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25 世界の傍観者

「どこ、だ、ここ?」


前、後ろ、左右、どこを見渡しても、暗黒。

呼応するものは誰一人いない。


「右腕が、ある。」


懐かしい感覚が右側にある。

ただここがどこか、という結論には至らない。

いや、いやな結論が一つ。


「まさか、死んだ?」


死、まさか自分が体験するとは思わなかった。

いつかは体験するが、それがこの時だとは。


「ああ、あああ、あああああ!」


死という結論に至ると、今までごまかしていた悲しみが一気に込み上げてきた。

他者の死というものは経験をした。

だからこそ死の悲しみを深く理解している。

しかし、心の奥底では自分でなくてよかったと、そう思っている自分もいた。


そしてその悲しみが怒りへと変化する。


「どうして俺なんだ。俺がなにしたっていうんだ。大体奴と俺は初対面だぞ。殺される義理がないじゃないか。」


怒りの矛先が転換する。


「なぁどうして助けないんだ!スキルが使えなかったからって、傍観する必要はなかったじゃないか!止める努力ぐらいしろよ!なんだよ、だれも俺を理解してくれないのか!全員被害者面しやがって!俺の気持ちを、考えたことはあるのか!」


ポロポロとこぼれ出る。


「大体なんでこんなスキルなんだよ。俺が、どうしてこんな目に、どうして都合よくいってくれないんだ。俺が、俺が!どうしていつも隣にいてくれる人はいないんだ。どうしていなくなっちゃうんだ。俺が拒否した時もあったけどさ、よくわかんないんだよ。」


嗚咽が漏れる。


「俺は、どうすればいいんだよ。」

「ふざけるなよ。他責思考が。」


(あ゛っ。)


顔面が凹む。

拳。

痛みはない。

ただ、悲しみがそこに。


「おいおい、悲劇のヒロインってやつか。女じゃねぇからヒーローか。気持ちが悪いな。」

「誰だよ、お前。」

「被害者ぶるなよ。お前のせいでめんどくさいじゃ済まないことが起こっているんだ。」

「答えになっていない。」


目の前が見えないから、誰かの認識ができない。

唯一男だということは分かる。


「ああクソッ、人間以外の種族が消された。めんどいスキルを持ちやがって。なんでリンドウの時に解放されなかったんだ?判定厳しすぎるだろ!」


俺なんかお構いなし怒りをぶつけてくる。


「おい!話聞いてんのかよ。お前は誰だ!」

「覚えていないのか?俺はサポートだ。確かアネモネが死んだあたりでやめたがな。」

「サポート?」


(確か、脳内に直接語り掛けてきた。)


「そうだ、お前を支えていた存在だ。」

「じゃあなんで、なんでアネモネを助けなかったんだ!」

「お前はなにも成長していないな。」

「え?」

「お前は、何か自分の力で成し遂げたか?お前はいつも、人に頼って、道具に頼って、自分の力で何一つ成し遂げていないだろ!」

「そんなことはない!おれはグラリオサを助けるとき作戦を考えたのは俺だし、リンドウを逃がして自分の力で戦った。」


(そうだ、俺は確実に成長している。)


