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29 パラドックス

「サルゴニア行きの船はありますか?」


そこに突っ立っていたひげ面の???に聞いた。


「ん?サルゴニア?いけるが、今アリセインの状態を知ってるのか?」


神妙な顔をしながら忠告をしてくる。


「いいんです、行ければなんでも。」


俺はいま、結構な自暴自棄になっている気がする。


「そうか、しかし俺らが無事に行けるかって問題も。」

「無事に?そこまでの問題に発展しているんですか?」


(まずいな、向こうで揉め事に巻きもまれる可能性がある。)


揉め事で済むのか?


「その一部の過激派がな。」

「わかりました、少し多めに出します。」

「お、そうか。じゃあ早速準備をしてくれ。」


(やっぱそうだなよな。金金。)


早速船に乗り込んだが、帆的なものがなかった。


「あの、どうやって動くんですか?」

「魔石だよ魔石。燃料として使うんだ。」


(そういえばこの世界の燃料って魔石だったわ。)


はたして魔物はどうやって生まれているのだろうか?

真相は闇の中。


「じゃ、行くぞ。」


潮の匂いが鼻を貫く。

あまりいい気分ではない。


船のスピードは、まぁ馬車と同じぐらいかな。

多分出来立てだろうし、早い方なんだろうけど。

その辺はよくわからない。


燃料効率がいいのかな?


この世界の魚は色が多彩だった。

大きさもバラバラで、面白い。

いつか食べてみたい。


港に着いたときはもう夜だった。

月がよく見える。


(そういえばこれってあらかじめ俺がサルゴニアに来ることを伝えたのか?)


緊張が走る。

いやもっと走っているのはサルゴニア国民か。


「おい、着いたぞ。」

「あの、ここに来ることは事前に伝えましたか?」

「大丈夫だ、だって俺はサルゴニア国民だから。」


(なんで乗せたんだよ。)


「俺ん家に泊まっていけ。多めに出してもらったし、安全運航もできた。」

「はぁ、わかりました。」

「ため息をつくな。幸せが逃げるぞ。」


(うーん、迷信。)


言われた通りひげ面についていった。


しかしサルゴニア国民の目は俺を蔑む目で見ている。


あの時と一緒だ。

初めてこの世界に来たあの時。

全員が、いや一部を除く、俺を蔑む目で。

冷たい瞳。

忘れない。


(いつか、復讐してやろうか。)


このひげ面が俺を連れてきた理由はよく分からないが。


「ここが俺の家だ。」


木製でできた二階建ての一軒家。


(おい、独自に発展したんだろ。もっとこう、ないのか?)


「おかえりなさい。」

「ああ、ただいま。」


(奥さんか?)


迎えてくれた。


「あら、お客さん?」

「そうだ。ちょっと用事があってこっちに来たそうだ。」

「そう、ゆっくりしていってね。」


(配慮してくれたのか。)


俺がアリセインからやってきたことを。


「今日の夕食はナポリタンよ。」


(ナポリタンか、せっかくならゾルバンで泊まった宿で出してほしかったな。)


脳裏にイグサが思い浮かんだが、すぐに考えるのをやめた。


(もう終わったことだ。)


「さぁこっちへ座って。」

「あのすみません。手を洗いたいんですが。」

「そう、外にため池があるからそこで。」


(きれいな池なんだろうな。)


しかし底が見えるほどきれいな水だった。


(食事前は手を洗わないとね。)


家に戻ったら娘らしき人が座っていた。


(年は俺より下か?)


13、4歳ぐらいに見えた。

褐色肌で、髪はこげ茶かな?


(年下は興味がない。)


「お父さん、何この人?」


不服そうに聞いてくる。


「この人は用事でこっちに来たんだ。まぁ俺の好意で泊めてやっているんだがな。」


しかし怪しい目でずっとこちらを見つめる。


「この人、アリセインの人じゃないよね?」


(うーん。正確に言えば違うけど。)


だって国籍は日本だから。


「ち、違うぞ。」


(ふざけんなよひげ面。)


怪しやマックスだ。

めちゃくちゃ動揺している。


「そう、ご飯食べよ。」

「ああ、そうだな。」


ひげ面一家が一斉に食べ始めた。


俺はちゃんと『いただきます』をやってから食べ始めた。


(大和魂だぞ。)


