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30 刻々と時間は迫っている

起床6時

珍しく目が覚めた。


(二度寝に入る。)


しかし一階が騒がしい。


(これが起きた原因か?)


ここの家は朝が早いのかもしれない。

しかしベッドでは娘さんが寝ていた。


(こいつの名前は何だ?)


このままだと名前が娘さんになってしまう。


きれいな顔立ちだ。

ただ髪はがさつで、自分の魅力に気づいていないのだろう。


(もっと手入れすればモテるのにな。)


本人が望んでいないからいいのだろう。


しかし相変わらず本が多い。

一体売ればいくらになるのだろうか。


(おっと、そんな考えにはなってはいけない。)


それなりに裕福なのだろう。

教育も行き届いている。


「なに、起きてたの。」


ベッドでガサガサしながら這い上がってきた。


「あなたの名前は?」

「何急に?」


(いや、名前ぐらいいいだろ。)


過去に自分は名乗らないことを多く選択してきたが。


「教えてほしいの?」


にやにやとこちらを向いている。


(何考えているんだよ。)


「え、はい。」

「しょーがないね、せっかくだから教えましょう。」


(何様だこいつ。)


年功序列という思想は抱いていないのだが、それでも失礼だぞ。


「私は、アイリス。あなたは?」

「僕は、いや俺は。」


(どうしようか。今まで本名を誰にも言っていない。)


適当に繕うか。


「俺はスイレン、よろしく。」


(ここは島国だろ。スイレンって水にあるし。)


「どうして一人称を使い分けているの?意味あるの。」

「もちろん。『僕』は俺が気を使っているときや、ビビっているとき。そして『俺』を使うときは俺が舐めている相手や、素が出ているときだ。」

「つまり私は舐められていると。」


(うーん。うん。)


「いや、まぁ落ち着け少女よ。」

「私はアイリス。教えたでしょ。」

「そうだね。」


(さて、こいつを媒体してスキルについて調べるか。)


「あの、スキルの歴史とか知っている?」

「随分となれなれしくなったね。でも残念。私学校があるから。」

「学校。」


(おれも高校に行きたいな。)


この世界の教育制度はどうなっているんだ。


「勉強は何をやっているんだ?」

「えっとね、言語、算術、歴史、理科、」


(まぁ国数社理基本だな。)


「物理とか、生物。古文とか、地理とかはないのか?」

「ちょっと待って、そんないっぺんに言われても。」


(ないんだろうな。)


「そういう難しいのは職業に就かないと。私は歴史が好きだからそれ系統の仕事をしたいけど。」


(俺も日本史は好きなんだけど、世界史はちょっと。)


横文字嫌い。


「もういい。私学校の支度をしなくちゃ。」

「ごめん。」


サクサクと一階に下りて行った。


(俺はどうしようか。)


嫌いな歴史の本を読み漁るか。

それとも探索をするか。


(下手に外に出ると、揉め事になりそうだな。)


ひげ面が言っていた。

過激派がいると。


「ご飯食べなくていいのー!」


下から俺を呼ぶ声が聞こえた。


(行くか。)


朝は焼き魚だった。


「お父さんが漁師も兼任しているから。」

「そうか。」


(免許とかないのかな。)


無論あるはずもない。


(個人的には焼き魚ではなく刺身のほうが好みだ。)


好き嫌いは言っていられない。

せっかく出されたものだから。


(朝に魚ってなんだ?)


心で文句を言いながら完食をした。


歯を磨くため外へでて爪でカリカリと汚れを落とした。


(ほんと、こういう習慣、この異世界の住人にはないよな。)


とても不健康である。


「スイレンはこの後どうするの?」

「こいつスイレンっていう名前だったのか。」


ひげ面がつっこみを入れていく。


(本名は...はw)


「俺は、どうしよう。」


(アイリスが学校に行くし、俺は何をすればいいのだろうか。)


実に無計画である。

事前に何をすればいいのか計画を立てればいいのに。


「スイレンは何が知りたいの?」

「そうだ、結局お前は何をしに来たんだ。」


奥さんがニコニコしながら会話を聞いている。


「俺はスキルについて調べに来たんだ。」

「そ、私は学校に行くね。」


(は?)


