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37 支え合い

『また、あったね。』


また戻ってきてしまった。

あの空間に。


「どうして俺はまたここに?」

『私が呼んだんだ。』


(呼ぶ、意識を飛ばしているみたいな感じか。)


「何をしにきた。」

『私は、君をサポートしに__』

「じゃあ、全部教えろよ。サポートしてくれるんだろ。」

『で、でも。』

「必要最低限のことすら知らない。俺はいま、何のためにこの世界に召喚されたでさえ。」


困ったような反応をしている。

困っているのはこっちなんだが。


しばらく間を開けて再度声が響く。


『私はあくまでサポート、直接的には何かするわけじゃない。』

「帰れよ、じゃあ。」

『魔王が君をサポートする形にしたのは、君を成長させたかったんだよ。』

「魔王とか知らねぇし。」


(誰だよ。)


見たことも、声を聴いたこともない。

勇者御一行がどうせ会うんだろうけど。


『今までの英雄たちはすぐに『封印』を解けて自分の実力に自信がつけたんだ。』

「自分の実力に心酔していただけだろ。」

『確かにそうだけど、それでも自分に自信があったんだ。仲間もできた、目的もあった。』

「悪かったな。」

『君はそれでいいの?』


(どうでもいい。)


「前にも言っただろ、俺は勇者でも英雄でもないって。」

『君はなりたくないのか?』

「ああ、ない。」

『そうか。』


(誰かを助けたいとか、何かを果たしたいとか、よくわからない。)


今まで何も果たせていない。

そんな奴が英雄、なれるわけがない。


『いいや、私は諦めない。』

「ならさ、教えろよ。その『封印』の条件ってやつを。」

『それは___君自身で解決すべきだ。』


「ふざけるなよ。なんでもったいぶる。いいじゃないか、教えてくれたって。英雄にしたいんだろ。世界を救ってほしいんだろ。サポートしたいんだろ。じゃあ早く教えろよ!」


怒号が響く。

喉が渇く、いやそんなものはないが。


心の、魂の叫びを、不満をぶつけた。

鬱憤をぶつけたところで解決しそうにないが。


「俺は、おもちゃじゃない。駒でも、奴隷でもない。だからさ、教えてくれよ。」

『知ってはいる。』

「じゃあ__」

『ただ条件が君に依存しすぎている。』

「依存?」


(すべてが俺に委ねられるっていうことなのか?)


『君の心がそれを真に受け入れないといけないんだと思う。今までの英雄に備わっていた潜在的なものが君にはない。』

「そ、それでもいいからさ。教えてくれよ。」

『だめだ、かえって逆効果になってしまう。』

「なんなんだよ。」


(結局これかよ。)


何もわからないままだ。

俺は奴らの人形に過ぎない。


世界を救う駒の一つとして。


『一つだけ、私は『放つもの』。いつか私の話も聞かせる。』

「ははw、いいね。」


水に沈み込むように、いや誰かから突き落とされたように。






(_____ん)


天井のランプがゆらゆらと揺れている。

チカチカと時々点滅している。


(知らない天井だ。)


木造の建物。

ボロく隙間風が入り込み少し寒い。

ただ暖炉が近くに焚いてあるのであまり気にはならない。


「お、おきたの?」

「え、ああ。フレンさん。」


横にはボロボロ姿のフレンが座っている。

少し目が赤いが気のせいだろう。

鼻もすすっている。


風邪か?


「心配なんて、していなから。」

「あ、えっと。」


(クッソ、さっきまで変な夢を見ていたせいで調子が狂う。)


夢と、自分の中で暗示をしているが。

おそらくあれは。


「あっ、いっ、」

「動かないで、右腕の損傷がひどいから。」


一応包帯で巻かれてはいるが、隙間から血が流れ出ている。

動かすたびに激痛が走る。


(けがは、嫌いだ。)


「安静にしていて。大丈夫だから。」


フレンは優しく俺の手を包む。

暖かい。


(あー、いてーよ。)


「ここは?」

「中継地点の村よ。馬車に乗る前に言ったでしょ。」

「ああ、それですか。」


(しかし長い。)


天気もひどくなっている。

あまりだらだらとしてはいられないだろう。


「あと何日くらいですか?」

「早くて1日だと思うけど、でも今雪がひどくて数日は待機しないといけない。」

「そうですか。」

「それに、けがの治療もしないといけないでしょ。あなた、あなたそういえば名前は?」


(名前。)


たまには本名を名乗るか?

いやでも呼びずらいだろうな。

横文字でなんかないか?


小さい頭を巡らせる。

行きついた答えは___


「俺は、ルーズだ。」

「ルーズ、いい名前ね。」


(馬鹿にしてんのか?)


lose、負ける、失う。

ちょうど戦闘能力が失ったところだし。

皮肉ってやつだよ。


突然扉があいた。

冷風が一気に部屋へと流れ込む。


「すまん、こんなものしかなくて。」


爺さんがスープをお盆にのせて持ってきた。

湯気が出ている。


(あったかそうだ。)


ちょうど寒かったしいいところだ。

でかしたぞ、爺さん。


あれちょっと手元震えてない?