「何その、手を前で合わせるやつは?」

「え、えっと。感謝みたいな?」


(まずいな。)


日本文化を伝えるいい機会ではあるが。


「感謝?なんでそんなことをするのさ?」

「いや、食べ物を食べれるって幸せなことじゃないですか?だから僕はこんなことをしているんですよ。」

「そ、わかった。」


(まぁ日本人として生まれたら必ず擦り込まれなるからな。)


恐るべき日本。


ナポリタンはおいしかった。

トマトの味が効いてておいしい。


(本当に転移してからあまり飯を食べていない。)


食べ終わると、奥さんがスキルを使って洗っていた。


(そうか。水系統のスキルを使えるから水に困らないんだな。)


どうやって生成しているかは謎だが。


夜も遅いし寝ることにした。

俺は娘さんの部屋に入れられた。


(は?こういうのって、俺の娘に手を出したらどうなっているかわかるな?っている展開じゃないのか。)


「娘の成長機会だ。男と関わることがあまりなかったからな。」

「あの、俺が手を出したらどうなるんですか?」

「ははw答えは決まっているだろ。」


(試してみるか、どうせ俺には未来がない。)


「今晩試してみます。」

「そうか、お前に明日が来るといいな。ははw」


(明日をつかめるのかな。)


娘さんの部屋は本がたくさんあった。


「本が好きなんですか?」

「最悪、なんで男と一緒に寝ないといけないの。」


(誤解だな。俺は敷布団、あんたはベッドだ。)


思春期の女の子にとっては一緒なのだろう。


「なんかすみません。」

「そ、私はもう寝るから。」

「はい。」


(コミュニケーションエラーが起こっています。)


会話は大事だよ。

社会に出たときに実感する。

いや大学の面接かな。

いや英検?


本には歴史に関する本が多かった。

ただ歴史にはうんざりなので、童話が書いてある本を取った。

頭は使いたくない。


(えっと、勇者物語?)


安直すぎるだろ。



ある時、魔王によって世界は混沌に包まれていました。


世界を救うためにこの世界にある男がやってきました。。


その男はすべてを持っていました。


そう、すべてを。


あらゆるスキルを巧みに使いこなし、あらゆる災厄から世界を守りました。


そして魔王を倒すべく仲間を集め最終決戦に挑みました。


魔王との戦いは互角でした。


経験の浅い勇者は圧倒されました。


しかし、仲間がいたおかげで挫けることはありませんでした。


やっとの思いで魔王を倒せることに成功しました。


そして勇者は世界を導きましたとさ。



(ハッピーエンドか。でも子供向けだしな。)


しかしなんで歴史の中にこれが?


「お客さん、それは本当にハッピーエンドだと思う?」

「?」


起きていたのか。


(部屋、明るいし眠れないのも当然か。)


「どういう意味ですか?」

「なんで、平和になったっていう描写がないのかな?」

「いや、世界を導くが平和と同義だろ。」


(早口だな。)


歴史オタクか?


「子供向け、童話なんだから平和のほうがわかりやすいでしょ。」

「別にいいだろ。」


(そこに目をつけてどうするんだよ。)


「魔王を倒した後に何かがあったんじゃないかな?」

「は?」

「勇者が世界を平和にしたんじゃないかなって。」

「いや、あっているだろ。」

「言い方が悪かったね。勇者が世界を強引に平和にさせたんじゃないかって。」


(この女はいったい何を言っているんだ?)


拡大解釈にもほどがあるだろ。


「魔王だけじゃ終わらないかった。もっと脅威はあった。世界中の人たちは魔王だけで終わりだと思っていた。でも終わらなったから、そのストレスを勇者にぶつけたんじゃないかな。」


(考察お疲れ様です。俺もう寝たい。)


「結局すべてを勇者が倒して、世界を再構築したとか?」

「馬鹿なこと言わないでください。僕はもう寝ます。」


娘さんが俺の方を残念そうに見つめながらベッドに入っていった。


(意味が分からない。)


明かりを消して俺も敷布団に入った。


(明日はスキルについて聞くか。)


この娘、歴史オタクだからスキルの歴史について聞いたらベラベラと話してくれるだろう。


(他人を利用しない手はない。)


寝ます。

27、28話で主人公が迷走しすぎてどうやって収集しようか悩んだ結果です。



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