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27「瘴気に包まれて」

 ――瘴気が僕の全身を包んだ。

 それと同時に、あの()()()()が脳裡に浮かぶ。

 

 『ほうら、言った通りだろう。ボクとお前は同じなんだよ』

 

 声が聞こえた。

 夢で見た、あの男の声が。

 

 『ボクと一つになろう。そうすれば、きっとお前も分かるはずだ』

 

 不気味な笑みを浮かべた男――アベンジは、ボクと体を重ねるようにして、姿を消した。

 

 $ $ $ $ $ $ $ $ $ $

 

 「――瘴気!?」

 

 今は煙で覆われて見えないが、目の前にいるであろうカレンの驚いた声が聞こえた。

 それはとても動揺しており、そして、何かに怯えるようでもあった。

 

 「トウマ様、まさか貴方が……」

 

 何かを言いかけたカレンだったが、その続きはすぐに途絶えてしまった。

 それは――

 

 「龍神剣ナハドメレク!!!!」

 

 相棒の神剣を召喚するために、僕が叫んだからであった。

 そして次第に僕の視界を覆っていた煙がなくなると、その向こうには目を見開いて立ち尽くしているカレンの姿があった。

 

 「ぐあああっ!!」

 

 突然、僕の全身を痛みが襲った。

 カレンが何かしたわけではない。

 体が何かに蝕まれるかのように、いや、瘴気に蝕まれるかのごとく悲鳴を上げているのだ。

 

 僕は呼吸を落ち着かせ、素早く意識をカレンに向けた。

 その途端、視界に赤い文字が現れた。

 それは、僕に“カレンを殺せ”と文を描いた。

 

 現れた文字に同調するかの如く、僕は神剣の柄を強く握り、口を開いた。

 

 「殺さないと、いけないんだ……」

 

 そうだ。僕はもっと多くの人を殺さないといけない。

 故郷のためにも、自分のためにも、エヴァのためにも、オリビアのためにも。

 

 「ああああああああああああああっっっっっ!!!」

 

 再び、激痛が全身を襲った。

 まるで咆哮を上げるかのように、僕は必死に声を振り絞る。

 

 『もう少しだ。お前はもう少しで、ボクと一つになる』

 「あぁぁ……」

 

 脳内の声に、呻き声で返答し、僕は次第に全身の痛みが引いていくのを感じた。

 すると、僕の隣に見覚えのある少女が現れた。

 

 そう、オリビアだ。

 しかし、眼がない。正確には、眼球ではなく二つのくぼみがそこにあるだけだ。

 

 そのくぼみと視線を合わせ、僕は微笑んだ。

 

 『君は本当に勇者になりたかったの?』

 

 憧れの勇者の声が、両耳に囁いてきた。

 

 『もう君は、戻れないよ』

 

 悲しそうに、そう零した。

 

 『トウマ君、どうしてこんなことをしたの!?』

 

 そうだ、惨状だ。

 あの日の惨状が、心中にとぐろを巻いて動いてくれないんだ。

 

 ああ、どうしよう。このまま僕は人を殺すべきなのか。

 また同じことの繰り返しなのに。

 

 そう考えていると、僕はいつのまにか地面を蹴っていた。

 

 「ぐぅああぁっ!!」

 

 そして、カレンの首を絞め上げ、そのまま地面に叩き付ける。

 更に苦しそうな声が聞こえ、僕はおかしくてたまらず笑っていた。

 

 「死ねよ死ねよ死ねよ!!!」

 

 首を絞める手に力を込め、酸素を求めて喘ぐカレンを見つめる。

 

 すると、僕の腹に向かって小型のナイフが突き刺されていた。

 それはカレンの靴から飛び出しており、腹の奥深くまで突き刺さっている。

 

 しかし次の瞬間、傷口から灰色の瘴気が放出され、カレンの靴を包んだ。

 軈て瘴気はカレンの全身へと広がっていき、そして身体の中へと溶け込んでいった。

 

 すると、カレンの体がブクブクと泡立つかのように膨れ上がった。

 

 「これは一体……」

 

 僕は驚き、彼女の首から手を離して後ろへと飛び退いた。

 

 何度も何度も膨れ上がっては縮み、藻掻いているカレンを無情にも不気味に映していた。

 

 「いやだっ、死にたくな――」

 

 僕はあまりの衝撃に目を見開いた。

 彼女の体が一気に膨れ上がったかと思えば、途端に爆発したのだ。

 

 肉塊と血液が飛び散り、地下室を薔薇よりも赤く染め上げている。

 

 その景色に、自分でも何が起こったのか分からず僕は黙ってただ立ち尽くしていた。

 

 「カレンさん……」

 

 僕はその場に膝を付いた。

 

 あんなに親切だったカレンさんが、あんなに優しい笑みを浮かべたカレンさんが、脳裡に焼き付いて離れない。

 

 ふと、僕はずっと握っていた龍神剣に目を移した。

 龍神剣は何事もなかったかのように、ただ美しく輝いていた。

 

 「エルヴィットさんは……?」

 

 僕は血塗られた地下室の出口を見渡し、壁に寄りかかって目を閉じているエルヴィットを見つけた。

 

 「早く、リキア達のところに戻らないと……」

 

 エルヴィットを背負い、僕は梯子に手をかけた。

 

 『おい、急がなくていいのか?』

 

 アベンジが話しかけてきた。

 頭痛がし、思わず梯子から手が離れそうになった。

 

 『この二人が大変だぞ』

 

 すると、僕の脳内にある景色が映し出された。

 

 そこには血塗れのまま倒れている藍髪の少女と、上半身と下半身が離れ、大量の血を流している黒髪の少女がいた。

 

 「レイラ……!? まさかあれは――」

 

 僕は絶望した。

 体がバラバラになっている少女こそ、

 

 「ウテナ……そんなっ……!!」

どうも、焼き鮭です。

もし

「面白い!」「トウマがやばい!!」「トウマ、早くレイラとウテナを助けろ!!」

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