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21 吸う奴もいれば放つ奴もいる

手で引っ張られながら歩く。


(最後に他人の手を握ったのは、いつだ?)


手汗が出てくる。


イグサの容姿は薄い金髪で年齢は俺と同じくらい。

最初は警戒していたが今は落ち着いている。

感情が表に出ないタイプなのかもしれない。


突然彼女が止まった。


(うっ、急に止まるなよ。)


「ご主人、我が君、私、なんて呼べばいい?」


(そうか、え、恥ずかしいし、どうしよう。)


正直他人の上に立った記憶がなく、しかもいきなり立場が下の人間がいて大変困っている。

え、マジでどうしよう。


「えっっと、どうしようかな。」

「名前、何?」


(名前、そういえばこの世界に来てから誰にも教えていないな。)


個人情報をぺらぺらと喋るなと親から教育されている。


「You、ユー行こう。」

「ユー、分かった。」


すごい安直である。


(英語が精通していないからいいか。)


「ユー、ここは魔力が、薄い。そんな気がする。」

「まったく分からないな。そうなのか?」

「うん。」


(魔力か、龍の腕でスキルを放って以来使っていないな。)


もう使うこともないんだが。


(龍の血ってまだ残っているのかな。)


定かではない。


「ユー、どこに行く?」

「とりあえず片手で扱える武器が欲しいな。」

「分かった。」


(といっても道がわからないから聞くしかないんだけどな。)


王都の時はどうしたって?

王に聞いたんだよ。


暇そうな通行人に話しかけようかな。


「すみません。」

「ん、なに?」

「武器屋がどこにあるか知っていますか。」


ちなみにイグサはじっとして待っている。


「この通りをまっすぐ行けば分かるはずだよ。」


(そんな抽象的に言われても。)


「ありがとうございました。」

「ちょっと待て、あれ奴隷だろう。」

「え、ええ。」

「この国は合法だけど、人当たりが悪い。それに服装でバレバレだ。まぁ君はそんなひどい扱いをしていなさそうだけど。」


(偏見は身を滅ぼすぞ。)


「助言ありがとうございます。」

「じゃあね。」


気前のいいお兄さんだった。


イグサのところに戻ったが相変わらずボケっとしている。


「おい、俺のコートを着とけ。」


(一応俺の方が立場が上だからな。)


人はいきなり立場が上になると強気になる。


「うん、ありがとう。寒かったんだ。」


(感情が読めない。)


震え一つなかったぞ。

唯一分かったのは俺が選んだ時に怯えていたぐらいだ。


「ユー、分かった?」

「ああ、行こう。」


ゾルバンは俺と歳が同じぐらいの奴が多かった。

学園が多い影響なのか酒場は少なかった。

この世界の20歳未満は飲酒が禁止なのかな。


もっと観察をしたかったが武器屋についた。

店の前に武器が散乱していてとても分かりやすかった。


「こんにちは。」

「いらっしゃい。」


若いおねーさんだった。


(相場はじじいだろ。)


「あら、彼女連れ?」

「あー、えっと。」

「私、奴隷。」

「そう、それで何が欲しいの?」


眉が少し吊り上がったような気がしたが、気のせいだろう。


陰キャがきれいな女性と居るのことの何が悪いんだ!


「片手で扱える武器ってありますか?」

「そうね、あなたの利き手は?」

「右、です。」

「最近開発されたこれなんてどうかしら。」


(デザート、イーグル?)


え、一応、中世の世界観だよね?


「どうかしら?」


(肩壊れるって。)


利き手は右といったはずなんだが。


「他には...?」

「ないわ。」


(いや、短剣とか。)


「お買い上げありがとうございます。」


結局払った。

良い値段がした。


「ユー、今度はどこに行くの?」

「試し打ちかな。」


といっても街中でこれを撃ったらヤバいことになる。

裏路地に行こうかな。


「えっと、人目のつかない裏路地に行こう。」

「うん。」


裏路地に入ったが相変わらず辛気臭い。

イグサは落ち着きのない様子だ。


「だ、大丈夫?」

「......うん。」


とても大丈夫には見えない表情だ。


(王都にいた時もこんなところだったからな。)


「ちょっと離れていてくれ。」


(まじで、撃っていいのか?)


腕の震えが銃に伝わりカチャカチャと音が鳴っている。


「はぁはぁ、いくぞ。」


”バン”


爆発音かと勘違いする音があたりに響いた。


銃は手から飛んでいき、俺は後ろに吹っ飛ばされた。


(あ゛あ゛あ゛ぁ。)


左腕全体に重い衝撃がが飛んできた感じだった。


「ユー!大丈夫?」

「あ、あぁ、大丈夫。少しアクシデントがあっただけだよ。」


(あの、イグサさん。近いです。)


あまり顔直視できない。


「立つのを手伝ってもらえるかな?」

「うん。」


何とか立ちあがれた。


(さっさと銃を拾って出よう。人が来るかもしれない。)


暗くてよく見えなかっが。


(これはむやみに使うべきではない。)


この世界に来てからモンスターとろくに戦っていないが。

対人戦では最強だろう。


(片腕がない状態で戦闘ができるようにならないと。)



裏路地を出ると当然のように人が集まっていた。

でかすぎたな。


(あれ、見知った顔が。)


「おいおい、奇遇だね。えっと、ゴミくん?」

「何してるんですか、ここで。」

「ちょっとした用事でね。君には関係ないかな。」


(相変わらず気に食わない野郎だな。)


