さん?」

「そうだ、でも何でここに?」


(お父さん?父親は死んでいなかったか。)


うれしい限りだ。

でもよく生きていたな。


しかし、タイミングがちょうど良すぎるな。

少し警戒はしとくか。


「えっと、この人がラプシカに会いたい人がいてって。」

「誰だ?君は見たことがないが。」

「初めまして、ルーズです。」


(ちょうどいい。)


イグサの安否を伝える。

今まで安心したくてもしきれなかっただろう。


「あなたに会いたかった。」

「お、俺?どうしてまた?」

「俺は贖罪を償うために。」

「贖罪?」

「イグサはゾルバンという国にいます。」

「い、イグサが生きているのか!」


緊張が解けたかのように彼の肩が一気に抜けた。


「と、とりあえず中で話そう。」


そして倒壊した建物の中へと続いた。





中に入り、地下へ階段を下ると広く冷たい空間が広がっていた。

数えるだけでも数十人の人がいたが全員疲弊しきっていた。


「俺たちは約一年、ずっとここで耐えてきたんだ。」


(無駄なことを。)


どうせだったら逃げればいいのに。

こんなところを捨てて。


でも捨てられないのだろう。

故郷を。


そして古びた椅子に座った。


「イグサが生きているってどういうことだ?」

「いやそのままの意味ですけど。」

「フレン、なぜだ?俺がお前たちをいっしょに逃がしたはず。」

「ごめんお父さん。あの時、敵につかまりかけてその時イグサが__」

「そうか。わかった。」


フレンは下を向いていたが、それでも父親は彼女を責めなかった。


(優しい父だ。)


「とりあえず無事でよかった。」

「お母さんは?」

「__聞かないでくれ。」


今度は父親が下に向いてしまった。

おそらく母親は奴隷にされたか、それとも殺されたか。

状況が状況だったんだろう。

仕方がないと思うべきか。


「ごめん。」

「それで、えっと、ルーズさん?これからどうするつもりですか?」

「この国を落とす。」

「え?」

「いやちょっと何言ってんの?」


(自分でも何を言っているかわからない。)


ただ、不可能ではない。

俺が町の中心に行き、『ゼロ』を効果範囲最大でやればおそらくこの町ぐらいは覆えるだろう。

それで全員気絶させ、あとは殺すだけ。


「問題が何個かある。」

「いやいや、ちょっと待ってって。」

「町の中心が奴ら奴隷商の本拠地だということ。」

「まぁそうだけど。」

「あと、町が広すぎること。」

「うーん、そうだけど。」

「さらに俺がもしこの町を落とすほどのスキルを使ったら間違いなく俺がぶっ倒れる。」


(使ったことないけど。)


そもそもこの世界にシステムを理解しないできたからよくわからないんだ。

どのスキルがどれくらい魔力を消費するのか

どれぐらいのスピードで魔力を回復するのか。


問題は山積みだ。


「えっと、分かった。私たちは何をすればいい?」

「俺の補佐が一人。あとは全員町から脱出しといてくれ。

「俺たちはただ見ているだけってことか?」

「まぁそういうことになるな。」

「そんなことできるか!」


椅子を蹴った勢い良く立ち上がった。

そして眼前にきて胸ぐらをつかまれる。


(ちょっと待ってくれよ。)


何か気に障ることでも言ったか?


「俺の、今までの反抗が、惨めじゃないか。」

「今日か明日にはここは潰される。時間がないんだ。」

「へ?」


驚いて父親は俺の服から手を離した。

ちょっと伸びた。


「ある男が言っていた。時間がない。」

「__一旦全員を集めてそこで決める。」

「分かった。」


そして父親は呼びに行った。


「ねぇ、これでいいのかな。」

「俺はわからない。ただ、元ある形に戻したい。失ったものは、戻ってこない。」

「失ったもの?」

「サルゴニアっていう国は知っているか?」

「何それ?童話の中の話?」

「いや、なんでもない。」


(世界が修正されたか。)


惜しいことをした。

あそこは勇者に関する文献がたくさんあったのに。

もう一度やり直すことができれば。


いや、終わったことだ。

切り替えよう。


「おい、こっちに来てくれ。」

「はい、行きます。」


何十人が俺を見ている。


「誰だこいつは?」「新手の詐欺か?」「危ないんじゃないか?」

「落ち着いてくれ、今日か明日にはここは潰される。」


そう言ったとたん周囲が騒然とした。

無理もない。

明日死ぬって言われるようなものだから。


「だから作戦がある。」

「なに!赤の他人が出しゃばって、あたしたちに指示するってわけ?」

「なに?」


気の強そうな女性が抗議してきた。


「ちょっと、落ち着いてくれラーサ。」

「黙って頂戴、ギルア。」


(えっと、フレンの父親がギルアで、今俺に抗議している人がラーサ。)


