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28「残酷な再会」

 ――闇色に煌めくドレスを優美に着飾り、終焉神剣ラストノードを携えたナツナは、溜め息に近い息を零した。

 

 「やっとくたびれたみたいね……しぶとかったわ」

 

 赤い絨毯を更に赤く彩る血溜まりと、その中心で体がバラバラになっているウテナ。

 そして奥には血塗れでしているレイラがいる。

 

 「残るはあの藍色の女ね。完全にとどめをささないと」

 

 二人をそれぞれ瞥見べっけんしたナツナは、ゆっくりと踏み出し、レイラの方へと向かって行った。

 そしてラストノードを強く握り、今すぐにでも少女一人の首を斬り落とすための体勢へと入る。

 

 「調子に乗ってお館様の屋敷に侵入するからこうなったのに。本当に可哀想な末路ね」

 

 そう零し、ナツナはラストノードをレイラの首筋に向かって勢いよく振り切った。

 しかし、それは叶わなかった。

 

 「――ああっ!?」

 

 赤い色をした楔のようなものが、ナツナの背中へと思いきり突き刺さった。

 

 「ナツナぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」

 

 その直後に、ナツナは目を見開いた。

 彼の声だ。

 そう、トウマの声がした。

 

 「どうしてっ……!? どうして、トウマ君がここに……!!」

 「それは僕の台詞だっ!!! なんで……なんでウテナとレイラにこんなことをした!!!」

 

 トウマはナツナの方へと飛びかかり、手にしていた神剣でラストノードを叩きつけた。

 

 「しまっ……!!」

 

 気が抜けていたナツナの手元からは、ラストノードが簡単に吹き飛ばされていった。

 すると、トウマの後ろから小柄な少女が現れた。

 

 それは美しく、凛とした深紅の瞳を持っていて、更には紋章が刻まれている。

 その姿はまるで、吸血鬼のようだった。

 

 ナツナは気を取り直すと急いでトウマを押し退いて、吸血鬼の少女と衝突させた。

 加えてラストノードを手元に引き寄せ、構えると、トウマ達のいる方を睨み付けた。

 

 「トウマ君……その女誰? どうしてここに? それに、その剣と煙みたいなのは……?」

 「今まで騙しててごめん。本当は、僕は()()()だったんだ」

 

 $ $ $ $ $ $ $ $ $ $

 

 トウマがナツナと再会する少し前。

 トウマは地下室から脱出し、ウテナとレイラのいる屋敷の方へと走っていた。

 

 すると、背負っていた少女の顔が少し動き――、

 

 「――ぁ、なにが」

 「エルヴィットさん! 起きたの?」

 「そうみたいじゃな……」

 

 歓喜するトウマと、眠たそうに目を半開きのままもごもごと喋るエルヴィット。

 

 「トウマ、頼みがあるんじゃが……」

 「頼み?」

 「少しだけ、血を吸わせてくれぬか?」

 「血ぐらいなら全然いいけど、瘴気は大丈夫なの?」

 「この煙みたいなやつか? 大丈夫と思うぞ。トウマの血にはどうやら干渉してはいないみたいじゃからの」

 「ならよかった」

 

 そう会話をすると、エルヴィットが口を小さく開き、

 

 「じゃ、じゃあ、吸うぞ。痛かったら……ごめん」

 「大丈夫だよ」

 「あむ」

 

 エルヴィットがトウマの首筋に噛みついた。

 しかし、トウマは痛がる素振りの一つすら見せていなかった。

 

 「なんか、チクッとするね」

 「ん」

 

 トウマは笑いながら、そう言う。

 暫くし、エルヴィットが首筋から口を離した。

 

 「助かったのじゃ」

 「それは良かった。体の方は大丈夫?」

 「もう万全じゃ――ていうか、その、下ろしてくれぬか」

 「分かった」

 

 トウマはそう言うと、エルヴィットを下ろした。

 