こっちだって強くなったんだゾ。


「君の連れている女性は、ヒナを捨てたのかな?」


(捨てる?もともと保持していないが。)


一応イグサは俺の所有物だ。

物だとは思っていないが。


「だんまりだな、相変わらず。え、君、腕が。」

「そうだ、何か文句でも?」

「いや、悪い。」


さすがのイケメン野郎でも倫理感は多少残っていたようだ。


(腕が吹っ飛べばわかるかな、この気持ちが。)


冗談でもいうべきではない。


「いや、その、突然で申し訳ないが、明日、俺たちはこの学園の生徒と戦うんだ。交流戦みたいな。ちょっと違うかな。」


(そんなに腕がないことがショックだったのか。)


俺も衝撃を受けたがこんなところで立ち止まっているわけにはいかない。


「その人が足りなくて、戦闘職が少ないんだ。」

「人数合わせってわけか。」

「いや、ここに来る前に大規模な戦闘があって、それで、けが人が。」


(なんだよ、よそよそしいな。強気な態度はどこにいった?)


「分かった。で、形式は?」

「一人ずつ戦って、勝利数を競うんだ。早々に降参してくれて構わない。」


(プライドが許さないな。)


八百長みたいじゃないか。


「彼女を連れて行ってもかまわない。何せ君はゴミクラス&ゴミスキルだろ。」


(そこは否定しろよ。)


どうやらクズな部分は抜けていないらしい。


「分かった、場所はどこだ?」

「宿屋に泊まるなら、そこに迎えに行くし、俺たちと同じところでもいい。」


(随分と腰が低いな。)


「宿屋でいいか?まだこの街を見て回れていないし。」

「いいよ、できればこの近くに泊まってほしい。」

「分かった、じゃあ明日また。」

「じゃあね。」


イケメン野郎は去っていった。

ちなみに野次は、とっくに解散していた。

事件性がないように見えたのかな。


「宿屋に行こう。」

「うん。」


さっきの会話がよく理解していなかったのか、ボケっとしていた。


(近くにあるって言っていたから、あるんだろ。)


無計画である。


建物はアリセインより発展しており、イメージだと明治の日本?かな。

服装も学生はブレザー、大人はスーツ姿の人が多かった。


多分冒険者が主流ではないんだろう。

軍事国家なのかな。

デザートイーグルが開発された理由がそれなのかもしれない。


魔力が薄いから国内で戦争した場合、スキルを連発できない対策なのかもしれない。

回復が遅いんだろう。


「宿屋についたぞ。」

「うん。休めるね。」


宿屋は木造でできていた。

和風建築ってやつかな。


「いらっしゃい。あら、彼女連れ?」

「いや、友人です。」


(こいつが奴隷とかいう前に否定しないと。)


「私、d」

「あの二名で。部屋は空いていますか?」

「ええ、空いているわよ。ご飯は食べていく?」

「はい。」


鍵をもらって番号の部屋に向かった。

ちゃんと二つベットがあった。

よかった。


「ちょっと待っていてくれよ。」

「うん。」


(うん、以外のバリエーションを増やしてほしいな。)


ちょっとおかみに聞きたいことがある。


「すみません。明日学園の生徒たちが転移者たちと戦うって本当ですか?」

「ええ、私の息子も出るから見に行くのよ。」


(一般公開かよ。)


「生徒たちって強いんですか?」

「もちろん、うちの息子は最強よ。」


(だめだ。脚色が入っていてよくわからん。)


明日あることは本当だな。

嘘かと思ってた。


「ありがとうございます。」

「あなたも見に来る?」

「俺は出る側です。」

「え、大丈夫、その、腕ないけど。」

「舐めないでください。」

「頑張ってね。だけどうちの息子の最強よ。」


(わかった、わかったから。)


夕食を食べるためにイグサを呼んだ。


出された料理は、パスタだった。


(は?)


仮にもここは和風建築である。

思考が回らん。


「は?」

「これ、どうやって食べるの?」


我に返った。


「フォークを使ったことがないのか?」

「なに、それ。」

「ほら、銀色のやつだよ。」


俺も今日は何も食っていない。

異世界に来てから食わなすぎである。


「どうやって使うの?」

「あー、持ち方はな、俺のを真似しろ。」


(鉛筆持ち、って伝わらないよな。)


「それをパスタの中に突っ込んで、回すんだ。」


奮闘している。


「ある程度回したら、口へ。」


(まぁ、不格好がいいだろう。)


「おいしい。」

「よかったな。」


(さて、俺には別の問題が残っている。)


そうそれが、片手問題である。

え、どうやって食えばいいんだ。


(うまくいけ!)


左手の扱いがぎこちないが何とか口に運ぶことができた。


「ユー、食い方、汚い。」


(少なくともお前だけには言われたくない言葉ベスト1)


何とか食べ終わり床に就くことができた。


風呂?簡単な水洗いならできたよ。

めちゃ寒かった。


「お前はこっちで寝ろ。」

「うん。」


疲れていたのか速攻寝た。


甘い展開は、なかった。


(さて、明日はどうするかな。)


俺の予想だとスキルっていうより、武器メインで戦ってくると思う。

体術は一応いける口だから、あとはイグサがどれだけ戦えるかにかかっている。


デザートイーグルはさすがに人に向かって撃てないな。


俺も寝た。


リンドウはどこにいるのか、検討の余地もない。



封印っていう設定、忘れかけている気がする。

まぁ今回の旅もラストに関係するんだけどね!

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