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19「邂逅と悪辣」

 ――ナツナは手料理をトウマに振る舞った後、一息吐くと一歩前に出た。

 現在、彼女はある部屋の前にいた。

 その部屋の扉と言うのがとても豪奢であり、緊張感と裕福さを醸し出している。

 

 「お館様、夕餉の支度が整いましたが如何でしょうか」

 『入ってよいぞ』

 「畏まりました。では――失礼します」

 

 ナツナは扉の向こうから聞こえた声に応答すると、また一歩踏み出しては扉を静かに開けた。

 中にいたのは、机をじーと眺めているとても小さな少女であり、ナツナがお盆に乗せている料理の数々を見てはぱあっと顔を明るくさせた。

 

 「わしの好きなメニューじゃな!! ナツナ、分かっておるのう」

 「お館様のためですから」

 

 少女は幼い見た目とは真逆の口調で言うと、テーブルに乗せられた料理に笑顔を浮かべた。

 

 「では、私はこれで」

 「うむ、戻ってよいぞ」

 

 ナツナはそれだけ言うと、部屋を静かに出ていった。

 

 「――はぁ、やっぱ敬語って慣れないなぁ」

 

 溜め息と共にそう零すと、ナツナはゆっくりと廊下を歩いて行った。

 その直後、向こうから焦った表情のカレンが走って来るではないか。

 

 「ナツナ、侵入者です!!」

 「侵入者……? この屋敷にですか」

 「はい、ナツナは侵入者を邀撃ようげきしてください。私はお館様にこのことを伝えてくるので」

 「了解しました」

 

 走り去っていくカレンを後ろに、ナツナは目を鋭くした。

 

 「――久しぶりかな、戦うの」

 

 $ $ $ $ $ $ $ $ $ $

 

 「ナツナ、来ないといいけれど……」

 

 僕は一人、暗くなった夜空を見上げながら玄関の扉に手を掛けた。

 屋敷を密かに脱出するためだ。

 

 なんでも、ナツナの仕事をただ単に見学していたわけではない。主に、屋敷の構造を調べていたのだ。

 エルヴィットさんはきっと、地下牢で捕らえられているのだろう。

 だからこそ、メイドであるナツナからの監視が外れている今――僕は地下牢へと向かっている。

 

 「地下牢の入り口はここだったはず……」

 

 屋敷の外に出て、茂みの辺りを手で探る。

 すると、冷たい金属の蓋らしきものがあった。

 それをどかせば、梯子が顔を出す。

 足を掛け、手を乗せ、ゆっくりと静かに降りる。

 

 暫くそれを続けると、ついに広々とした空間へと辿り着いた。

 幾つもの檻があり、それらを巡回するための通路もある。

 

 僕は息を殺し、慎重に歩を進める。

 すると、向こうの方で叫び声が聞こえた。

 

 その叫喚は痛々しく――増しては聞き覚えのある声だった。

 

 「エルヴィットさん……!!!」

 

 焦慮する心を押し殺し、ゆっくりと叫び声のした方へと進む。

 すると曲がり角に突き当たり、そこから向こうを覗いてみれば――、

 

 「――っ!!!」

 

 思わず、眼球が吹き飛びそうなくらい目を見開いていた。

 一人立ち尽くす男と、その足元に血溜まりを広げたまま倒れている少女。

 

 衝撃のあまり、声帯が空気を潰して音を鳴らすと、それを耳にした男が怪しげに周囲を見渡した。

 すると、僕と目が合い、ニヤリと笑った。

  

 「お前、あのトウマって奴か」

 「――そうだよ、だから何だ」

 

 恐怖と赫怒が入り混じった憎悪で彼を睨むと、僕は龍神剣を顕現させた。

 

 「ナハドメレク」

 

 手に龍神剣が現れ、それを見ていた男は再びニヤリと歪な笑みを浮かべた。

 

 「やはり噂に聞いた通りだ。お前は、どうやら『龍神剣そいつ』にさぞかし気に入られているようだな」

 「それは嬉しい限りだよ」

 

 僕はそれだけ言うと、魔力を龍神剣に注ぎ、瘴気を纏わせた。

 

 「――『龍鬼殄戴りゅうきてんだい』!!!」

 「邪剣ボルデザーク。彼奴を喰らえ」

 

 黒い棒のようなものが突然と現れたかと思えば、巨大な口を持った不気味な生物に変貌した。

 慌てて攻撃を取りやめた僕は勢いを殺せずに、地面を転がり、急いで体制を立て直す。

 

 「みっともねぇな。これくらいで逃げるな」

 「お前、一体何者だ!!」

 「そういやその質問、こいつからも聞かれたわ」

 

 男は足元に倒れている少女――エルヴィットを愉快そうに細めた両目で見ては、思いきり体を踏みつけた。

 僕はその瞬間、ブチっと頭の中で何かが千切れた。

 

 「足をどけろ」

 「なんだ、死人を冒涜するなってか?」

 「どけろと言っただろ!!」

 

 すると、次には僕が男の体を切り裂いていた。

 

 「な、に――っ!!」

 

 小さな声で、男はそう言うとボトリと肉塊を地面に零した。

 

 「はぁ、はぁ……」

 

 僕は息を切らしながら、龍神剣を消失させる。

 そして、倒れているエルヴィットに近寄り、腕に抱えた。

 

 「エルヴィット、さん……」

 

 呼びかけても尚、彼女は黙ったまま生気のない両目を宙に向けている。

 僕はエルヴィットの瞼を下ろしてやると、そのまま梯子の方へと戻っていった。

 

どうも、焼き鮭です。

もし

「面白い!」「エルヴィットは大丈夫なの?」「侵入者ってまさか!!」

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