頭がこんがらがるわ。

いきなり名前を言われても。


「あたしたちは必死に抵抗したわけよ。それなのにこの一日で潰されるってわけ?冗談じゃない。」

「いや、俺は作戦を伝えたいわけで__」

「だだのガキが出しゃばってんじゃないわよ。」

「す、すみません。」

「それにあなたに何のスキルがあるっていうの?何もないでしょ。」

「一応、周囲の人間を気絶させる。」


気絶、と言ったらまたもや周囲が騒然とした。


(まぁ、強いよな。)


あのキリとかいうやつのせいで、いろいろ面倒ごとが生まれたし。

いや他責にしてはいけないか。


「そ、き、危険よ。こんなやつを仲間に引き入れるなんて。」

「まぁ、ラーサ落ち着くんだ。俺の娘が連れてきたんだぞ。信用しないじゃないか。」

「無理だわ、それにそんな奴の作戦を信用できるっていうの?」


(クソが。)


現にお前たちの状況が示しているだろう。

結局はじり貧だ。

どうせ今日明日潰されなくても、いつか終わる。


俺が手を差し伸べてやって__


(これじゃ、無双系とやっていることが変わらないじゃないか。)


これだとこいつらの予後がどうなるかわからない。

仮に落とせたとしても、まともに体制がとれるとは思わない。


「すみません。もっと考えるべきでした。」

「そうよ、とにかく明日の襲撃に備えるように準備をするわ!」

「了解です。」


(いったんお開きか。)


「ラーサ、どこに行く?」

「ちょっと外の様子を見に行くだけよ。」

「そうか。早く寝ろよ。明日がある。」

「わかっているわ。」


(外に用事か。)


何かあるな。

まぁ警戒はしとくか。


「悪いな。でもみんな気が立っていて。」


ギルアが謝罪してきた。


「仕方ないことです。」

「わかってくれたありがとう。こっちにベッドがある。」


簡素なものだった。

布はボロボロだし。

まぁ、分かりきっていたことだけど。


「すまない。こんなものしかなくて。」

「大丈夫です。おやすみなさい。」

「ああ、おやすみ。」


そう言って俺は布団をかぶった。


(さて、どうするか。)


おそらく明日大勢の軍勢が来るだろう。

仮に『ゼロ』で気絶させたとて、周りの人間も気絶する。

もし相手の応援が来られたらまずいな。


(なるべく敵を減らしてから使うか。)


俺は瞼を閉じ__


「お、おい、フレン。そっちはルーズさんのベッドだぞ。」

「あら、そうなの?分からなかった。暗くてよく見えないの。」


そっと瞼を閉じた。

そしてまた暗闇に落ちていった。






『やぁ、こんばんは。』

「ああ、またか。」


相変わらずの声が聞こえる。

また呼び出された。

あの境界線に。


「聞きたいことがある。」

『最近私を頼りすぎじゃない?まぁいいけど。』


(サポートしたいと言ったのはそっちだろう。)


いいけど。


「イグサって知っているか?」

『同名は何人かいるね。でも君が言いたいのはフレンというやつの妹だろ。』

「そうだ。」

『それで?』

「いまはどうだ?様子は?」


(一応確認しときたい。)


様子も伝えたいし。


『君があの日捨てたときから、ずいぶんと強くなっているよ。』

「やめろ。思い出したくない。」

『君が自分で捨てたんじゃないか。』

「__ああ、そうだな。」


(いつかケリはつける。)


これが終わったらちゃんと会いに行く。


『君が最後に彼女にないを言ったか覚えている?』

「いや。」

『自分をそこで見つければいいんじゃないか、とね。』


(最低だな。)


俺さえも自分を見つけきれていないのに。


『それが命令となって彼女は自分の真価を見出した。』

「命令?まだ奴隷の契約は続いているのか?」

『ああ、もちろん。今の彼女なら君が呼べば数分で着くんじゃないかな。』


(そんなに。)


すごいな。

そんなに早く成長するなんて。


『もともと彼女は素質があったからね。』

「そうか、わかった。」

『ほかに聞きたいことはあるかな?』

「いや、今はいいかな。」

『ラーサという女については聞かなくていいの?』

「ああ、自分で解決する。」

『かっこいいね~。』


(馬鹿にするなよ。)


悲しくなるじゃないか。


「あ、そうだ。君はどういう存在なんだ?」

『それを話すと長くなる。また今度かな。』

「わかった。」


(ここに居すぎると死ぬって言っていたし。)


『じゃあまたね!』

「ああ。」


そして再び暗闇へと吸い込まれていった。



荒廃した世界にちょっと憧れる自分がいる。

そこで暮らしたくはないけど。


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