24 真の勇者
相手の様子を探るが武器らしきものはよく見えない。
(こういう形式的な戦闘、初めてだな。見せもんじゃねーぞ!)
キリも同様に様子を探っているのか攻撃の気配を見せない。
俺をまっすぐと、憤慨しているようにも見える。
達人の間合いってやつかな、会場全体が緊張に包まれる。
(様子見で軽く攻撃を仕掛けるか。)
一応ね、両者ともに軽く防御魔法に包まれているから、致命傷は負わないと思うけど。
俺は地面を蹴り間合いを詰め始める。
重心を安定させるため体をやや左に傾けながら駆ける。
顔に受ける風は最高に気持ちがいい。
しかしキリの顔に汗一つない。
スキル発動『フローズン+サンダー』→『フリーズ・サンダー』
突如目と鼻の先に稲妻が地面に対して被雷した。
「ははwおしかtt!」
被雷したところから円を描くように凍っていた。
当然俺の下半身が凍結しており、動けない状態になっている。
(足の感覚が。)
さっきまでの思い描いていた熱い戦いが一瞬にして砕かれた。
「これがスキルを合体ってやつか。」
「これで終わりですか。」
期待外れを超えたのか息がこぼれている。
「どうかな。」
服の内側からデザートイーグルを取り出し足元に向かって放つ。
氷は粉々に砕け散り何とか動けるまでには達した。
(極端に冷えたせいで、足の感覚が。)
今はデザートイーグルの反動どころではない。
「降参ですか?」
「お楽しみは最後に取るだろ?」
「まだ序章にすら入ってすらいませんけどね。」
やはりあの勝ち誇った笑みにはちゃんと理由があった。
(奴には戦略がごまんとあるだろうな。)
ただそこは臨機応変に、いけるかな。
「ほら、来ないんですか?」
「やってやるよ。」
冷え切った足を熱するために走り出す。
スキル発動『ファイア+ファイア』→『メガフレイム』
(2乗かな。)
凍った地面を溶かすべく火球が飛んでくる。
「当たらねーよ。」
ドッジボールでは最後まで残る方だったので当たらなかった。
気にせず次のスキルを発動された。
スキル発動『ホリー+サンダー+サンダー』→『ホリー・ライトニングストライク』
「え?」
自身の後方から雷が降り注ぐ。
地面が悲鳴を聞きながら俺の後追う。
「そんなのありかよ。」
相変わらず笑みを崩していない。
しかしすでに俺はキリの目の前にいる。
「これで終わりだ!」
自身の力いっぱいのこぶしを奴の顔面に叩き込む。
殴られるその瞬間も表情は崩れなかった。
やつの体が風船のように吹っ飛ぶ。
落雷が止む。
あたりは静寂に包まれる。
後方を振り返ると自分の軌跡が見える。
1個1個が光り、輝いて?
「チェック。」
「っ!」
自分の軌跡から放たれる輝かしい無数の殺人光線が俺の体を貫く。
(あ゛っ、あ゛う゛。)
俺の視界が地面で覆われる。
「これが、勇者か。なぜこいつが魔王を倒せる?」
「何を、言っている?」
(勇者はイケメン野郎だろ。)
いくら防御魔法があるとはいえ痛みが尋常ではない。
体中から出血しているのがわかる。
「試合、試合を中断しなさい!」
「黙れ。」
審判の忠告も意味をなさない。
スキル発動『イビル+ホーリー』→『コントラダクション 』
視界が安定しないが、世界が暗くなったのは分かる。
闘技場全体が熱狂から動揺に包まれる。
「何を、した?」
「このリング内にいる者以外スキルを使えないようにした。」
「どういう意味だ?」
「これは俺の勝手な私情だ。」
(なぁ俺ら出会ってすぐの仲だろ。何をしたっていうんだよ。)
「お前が死んだら教えてやる。」
「意味ねーじゃん。」
「軽口を、まぁいい、最後の言葉ぐらいは聞いてやる。」
「ああ、そうだな。......イグサ!」
スキル発動『ワールド・オブ・フローズン・シルバー』
そう、リング何はもう一人、イグサがいる。
世界の暗闇から一変、輝く銀世界に包まれる。
暖かい雪が俺の体を包む。
気づけばキリが氷漬けにされている。
「ユー、私、守る。」
「ありがとう。」
氷で一時的には止血がされている。
(コレ、凍傷になるんじゃね。)
そこは異世界の医療に何とかしてもらおう。
スキル発動『ファイア+ウィンド』→『フレイム・サイクロン』
炎からの出現。
悪魔のような瞳が俺を見つめる。
「お前を殺して証明する。俺が、真の勇者だ。」
「しょぼい称号だな。」
(勇者とか言っておきながら、雰囲気が完全に悪魔だ。)
「ユー、殺させない。私、守る!」
その純粋な青いまなざしが俺を包んでくれる。
(なんで奴隷になったんだ?)
そんな疑問を答えられない状況だ。
「殺す。」
「殺させない。」
スキル発動『ファイア+フローズン+サンダー+ウィンド』
→『エレメント・バースト』
スキル発動『アブソリュート・ゼロ』
2つのスキルがぶつかり合う。
鼓膜を破けるような衝撃音とは裏腹にとてもきれいな光景だった。
キリは今まで見せなかった焦りを見せている。
そして俺にもやれることはある。
キリにデザートイーグルの銃口を向ける。
「勇者とかなんとか知らないけど、一つだけ言えることがある。人を人の命を、敬うんだな。」
衝撃音の中を銃弾が駆け抜ける。
「あ゛ぐ、あ゛、この、くそが。」
キリの右腕を貫いた。
(あとは、イグサ。)
銃が手から飛び出し、明後日の方向へ飛んで行った。
(左腕がお釈迦になったな。)
静かな氷の結晶がキリに対して向かう。
「勝ったな。」
しかし気づいた時には遅かった。
キリが顔面が壊れるほどの笑みを浮かべていたことに。
そして叫んだ。
「スキィィル、発動ぅぅぅぅぅ!」
スキル発動『ファイア+フローズン+サンダー+ウィンド+ホーリー+イビル』
→『ゼロ』
混沌の渦に飲まれていたはずが、いつの間にか静寂へと戻っていた。
そんな静かな状況でもキリの表情は静かではなかった。
「どぉぉして、効かないのかなぁぁぁ!」
奴が地団太を踏む。
さっきまであったスキルの残骸も、イグサが放ったスキルもすべて無くなっていた。
「何が、どうなっている?」
全員が、全員が気絶している。
俺を除いて。
「スキルも使えはないはずなのにぃぃぃぃ!」
呆気に取られていたら、目の前にはキリがいた。
手にはさっき俺が落としたデザートイーグルが握られている。
見上げると、勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「最後の言葉はぁぁぁ、もう聞いたな。」
笑みから一変、無表情へと変わる。
そしてグリップを強く握りしめている。
「俺がなにをs。」
「死ね。」
"バンッ"
静かな場、静かな銃声が俺の頭を貫いた。
意識が亡くなる直前に聞こえたのは
スキル発動(自動)『解放』
そして地面をも破壊する、咆哮だった。
ぐあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
この物語を考察している人はいるのだろうか?




