16 起死回生
昼寝をして起きたのは15時だった。
寝心地はとてもよかった。
とても。
(さてどうするものか。)
想定外の観光で目的がなかった。
脱出という目的はあるんだけどね。
(とりあえず中央に行こうかな。)
そもそも俺を町に滞在させる理由がない。
スキルが使い物にならないからだ。
(お偉いさんたちに聞けばわかるはずだ。)
さて俺は中央に行くなという忠告は忘れている。
いけるっしょ。
外に出て中央に向かった。
太陽は沈みかけている。
王都とは違い賑わいはなく静寂、とまではいかないけど。
中央に行くのはわかりやすかった。
遠くからでもよく見えるほどデカい。
(地震で崩れないのかな?)
耐震性なんて今気にしている場合じゃない気もする。
見た目は城っぽかった。
日本のね。
(異世界に城って、しかも日本の。変わっているな。)
変わっているのは自分じゃない?
門のところに向かいうと当然守衛がいた。
(金を握らせよう。)
なんて最悪な考えであろうか。
「こ、こんにちは。」
「誰だ?ここは許可なく入ってはいけない。」
「あの、その...。」
ここで重要なことを忘れている。
(しまった。お金ないんだった。)
どうやって宿に泊まったかって?
リンドウのコネだよ。
無理行って無料で止まらせてもらった。
「なんだ、お前。」
「すみません。失礼します。」
そっさと逃げる準備をした。
しかし残念ながら引き留められた。
「怪しいな、いったん中で話をしようか。」
(...)
ここで???の言いなりになる俺ではないのはご存じだろう。
俺も重々承知している。
相手は銃、こっちは素手。
いける。
???の足を蹴り、姿勢を崩させた。
「っ!何をする。」
「先手必勝!」
姿勢を戻す前に横腹に足蹴りをかまし、???の銃を奪い取る。
そういう算段だった。
しかし???は姿勢を崩したまま、トリガーを引き俺の右腕が打ち抜かれた。
(いっ、たくない?)
しかしその隙を見逃さず???が俺の腹に蹴りをかまし、俺はそのまま地面に倒れこんだ。
すかさず???は足に向かって発砲し逃げられないようにしてから、俺を城の中に運んでいった。
いや引きずっていった。
(俺っていつも戦闘が早くに終わるな。)
なぜって、勝率を考えていないからだ。
そのまま引きずれれつつどこかへ運ばれていった。
(痛いよ。)
自業自得である。
ついたのはなんか偉そうな人のところだった。
「失礼します。」
「ハイレ。」
嫌な予感がした。
ドアを開けるとそこに座っていたのは俺を襲ったやつと見た目が似ていた。
「門の前に不届き者がおり、抵抗してきたので少々強引なやり方で捕まえてきました。」
「分カッタ、ン?」
心底驚いたような顔で俺を見ている。
俺は睨み返している。
(なんだ、やるってのか?)
随分と好戦的だが、今の俺は足が動かせない。
「ナルホド、後デアイツヲ処分スル。」
(何か入れ違いでもあったのか?)
「サガレ。」
「はい。」
今は逃げることが最優先な気もするが。
「ヨウコソ、ワガ救世主。コチラニオ座リクダサイ。」
(いや、あの、こっちは怪我をしているんですけど。)
立ち、上がれはする。めっちゃ痛いけど。
(いっ、いった。)
「スミマセン、ウチノ部下ガ。」
「いえ、そこまでのことじゃないです。」
「寛大ナ心、感服シマシタ。」
(なんなんだこいつは?)
