19 後退
冷たい風が俺の体を震わせる。
「リンドウさんはどこだ。」
「さぁ、どこだろうね。」
「ふざけたことを。」
「ところで少し前に報告がきたんだが、何やらどこぞの女が抵抗してきて誤って射殺してしまったそうだ。」
「は?」
「仕方のないことだ、この状況下だ。判断が正常にできなかったのだろう。」
「貴様ぁぁぁ!」
(殺す!)
衝撃をいっぺんに集めてぶつける。
「死ねぇ!」
スキル発動『龍・衝撃波』
「そう感情的になるな。」
めんどくさそうにおっさんが言っている。
「無敵ごっこは終わりだ。」
スキル発動『カウンター』
「ghふ、ううぅ。」
強い痛みが右腕に、右腕に?
(右、腕が、無くなった?)
滴り落ちる、いや流れ落ちる血が止まらない。
「話している途中だろ。」
「右、右腕が...。」
手で押さえても止まらない。
「あ、あぁ、あ゛あ゛あ゛あ゛。」
「ああ、わかった。ほら治療してやる。」
スキル発動『ヒール』
彼のおかげで痛みは治まったが、悲しみは止まらなかった。
「『ヒール』?聖女しか使えないはずじゃ。」
「面倒なんだよ。そこら辺の説明は。」
俺の、俺の右腕がなくなった。
「いま、君の処遇で困っているんだ。」
「お、俺の?」
「うちの老骨が君の腕に龍の体の一部を移植したせいでこのような事態を招いたんだ。」
「身から出た錆ってやつだな。へへw。」
もう笑ってごまかすしかない。
警報が消えあたり一帯が静まり返った。
「笑っているのも今のうちかな。」
「最初にあった時とずいぶん様子が違うな。リンドウさんの前で緊張でもしていたのかな。」
「容姿がよかったからな、だれでもそうなる。」
(どうする、いやもうどうにもできないな。)
すでに無くなった右腕を見つめても返ってこない。
「話を戻そう。こうなってしまった以上、新たな救世主を生み出す話もパーになった。一応老骨たちが一番の技術保持していた。」
「つまり、俺を殺すと?」
「ぶっちゃけどうでもいい。民衆たちにとっても私にとっても老骨はただの老骨。なんか偉い人みたいな感じで思入れがない。」
「......」
「事実、あいつらはあまり顔を見せないからな。ずっと引きこもっている。しかも今回は守衛以外に被害が出なかったからなおさら困っている。」
(なんだこいつら。エルフたちとは違う狂気を持っている。仮にも同じ町の住民が死んだんだぞ。)
しかし彼の表情に悲しみはない。
「守衛は戦って死ぬ。その覚悟があるから守衛になったわけだ。職業は選択制だからな。自ら進んで死を選んだんだ。」
「それでも。」
「お前は死にたいのか?」
(違う、そうじゃないんだ。)
まだ殺してしまった人達を弔えていない。
決めたのに、殺人という罪の重さに立ち向かうと。
「まぁここで死ぬのも生きるのも自由だ。どっちにするか?」
「なぁ、リンドウはどこだ。」
「おいおい、言っただろ。どこか分からないって。」
「...生きて、いるのか?」
希望が見えた。
「想像に任せるよ。いい加減本題を引き延ばすな。どうする?」
「俺は......。」
(彼女は言っていた。自殺は彼らにとって贖罪ではないと。なら生きるしかないその人たちの分まで。)
都合がいいな。
自分で殺しておいて何を言っているのだろうか。
「俺は、旅を続ける。」
「そうか。がんばれよ。」
「では、さよなら。おじさん。」
「お前もいつか年を取れば分かる。この気持ちが。」
俺はこの街をから出て行った。
おじさんが手を振っていたような気がしたが振り返らなかった。
いや振り返った。
そして戻った。
「あの、金、返してくれません?」
「あ、ああ。」
おじさんの懐からいくつか貰った。
いくつかで済ませていいかわからないが。
なんか申し訳そうな感じと戸惑いの混じった顔をしている。
「お、おう。がんばれよ。」
「はい!」
今日一声が出た気がする。
旅の目標としては獣人のところに行くか、王都に戻って再計画するか、それともリンドウを探すか。
(まぁ当初の目的である獣人のところに行くか。)
俺は歩みだした。
主人公は少々強すぎましたね。
没収。
いつかはゲットできるかな?
おじさんっていつからなんだろう?




