20「対峙」
ナツナは屋敷のベランダに立ち、月明かりの差し込む中庭の方へと飛び降りた。
華麗に着地しては、ふと、向こう側を眺めると溜め息と共に眉を顰めた。
「侵入者、ね。そこにいるよね? 早く出てきなよ」
ナツナがそう言うと、突然と彼女の目の前の景色が歪み――そこから二人の少女が姿を現した。
黒い髪と藍の髪をした二人の少女だ。どちらも容姿が類似しており、いかにも『双子』と呼ぶべきであろう。
少女達は警戒心を身構えで明示し、今にも飛び掛かろうとナツナを睨み付けている。
「どうして、分かったの……」
「いや、全然隠せてなかったよ」
ナツナは既に感づいていた。
彼女達が人間ではないことと、リキア大将軍の兵であることを。
そしてナツナはリラックスをするかのように、瞑目しては深呼吸をした。
腹が凹むくらい息を吐き切ると、ナツナは目を開けては微笑した。
「神獣纏騎:ヒュドラ!!!」
ナツナの体を大蛇が覆い、それは軈て鎧として姿を変えた。
背には赤く縁取りされた白のマントが風に揺れ、浅葱色で儼乎とした帽蛇の鎧が、紫煙を散らしながらその姿を月明かりで照らしている。
鎧に全身を覆われたナツナは右手に矛のようなものを持つと、勢いよく跳躍して少女へと飛びかかった。
眼前に迫りくる鬼気の権化に、二人の内、藍髪の少女が前に出た。
「ここはアタシが引き受ける」
「レイラ……」
不安を訴える黒髪の少女に、レイラは優しく微笑んではこう言った。
「――お姉ちゃんに任せて、ウテナは想い人が待ってる屋敷に向かいなよ」
一つ間を置き、覚悟した顔のウテナは、レイラを今一度確かめるように見つめては、
「――うん、分かった」
そう言って、姿を消した。
「やばっ、そういえば忘れてた!!」
鼻先を矛の先端が掠り、レイラは後方を振り返る。
やはり、鎧に包まれた騎士がそこにはいた。
「ゆっくりと話してる暇なんてないわよ」
厳かな鎧とは似つかわしくない、少女の澄んだ声音が聞こえる。
その言葉に笑い返すようにして、レイラは口を開いた。
「姉妹愛に嫉妬すんなっての」
場の空気が殺意を帯びだした瞬間、レイラは辺りを凍て付かせていた。
$ $ $ $ $ $ $ $ $ $
「――レイラのためにも、早くトウマ君を見つけないと」
そう言いながら、ウテナは屋敷の中を疾走していた。
そして、一つの扉を開ける。しかし、その部屋には肝心のトウマはいなかった。
部屋から離れ、再び走り始めたウテナであったが、異変を察知したのか、勢いよく前を警戒したまま後ろへと飛び戻った。
すると、ウテナの進もうとしていた廊下の床から、一人の男が植物が生えるようにして現れた。
その男は白い髪の半分を鮮血に染めており、ましては口から両頬にかけて杜撰な縫い跡が存在していた。
「おおっ、やはり貴様がウテナか」
「なんで私の名前を……一体何者?」
「俺か? 俺はなぁ、エルマーって言うんだよ」
黒衣を纏った男――エルマーはそう言うと、腹から骨のようなものを突出させた。
それを折り、掌に突き刺してはケタケタと嗤った。
その異常極まりない行動に、ウテナは嫌悪感を隠すことなく戦闘態勢に入る。
すると、エルマーは続いて貫かれた掌から滴る鮮血を舐め取り、それを呑みほした。
その次の瞬間だった。
「――っ!!!!!!」
ウテナが目を見開いた。
それほど凄まじい狂気が、彼女の目の前にあったのだ。
エルマーの背中から無数の白い棒のようなものが飛び出し、重ねて腹部と口から溢れんばかりにそれらが飛び出し、加えて両目に謎の紋章が浮かびあがった。
強烈極まりない惨憺な景色が進展を止めると、エルマーは頬の裂けた顔で不気味に笑った。
「妖魔は、貴様だけじゃないんだよ」
どうも、焼き鮭です。なんか今回の話はけっこうインパクトありますね。
もし
「面白い!」「ナツナって何者?」「エルマーきもすぎだろ」
と思った方はブックマーク、↓の☆を押して評価をしていただけると励みになります!