容姿では性別が判別できない。
唯一判別できることすれば声がしわがれているので年寄り、ということしか分からない。
「あの、帰っていいですかね?」
すぐ帰ろうとする。悪い癖だ。
「怪我ノ治療ヲシマス、オ待チクダサイ。」
「了解です。」
(なんてすばらしいのだろうか。)
もっと視野を広げるべきだと思う。
世界はもっと素晴らしいことに。
ようわからん老人が部屋を出ていき、結局俺は部屋に待機となった。
部屋を観察すると、古びた本ばかりだった。
古い本なんて読んでもよくわからないので、机の上にある新しい書類をとってみた。
暇つぶしにね。
"救世主に関する報告書。"
①
本日救世主がここに来たとの報告を受けた。
素晴らしいことだ。
我々の計画が大いに進んだ。
身長は170前半、体重は推定50kg後半、年齢は15、6の男児。
②
報告によれば救世主は『封印』を解いていなかった。
これは由々しい事態であり、新しく計画を練り直さないといけない。
今、ある女部下に尋問をやらせているところだ。
その内容次第で計画を練り直す。
③
どうやら今回の救世主はのんきに旅をしていたらしい。
救世主らしくない。
しかし同時に力も持っていないため、逃げ出すことも不可能だ。
となれば強引に救世主を量産する。
生殖をさせ、『封印』のスキルを持つ子供を産ませる。
親のスキルは九割九分の確率で継ぐので間違いはない。
『封印』は試したことがないが。
女にはこの計画を話し、救世主を絶対に外に出さないように指示した。
いかなることがあろうとも。
今度こそ成功させる。
(...)
(まずい、このままだと俺は種馬にされる。)
ハーレムになるのではないか。
いなそうなるはずはない。
(精子だけ取られ、あとは用済みで処分されるだろう。)
多分俺の考えている結果になる。
一刻も早くここを抜け出さないといけない。
(くそが、足が。)
思うように足が動かない。
おそらく走ることはできないだろう。
(少しでも距離を稼ぐ。)
こんな部屋でチンタラしている暇はない。
足を引きずりながら扉を開け外へ出た。
「ああ、早く、早くでなきゃ。」
廊下を歩きだす。
心臓の鼓動が聞こえてくる。
「急げ、急げぇ。」
しかし道がわからず思うように進まない。
???が部屋に戻るのも時間の問題だろう。
前方から足音が聞こえてくる。
(まずい。)
しかし隠れる場所はなく、そのまま待つしかなかった。
「何を、している?」
予想外にもリンドウであった。
(なんでここにいるんだ。)
「何をしている、早くここから出るぞ。」
「え。」
安堵してしまい気が抜けてしまった。
「あなたこそ何をしているんですか?」
「私は呼び出しをくらったんだ。」
「何のですか?」
「...今はここから出るのが先決だ。」
よくわからない、彼女が焦っている理由も。
(ここの雰囲気が嫌なのかな?)
しかし俺もここに滞在し続けるとヤバいことになるので賛成であった。
「すみません、俺足を怪我していて。」
「チッ、分かった。」
腕を組んでくれた。
(お姫様抱っこじゃないんだ。)
わがままを言っている場合じゃない。
わがままなのか?
足が壊れる勢いで走っていく。
城内は驚くほど静かであった。
走る。
痛い。
ようやく出口らしきものが見えた。
「やっとですね。」
「ああ、早く出るぞ。」
危険に出会うこともなく、外へ出ることができた。
太陽はすっかり落ちていて真っ暗であった。
とりあえず城から出るために歩き出した。
「言っただろう、中央に行くなと。」
「好奇心は抑えられるものじゃないです。」
「軽口を叩ける余裕はあるんだな。」
(ない。)
痛い。
「何をしている!」
唐突に前方から声をかけられた。
そうだ、守衛がいるのを忘れていた。
「マーシャル上官、これは失礼。んん?我が、救世主。」
俺の顔を見た瞬間、顔色が変わった。
「ああ、これはだな。」
「全員に通達したはずだ。救世主を外に出すなと。」
「...」
(...)
「貴様は命令に背いた、拘束する。」
「そう簡単に゛。」
守衛は反撃の隙を与えず発砲した。
彼女の右胸に銃弾が打ち込まれた。
そして銃口で頭部を殴りつけ気絶させられた。
「あとは貴様だ、我が救世主。」
「俺、救世主だよ。ね?」
震える声で助けを求める。
冗談が通用する相手だとは思えないが。
「我々の祈願のために。」
(残念。)
頭部を壁に打ち付けられ、そのまま意識が...。
今までの人生で最大の怪我がねんざで、あんまり主人公の気持ちがわからない。
簡単に打たれていいのかな?




