17 人生の一歩、そして
眩しい光が俺の暗黒を打ち破る。
ちょっとかっこいいな。
「オ目覚メデスカ、我ガ救世主。」
状況はちっともよくない。
???を含めた何人かが俺を見下ろしている。
顔の判別はつかないんだけどね。
(見下ろすなや。)
ここはどうやら手術室のようだ。
よくわからない装置が周りにある。
なんかノリ違くね。
体の姿勢を変えようとしたが動かなかった。
(拘束されているな。結構つらいんだよなこの体勢。)
牢屋にいた時と比べたらまだましである。
(顔が動かせないから全体がよくわからない。)
「我ガ救世主ニハ救世主ナリノ仕事ヲ与エマス。」
「仕事ですか、辞退します。」
今は受験に集中したい。
「ソレハ残念デス。オイ、強制的ニ作戦ヲ実行スル。」
「は?」
(あの書類に書いてあったやつか。)
このままだと死ぬ。
「救世主ノ精子ヲ回収シ、横ニイル女ニ受精サセロ。」
(なかなかえぐいことを言ってんな。俺まだ子供いらないよ。)
しかし???たちは何か装置を操作している。
(オーバーテクノロジーすぎるって。もっと異世界感出してこうよ。)
何を思っても状況は変わらない。
冗談を言っているが本当にまずい。
「おい、これを外せ。」
「安心シテクダサイ、痛ミハアリマセン。」
「そういう問題じゃない。」
「我々ノ計画ノタメニ、大義ノタメニ犠牲トナッテクダサイ。」
相変わらず聞き取りずらい。
(まずい、アームがこちらに降りてくる。)
麻酔はまだ打たれていない。
(外れろ、外れろよ。)
何度も腕や足に力を込めても外れる気配はない。
「う゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉ。」
「無駄ナ事ヲ。」
アームに付属している針が俺の腹部に刺さる音が聞こえた。
「あ゛あ゛、はぁはぁ。」
多少興奮しているのか痛みはあまり感じなかった。
手術台をを強引に揺らして少しずらしたところで、うまくいった。
(熱っ!)
右手が妙に熱い。
「何ヲシテイル、モウ一度ダ。」
腹から針が抜かれそこから血が流れてきた。
(内臓、逝っているんじゃないか。)
状況は変わらない。
再びアームがおりてきた。
「っ、やめろぉぉぉぉぉ。」
スキル発動『エナジー・バレット』
突如死角からエネルギー弾が飛んできてアームを破壊した。
(未知の力か。)
「ナゼ女ガ起キテイル。早ク何トカシロ!」
「おい、私は、ケガで、動けない。早く逃げろ。」
(誰だ?)
正直人を声では判別が難しくてよくわからない。
シリアスな場面でなにを考えているのだろうか。
「でも、拘束が。」
「私が、何とかする。精度は、期待しないでくれ。」
「ちょっ。」
スキル発動『エナジー・バレット』
左手左足の拘束は解けた。
右はというと、まだ。
「あの、わがまま言うのは申し訳ないんですが、右が。」
「悪い、自分でやってくれ。」
姿勢を変えるとリンドウが横たわっていた。
顔色があまりよくない。
質問をしてもあまりいい返答が返ってきそうにないのでしなかった。
今は拘束を解くことが先決だ。
「くそ、解く方法がない。」
(あいにく封印以外のスキルを有していない。)
暴走を使うこともできない。
というか使いたくない。
あれを軽い気持ちでは扱ってはいけない。
「どうする、どうする!」
焦っていて頭が回らない。
右腕の血管が浮き出ているのが分かる。
手術室のドアが開き???が入ってきた。
部屋に入るとリンドウの方に向かっていった。
手には鈍器のようなものを所持している。
「貴様、貴様ノセイデェェェェェ!」
「なっ!」
「やめろぉぉぉ!」
俺の咆哮が部屋中に響いた。
スキル発動(自動)『龍・加速』
爆音とともに手術台から放たれた。
スキルによって拘束が外れたがそんなことを気にせずに???へ突っ込んでいった。
右手の思うがままに突っ込んで言ったせいで壁が壊れた。
床には金属類のなんかが散らばる。
「キュウセイュゥゥゥ!」
律儀にまだその名前で言ってくれる。
外からは警報が聞こえる。
(もうそれどころじゃないだろ。)
ふと右腕を見ると、え、キモ。
なんか、目とか口とかついていて、肘には噴出孔みたいのがあった。
(ナニされたの俺?)
おそらく捕まった時に何かされたのだろう。
ナニかね。
「お、おい、どうなっている?スキルは使えなかったんじゃないのか。」
どうなっているかといえば、よくわからない。
突然右腕からスキルが発動したもんだから。
(こっちは怪我人2名に対して、あちらは老害ども。勝てる。)
勝算は十分にある。
「殺す。」
(二度と大切な命を失うわけにはいかないんだ。)
「フッ、無能ガ私ヲ殺セルトデモ?」
「やってみなきゃわからない。」
思考は単純、相手を殺す。
(今はそれだけを考える。)
右腕を軸に戦う。
「コロスコロスコロオォォス!」
鈍器を振りかざしてきたが、それを右手で受け止め、砕いた。
「馬鹿メ。」
スキル発動『エナジー・バレット』
???の右手からスキルが発動され俺の腹を打ち抜いた。
「コウナッテハ殺シテデモ確保スル。」
「執着する人は嫌われるよ。」
(腹は、大丈夫そうだな。)
痛みはなく徐々に再生している。
「軽口ヲ叩クナァァァ!」
スキル発動『エナジー・ブースト』
(突っ込んできやがった!)
俺はカウンターの構えをとる。
「来い。」
「死ネェェェ!」
???の攻撃が心臓にあたる、寸前にスウェイで右に避ける。
そのまま奴は壁に激突した。
「ッ、イ。」
「終わりだ。」
血が服に飛び散る。
俺の手が奴の心臓を貫通した。
「キサ、マ。」
多量の血が噴き出る。
「次。」
ほかの研究員たちはおびえているのか動かない。
「タ、助ケテ。オ願イダ。」
「それで何人殺してきた?数えたことはないだろうw。」
スキル発動『龍・爪』
奴らはスキルを発動することなく無様に俺に殺された。
(フフフ、殺った、殺ったぞ!)
俺の高笑いが警報をかき消す。
あたり一帯は血で覆われている。
「殺ったぞ、人を、ヒトを、ひとを殺した...。」
「...」
「ああ、ぁぁ。」
血の静寂が俺を包む
声にもならない悲痛な悲鳴は、俺には聞こえなかった。
「...いこう。」
「あぁ、行こう。」
重い足音と共に血塗られた手術室を後にした。