「そこの机に置いといてください。」

「そうか、ゆっくりしていくんじゃぞ。」

「ありがとうございます。」


ご丁寧にフレンが相手をしてくれた。


そして、ん?


彼女の手にはスープとスプーン。

そして少し頬を赤らめながらこちらを見ている。


「さ、さぁ、口を、あ、開けなさい!」


(最悪だ。)


おかしい。

まだスープを飲んでいないのに体があったかい。


羞恥心で死にそう。



「いや、自分で。」

「い、いいから。早く開けなさい。」


(物心ついた時から自分で食っていたぞ。)


マジで死にたい。


「ほら、手使えないんだから。ね?」

「っ、りょ、すぅ、わかりました。俺の負けです。」


(ルーズ、伏線回収。)


「あーん。」


(ああ、最悪だ。)





虫の鳴き声は残念ながら聞こえない。

だんだんと寒さが増していく。


もう夜だ。


「もう寝よう。夜も遅いみたいだし。」

「で、でもどこで?」


ベッドは一つ。


マジで嫌だよ。


「ごめん、ちょっとお金がなくて。」

「えっと、じゃあ今から俺が。」

「それも込みで3倍にしたのよ。」


(なるほど?)


ベッドが二つになるなら何倍でも払うが。

しかしそう甘くいかないみたいだ。


「じゃ、少し右に移動してもらえる?」

「いや、俺、けが人なんで。ちょっと床で寝てもらうことは?」

「女の子を床で寝させるの?」


(俺は男女平等主義だ。)


まぁ口先だけのような気もするが。


「じゃ、じゃあ、ちょっとどいて。」

「チッ、はい。」

「チッ、ってなによ。私が運んであげたんだから感謝しなさいよ。」

「あ、ありがとう。」

「ふw、それでいいのよ。」


しかしそれは時間稼ぎにもならなかった。

覚悟を決めたような顔でベッドに潜り込んできた。


狭いし、感触が気持ち悪い。


「ちょっと、狭いわよ。」

「すみません。」


(いつかしっぺ返しが来る。)


覚えてろ。


「おやすみ。」

「おやすみなさい。」


ライトの明かりを消して瞼を閉じた。


(まって、また寝たらあいつが来る。)


もう、諭されるのはごめんだ。

でも寝たい。

魔力を消費しすぎたせいで体がだるい。


(サポートが、てかサポートって魔王なのか?)


それを示唆する発言を『放つもの』が言っていたような気がする。


ああ、またいろいろ考えないといけない。

なんで考察しないといけないんだよ。


もっとフラットに生きたいよ。


(『封印』の条件が俺に依存している、か。)


おそらく精神的な問題。

サポートは勇気と言っていた気がする。

つまり、何かしらで勇気を見せないといけないのか?


今までも何回か見せていたような。

それでは足りないのか?


わからん。


「寝れないの?」

「その、体に抱き着いてくるの、やめてもらっていいでしょうか?」

「ごめん、少しだけ甘えさせて。」


(ちょっと力強いかも。)


おなかが痛い。


「寝るとさ、いつも夢に出てくるの。イグサが私を逃がした、あの時の情景が。」


(イグサ。)


謝罪を、いつかしないとな。


「炎の中、襲撃者に囲まれていた私を自らが囮となって逃がしてくれた。私のために戦ってくれた。」


「私は恐怖で、そこから逃げることしかできなかった。」


(恐怖。)


「私は、自分が情けない。自分の命を投げ出してでも、一緒に戦えばよかった。まだ助かる希望はあった。」


「イグサを、一人にしてしまった。一緒にいてあげれば___」


(俺も、同罪だな。)


精神状態を言い訳にしてしまった。


「だから、今夜だけは。もう何度も夢で一人にしたくない。」

「ごめん。」

「なんで、謝るのさ。」

「いや、なんでもない。」


より一層、締め付けが強くなる。


(いいんだ。これぐらい耐えないと。)


イグサを二度も一人の身となってしまった。

一度目は自ら、二度目は。


(ごめん。ごめん。)


謝っても解決しない。

だから、これが終わったらフレンを連れて一緒に会いに行こう。


「ごめん、不満をぶつけて。」

「いえ。」

「もう寝る。おやすみ。」

「おやすみなさい。」


でもしばらくすすり声は止まらなかった。



イチャイチャシーンはとても書くのがきつかったです。


マジで主人公が何のためにラプシカに行くのかわかんなくなってきたな。

一応親を探して、イグサの場所を知らせるだけど。


死んでんじゃね、親。

決めるのは自分だけどさ。

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