 「よし、血と力が漲ってきたのじゃ! で、トウマはあのでっかい屋敷に向かっておるのじゃろう?」

 「そうだよ……一秒でも早く、行かないと」

 

 $ $ $ $ $ $ $ $ $ $

 

 「本当は君の敵だったんだ」

 

 僕の台詞に、ナツナはその場に崩れ落ちた。

 

 「そんな……っ、じゃあ、今までのことは全部ウソだったの……?」

 「演技だよ」

 「どうしてっ……どうして、どうして……どうしてなのトウマ君」

 

 狼狽えるナツナに向かい、僕は言い放った。 

 

 「でも、君だって酷いと思うよ。君は僕に謎の魔法をかけてきて、僕の体を好きにした。そして――ウテナとレイラをこんな目に遭わせ、あげく僕に裏切られる。とても悪役らしい最後だよ」

 

 酌量の一匙もなく、淡々と僕は続ける。

 

 「元はと言えば、君は僕の素性を知っていたんじゃないのか? だからこそ僕に近付いて、僕を自分の欲望のために利用しようとした。そういうことだろ、ナツナ」

 「違う……違うってば……アタシは本当にトウマ君のことを想って」

 「本当にそうなら、もう金輪際僕に近付くな!!」

 

 僕は叫び、ナツナに向かって斬りかかった。

 ウテナとレイラがやられた怒りを、全力でぶつけて。

 

 「どうしてなの……」

 「ぐぁっ!!!」

 

 しかし、僕は何かの衝撃によって吹き飛ばされた。

 

 「トウマ!!」

 

 顔を青くしたエルヴィットがこちらに歩み寄ってくる。

 僕は急いで立ち上がり、ナツナの方へと目をやった。

 

 「どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして」

 

 これは呪詛だ。

 

 「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして」

 

 ナツナが、僕を睨んだ。

 

 思わず僕は後退りした。今すぐにでも逃げたい気持ちが、戦意を追い越して反射的に現れたのだ。

 

 それほど、目の前には恐ろしいものがあった。

 

 「なんだよこれ……」

 

 禍々しいオーラのようなものが、ナツナの周囲に浮かび上がり、それと同時に彼女の姿を覆い隠していく。

 ナツナの唱える呪詛と反応するかのごとく、それは距離を広げていって、次第に屋敷を飲み込んでいった。

 

 「トウマ、ウテナとレイラを連れて逃げるのじゃ!! あやつには敵わん!!! 早く!!!」

 

 エルヴィットの声に頷き、僕は散らばったウテナの体と、倒れているレイラを急いで回収し、抱えた。

 そしてエルヴィットと共に、ナツナだった『化け物』から逃げるように廊下を駆けていく。

 

 「エルヴィットさん、あれは一体……?」

 「邪神じゃ!! あやつの持っていた剣が原因じゃろう」

 

 エルヴィットが早口でそう言った。

 すると、後方で大きな衝撃音がした。

 

 「まさか、追いかけてきてるのか!!」

 

 僕は後ろを振り返った。

 

 「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして」

 

 負のオーラに包まれたナツナが、すぐ近くまで迫っていた。

 

 『おい、戦わないのかよ』

 

 すると、脳内であの白髪の青年の声がした。

 僕はその瞬間、足を止めた。

 

 「エルヴィットさん、ウテナとレイラをお願い」

 「まさか、残るとか言わないじゃろうな!!」

 「ごめん――僕はここに残らないといけないんだ」

 

 それだけ言い、僕はウテナとレイラの体をエルヴィットに受け取らせた。

 

 「――っ!!!」

 

 エルヴィットが今にも泣き出しそうな表情をして、走っていった。

 それを見届けた僕は、安心して微笑んだ。

 

 そしてナツナの方を向き、

 

 「――ナツナ。ここで本当の別れをしよう」

 

 迫りくるナツナを前に、僕は語りかけるように言った。

どうも、焼き鮭です。

もし

「面白い!」「ナツナがやばい!!」「トウマはどうなるの!!!」

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