ex:なぜなに解説
突如投稿したくなったので
本編の補足解説です
「皆様こんばんは、レンカです。ここに呼ばれたのは何でもご主人様が私の疑問に答えてくださるとのことですが……」
「待たせたわね。それでは約束通りレンカの疑問に答えていくわ」
「ではまずひとつ。私は元ニンゲンなのに、魔女と呼べるだけの魔力があったのはなぜですか?」
「……契約によるものではない場合、血による継承って事例が当てはまる。魔女や術師をどこかで親に持つなら特別珍しくない。確か貴女で3代目だったかしら? つまり祖父母の時代から受け継いだもの。血によって継承され、魂に根付くもの。それは私のような種族であっても同様。家系のどこでも構わない。強い魔力の持ち主さえいれば子に受け継げるのよ。かといって、誰でも受け継げるわけでもなく、最早これは運と言う他ない。いくら水があっても注ぐグラスがなければ無意味だということ。つまりどこかで変異しなければ平凡な魔力量のまま。但し、悪魔なら魔力が零になることはない。そこが人間という生物との違いかしら。何せ魂以外の体を構成しているのは魔力そのもの。だから別名で魔力生命とも呼称するのよ」
「ちなみに、深遠なる眠りについての学説は?」
「疲労故の休息説も否定されたわ。定期的に就寝してもなると判明したからよ。他にも俗説である魂の食事量によるなんてものも否定済。そして眠りに罹ってから眠らなくて済む者、いずれ眠る者の判別がつく。今の私の見解では……厄介ではあるけれどいずれは必ず目覚める事象ってところかしら。レンカがいたからこう前向きに考えられるのよ」
「それではまたひとつ。三域大魔公の一角であるご主人様ですが、もし増えたらどうなるのですか? 人界の領域を巡って争うのですか?」
「……これについては私が主上からのお答えを預かっているので代読するわ」
「『大悪魔が増えることはしばらく(五千年先あたりまで)ないであろうな。考えてもみよ、そもそもこの制度は余に代わり人界を支配する権利を移譲しているものだ。余が生を受け数千年の間に条件を満たした者が三人もいるので十二分だと思わぬのか? 尤も増えたところで余が管理領域の分割を行う、それで争いなど発生しないのだ。そしてべレイクス卿は特に人界の支配という責務から逃れたい一面もあるし、彼の者から譲渡させても良かろう』……だそうよ」
「あら、追伸があるわ。レンカに三域大魔公を紹介させよ……とは今更過ぎるけれど」
「私にお任せください、ご主人様。まずは端緒の大悪魔ヴェルクローデン=ベレイクス卿。主上ことヴァルセアス卿が最初に貴族の地位を与えられたことがヴェルクローデン家の始まり。ヴァルセアス卿に大変信頼されており、その関係は単なる主従ではなくご自身の友人と認めていらっしゃる一面も。好きなものは美味しいクッキー。嫌いなものは饒舌な使用人。なお、大悪魔に任ぜられた際に申告した特権は『人間から絶対に召喚されないこと』。つまりどれだけ代を重ねても術師が人間である限りベレイクス卿を召喚するのは不可ということですね。主上たるヴァルセアス卿とは杯を酌み交わす仲でもあるとか」
「続いて私のご主人様でもいらっしゃる以前に至高なる大悪魔、ヴェルクローデン=リーザベル卿。ベレイクス卿と同じくヴェルクローデン家のご令嬢。当主の地位を継がれていない身でありながら唯一他家の当主様と同等もしくはそれ以上の地位ですね。術を行使するだけではなく研究し新たに創造する側の術師でもあり、優れたという単語だけでご主人様は語れませんね。開発した術で代表的なのが漆黒い茨。出来の悪い狩人やあの聖女に使ったというアレですね。茨とはついていますが地面がなくても空中からだとしてもどこでも自在に発生でき、相手を拘束し肉体はおろか無痛のはずである魂にまで苦痛を与える副次効果があります。聖女に使われた際は手加減をしており、そうでもなければ人間相手だと拘束した瞬間に命を奪ってしまう為
「ご主人様がお好きなものはシトニが淹れる紅茶と菓子。嫌いなものは主に人界でありがちなやりがい搾取による無償労働の強制。ちなみに紅茶を淹れる技術はシトニより上であり、メイドであるシトニがご主人様から手ほどきを受けているという状況でもありますね。大悪魔として請願された特権は『眷属を手駒として扱わないこと』」
「最後にご紹介するのは布から衣の大悪魔、バスティカ=ゼブタイト卿。言うまでもありませんがバスティカ家の現当主様でもありますね。三域大魔公の中で唯一商家、つまりは市民階級から大悪魔に列せられた方。元商家とは自認であり。冥界におかれましては中堅以上の稼ぎを誇ったもはや大商家とも呼ぶべき一族だったそうですね。ご主人様とは冥界学会における研究仲間でもあり、冥界で破棄され焼却されるだけであった人間の肉体から血を抜き取り飲むことで魂と同じ味になると提唱された方。ちなみに大悪魔としての特権で冥界の土地を譲り受け、商家として磨いた経験でその安泰な運営を引き受けていらっしゃいます」
「好きなものは人間への拷問、人間の血を飲むこと、お金が増えること、一族との会話。嫌いなものは単式帳簿。苦手なことは貴族らしく振舞うこと。大悪魔に成った順番からしてベレイクス卿と血族でもある私のご主人様より若い、つまりは新参であることを負い目と思っているとかなんとか。そんなわけでお二方には頭が上がらないらしい。貴族らしい振る舞いが出来ているか常に確認し、己を律する真面目な方ですね」
「それではもう一つお聞きします。西にはヴェルクローデン家、東にはナルキアス家、南にはバスティカ家がありますが、北の高名な貴族っていないんですか?」
「勿論存在するわ。ムンデス家よ。当主はムンデス=ユアフィス卿。勿論面識も、一族ぐるみの付き合いもあるわ。ムンデス家は貴族としての誇りを大事にしている。それは決して驕りではない。市民の生活を守ってこその貴族だと考えている。当主夫人と共に領地を治めていて、深遠なる眠りにならないので子女、子息の類はいないわね。そして異様なまでに貴族らしい生活をしないかなどの無駄な悪あがきを行っている。端的に言えば貴族としての誇りをぎりぎりまで傷つけないような清貧よ。なので保有する邸宅についてだけれど外装はもちろんのこと内装も簡素とされている。その振る舞いを参考にし模倣する貴族の家もあるわね。言うまでもないけれど、一流の貴族として振る舞いたい南のゼブタイト卿とはなかなか相容れないわ」
ここまでお読みいただきありがとうございました!