「あの時、お前の作戦がうまくいったのは俺がちょうど同じタイミングで爆発するスキルを使った。それにお前の力は殺人のために使っていただろ。」

「でも、俺が考えてやったことだ!」

「結局はさ、お前も異世界にいる自分に心酔してんだよ。今までうまくいくことが何度もあったよな。そのせいで俺強ぇぇぇ、とか思っているんだろ。」


図星なのか正直図らなかった。でも返す言葉もなかった。


そして何とか絞りだしたのは


「もういい。」


諦めだった。


「ははwふざけるなよ。お前の都合で世界が振り回されてたまるか。」


何を言っているのかわからない。

でももういい。


「もういいだって?お前には使命がある。」

「知らない。俺意外にやらせればいいだろ。」

「お前は理解しているのか?自分がいなくなったら悲しむ人がいることを、自分が人間としての価値があることを。」

「知らない。」

「ああ、もう!」


いいんだよ。

結局は俺がすることなんて何もないんだ。


「いま闘技場で何が起こったか教えてやる。『吸収するもの』という化け物が出現した。このままだと草間ヒナや他の奴らが死ぬぞ。」

「え?」

「いやなら俺の言うことを、ああ違う。助けろ。自分の頭をひねって。」

「無理だよ。化け物なんかに勝てない。」


胸倉をつかまれる。


「離せよ。」

「どうして、勝つことばかり考えるんだ?目的は助けることだろ。戦わなくていい。お前はほかの奴らが死んでいいと思っているのか?」


(そうだ。誓ったじゃないか。二度と大切な命を失わせないって。)


「俺が果たすことって?」

「助けろ。自分の頭を使え。」


(自分の力か。スキルがない俺にどうしろと。いやそれを見つけるんだろうな。)


「『封印』はどうやったら解けるんだ。」

「俺の口から直接言えることじゃない。一つだけ言えることは勇気だ。自分の命の保証を顧みない、きれいな勇気。お前の物語の中での重要性を示すんだ。」


(勇気。俺は今までノリと勢いでこなしてきたからな。)


「そういえば聞いていなかった。ここはどこだ?」

「感覚でいえば、三途の川的な?現世とあの世の境界線だ。」

「やっぱり俺は死んでいるんだ。」


(どうやってこいつはここに来たんだ?)


「俺は生き返れるのか?」

「世の中は広い。いろんなスキルがある。その中の一つ、『死者蘇生』というものがある。一回しか使えないが。」

「やっぱ異世界パワーってすげぇな。都合よく復活できるもんな。」

「理論を説明してやる。」


(死者蘇生の理論とかあるのか?)


「生物には肉体と魂がある。肉体が破壊されても肉体を回復させ魂を呼び戻せばいい。それが『死者蘇生』というスキルだ。魂にはそいつの記憶、情報があるからな。別の肉体に呼び戻されても情報は引き継がれるってわけだ。」


(ちゃんとあった。)


「魂が壊れることはあるのか?」

「どうだろうな。」


はぐらかされた。


「じゃあな。またいつか会えるのか?」

「ああ、確実にな。」


(そこは断定してはいけないだろ。)


「あ、ちょっと待て俺からの贈り物だ。」

「え?」


しばらくたったが何か変化しているとは思えない。


「何をくれたんだ?」

「また龍の力を使えるようにした。」

「おいおい、さっき自分が言ったことを忘れたのか?自分の力、頭で解決しろって。」

「そうだ。今回、その力は人助けのためだけに使え。頭を使って有効活用しろ。」

「善処するよ。」

「『吸収するもの』は無差別に攻撃を仕掛けてくる。お前でも、俺でも殺せない。」


(こいつが殺せない?こいつが強いのかわからないが『吸収するもの』の強さは異常なことがわかる。)


「でも、俺の魔力の回復できないんじゃないか。」

「大丈夫だ。自覚していないと思うが、お前の魔力の最大量は俺と同じだ。」

「どうやって確認するんだよ。」

「お前最初に自分のスキルを確認したとき以外、スキルウィンド見ていないだろ。そこに書いてあるんだよ。」


(マジか、この世界ってレベルアップ制だったのか?)


感覚で魔力の有無を判断していると思っていた。


「『吸収するもの』の対処は?」

「孵化したばっかだからしばらく抑えられると思うが、猶予はあまりない。」


(つまり、どうすればいいんだ?)


「とりあえず、やってくる」

「ああ、じゃ。」


スキル発動『死者蘇生』


自分の体が落下していくような感覚。

水に落ちたみたいに。










「期待しているよ、俺の後継者。」

めんどくさい伏線が結構回収できた。

やっぱサポートって便利だね~。

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