コミュニケーションエラーが発生しています。


「目をつぶってやってくれ。もう学校の時間だから仕方がない。」

「いや、ああ、はい。」


(もっと、こう、ねぇ。)


「何か古い文献が置いてあるところはありますか?」

「図書館はあるが、少し遠いぞ。潮風でやられちまうからな。」


(それぐらいの知識はあるのか。)


さすが、技術が発て、えっと今のところその片鱗が見えないのだが。


「わかりました。」

「この家を出て左に曲がってまっすぐ行けば分かる。」


(長すぎだろ、道。)


「わかりました。」

「俺は漁をしてくる。夜までには帰れよ。」

「はい。」


ひげ面は見逃さない目つきで俺を見ていた。




相変わらず潮のにおいが鼻につく。

外に出たはいいものの周りからの目は冷たい。


(監視でもしているのか?)


エルフの町の住人達と感覚が似ている。


(あまり思い出したくない。)



そういえば船の技術がこの国の発展した技術なのかもしれない。


道なりを歩いていたが、たいていは漁に向かう大人たちばかりだった。

手には、ボックスを抱えている。


(クーラーボックスか?)


よくわからない。

太陽の光に照らされながら図書館と思しき所についた。


外観は石造りで、思ったより大きい。

中に入れば中央に司書が一人座っていて、ほかの従業員は見受けられない。


「見ない顔だね。」

「全員の顔を暗記でもしているんですか?」

「ふw私を舐めてもらっちゃ困るよ。」


歳には似つかない余裕っぷり。


(俺も歳をとっても元気でいたいな。)


「で、なんの用だい?」

「スキルに関する文献はありますか?」

「あるよ、二階の一番右奥だ。」

「ありがとうございます。」


しかしアイリスの部屋も相当な本の量だったが比べ物にならない。


(小説は好きなんだけどな。)


スキルの棚にたどり着き、どれを取るか吟味した。

そして見覚えのある本を見つけた。


(勇者物語。どうしてここに?)


やはり有名なのか。

その隣に勇者の記録があった。


(勇者の文献。スキルのところに置かれているんだ。多少関係はあるのだろう。)


勇者の記録

はるか昔この世界は混沌に包まれていた。


(あれ、もしかして一緒?)


飛ばして勇者のスキルを見た。



勇者のスキル

これは憶測にすぎない。


勇者はあらゆるスキルを巧みに使った。

しかしすぐに使えたわけではないと、勇者の仲間がのちに語っていた。

仲間が語るには、この力はまだ解放されていない、と。


もしかしたらスキルが封印されていたのかもしれない。


明確な文献は残っていない。

ただ勇者があらゆるスキルを使ったことは明白である。



(封印ね。)


もしかしたら、という希望を抱きながら半ば絶望している。


(この力はもしかしたら古代の勇者と一緒のものかもしれない。)


俺は悲観的だ。


(勇者でさえ苦労したことだ。俺ができるはずはない。)


また一歩、俺のスキルに関することが分かった。


ここまで詳しく勇者に関することが書かれているんだ。

おそらくここが勇者の出自なのだろう。


「はぁ、どうするか。」


疑問が大まかに解決はできた。

しかし俺は勇者になる気はない。


そしてアイリスの妄言が正しければ、魔王を倒しても終わらない。


(イケメン野郎に頼むか。)


勇者と同じように仲間もいるし、どうにかなるだろう。

アリセインでは崇められている。


(せいぜい弾除け役としていくか。)


いったん頭を整理するため席について仮眠を取ることにした。


(俺はどうすればいいのだろうか。)


最大の疑問はまだ晴れない。

図書館は小学生の時はよく利用していました。

今となっては電子書籍ですが。

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