12 我が救世主
朝、太陽が俺の顔を照らしすぎて熱くなった頃。
体は馬鹿みたいに凝っているし、体が土臭い。
正直こんなところで寝ている奴は頭悪いと思っている。
(だりぃ、こっから歩かないといけないのかよ。)
昨晩はひどすぎたあまり歩けなかった。
(くそが)
俺の中の彼女の評価が最低に落ちた。
(心配してくれるのはありがたい。でも過保護すぎる。)
モンペかな。
まだましな方か。
俺は重い足を持ち上げて道を歩き始める。
昨日買った食料を食べながら、トボトボと歩く。
(やっぱりまずい。俺だったらもうちょっとおいしくするのに。)
そんな技術もない奴がクレームを入れている。
だったら俺がやれって話。無理だけど。
さすがに歩いていて、人は見かけなかった。
だって朝っぱらにこんな用わからん道を歩いている奴は異常者だ。
早速ブーメランが飛んできた。
(あと何時間歩けばいいんだ。)
歩き始めてから約10分、もう弱音を吐いていた。
(疲れが全然取れなかったんだよ。)
それもそのはず、病み上がりだ。
しかし始めたからには引き返せない。ただ歩くのみ。
途中分かれ道があった。
看板には「獣人族の村」とあともう一つはかすれていてよく見えなかった。
(一本道って言っただろ。嘘つきめ。)
教えてもらったのになんて態度だ。
誰も叱ってくれないから自分で叱るしかない。
周りを見渡すと驚くほど何もない。
自分のところを開発するのに精一杯なのだろう。
「ミツケタ!」
突如、前方から自分の腕をつかまれた。
(見えなかった。さっきまではいなかったのに。)
「ヨウヤクミツケタ。コンナトコロニイルトハ。」
(何を言っているんだ。)
心も正常ではいられない。
ゆえに声が出ない。
性別は判別できないが、狂気的なオーラを感じる。
あのエルフたちとは違った狂気だ。
「ナゼ、ドウナッテイル?マダカイホウサレテイナイ。」
「いいいったい何を言っているんですか?」
こちらから質問を投げかけると、驚くほど凝視してきた。
(目、でっか。)
「ワガキュウセイシュ、ナゼ、ドウシテ。」
「救世主?」
(どうやら俺は救世主らしい。)
本当によくわからないまま時間が経っていく。
「ワタシハ、ヨウヤク、ミツケタノニ。」
「失礼します。」
「マテ、カイホウサレテイナイノハソウテイガイダ。コチラニモチカエル。」
(持ち帰る。)
どうやら誘拐されそうだ。
こまったこまった。
俺は奴隷商人のことをよく覚えていた。
そして俺の判断は早かった。
相手の腕を力の限り殴った。
そこから戦闘が開始した。
相手はナイフを取り出し、前に突き刺してきた。
しかし俺は右に避け、回し蹴りをした。
戦闘が可能とは思っていなかったらしくえらく驚いていた。
(こっちは美術部だけど、昔はサッカー、今は週一でテニスに通ってんだよ。)
運動と戦闘能力が直結するかわからないが。
しかし相手も往生際が悪く抵抗してきた。
蹴られたのをまるで気にせずに、再度突き刺してきた。
しかし、再度おれhぐっふぁ
(よ、んで、いたか。)
あいてが読んでいたのか刺された。
(学習、して、いた、か。)
「モチカエル、モチカエル、モチカエェェェル。」
「何、言ってん、だよ。」
さすがの俺も引いた。
刺したことによる感嘆に浸っていたおかげで逃げ出せたと、おっとっと。
「ツカマエル、モチカエル、サカイヲカエル。」
「ツカマエル。」 「ツカマエ、モチカエ、カエ、カエ。」 「アアアアアア。」
「有名人は、つらいな、サイン、いるか?」
待機していたのか多くの集団がいた。
(もしかして、こいつらか、カルト集団、って。やつ?)
守衛の言っていた通りかもしれない。
(こっちも、嘘で、あって、くれ。)
「すみません、忙しいん、です。通して、もらえま。せんか?」
「フウイン、ソウテイガイ。モチカエリ、ソウキュウニシラベル。」
「悪いね。」
周囲に発砲音が響く。
今度は容赦なく発砲した。
「アアアア、ツカ、ツカ、ツカマエ、ロォォォォォ!」
しかし選択は間違っていたようだ。
(もう限界だ。)
軽口を叩ける程度の余裕は、もうなさそうだ。
後ろを振り返らずに全力で走る。
傷跡から多量の血が出てくるが、気にしない。
「はぁ、はぁ、はぁ。もういいだろghaふぁ。」
「モチカエル、ワガキュウセイシュ、キボウ。」
追ってくるなんて、必然だよな。
「ぐっ、右腕が、腹が、ああぁ。」
そして俺の視界は暗黒に包まれた。
「何ヲ...イル、早...手術...ヘ!」
「シカシ、血....止マラ.....。」
「クソ、馬鹿...郎....モ。我....ノ救....主ニ....テコヲ。」
「ト....ク、今ハ治....ヲシロ。」
「ダメ...、ドウシヨウモナイ。」
「魔.....融合サセロ!」
「何ヲ言ッ.....ル!融.....失敗シタラ.....ウス.....ダ!」
「デモ死.....ヨリ...マシ....。」
「チッ、再生力.....高....、ソウダ、竜....体......合サ...ロ。早クモッ....イ!」
知らない天井(二回目)
「ようやく、目が覚めましたか。」
しかしそこにいたのはヒナでなく、あの狂気じみた野郎だった。
比較的聞き取りやすい。
違うんです、本当は獣人族の村に行かせたかったんです。
でもその前に改造したいなって。
ほんの出来心だったんです。




