表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/92

17「ズタボロ」

 ――私は目の前に悠然と佇むミアをじっと睨み付けた。

 不気味なほどに美しい金の髪と、紋章が浮かんだ深紅の瞳。

 

 それは、彼女が吸血鬼であることを示唆し――、 

 

 「ミア。貴様は何故ここにいる」

 「んーとね、それは私がラスキア様の手下だからかな」

 「堕ちたか」

 

 私は目を瞑って溜め息を吐いた。

 そして、かっと視界を広げると、魔法陣を展開して漆黒の球体を放った。

 ミアはそれに対し、両目に浮かべた紋章をギラつかせてはニヤリと笑った。

 

 「『魔殲球サジスト』……ね。悪くはないわね」

 

 そう言いながら、ミアは目をかっと見開いた。

 すると、彼女に迫っていたはずの漆黒の球体が消滅し――跡には何も残らなかった。

 その光景を目にした私は思わず笑みを浮かべ、期待と好奇に目をスッと細めた。

 

 「ミア、やはり貴様は面白い」

 「私はあんまりかな」

 

 言葉を交わし、私は跳躍した。

 再度漆黒の球体を放つも、やはり、ミアに近付いた瞬間に消滅してしまう。

 

 しかし、私は知っている。彼女の能力を。

 

 「――厄介だな、『消滅の神眼』というものは」

 「どこでそれを」

 

 突然と表情を恐ろしくしたミアは、低い声で咎めるように言うと、私をじっと睨み付けてきた。

 その瞳からは夥しいほどの殺意が溢れ、今にも私を殺さんとばかりに煌々と輝いている。

 

 「帝国中の情報など、既に掌握してある……まぁ、私は大将軍だからな」

 「――っ、やっぱ私リキア大将軍のこと嫌い」

 「そうか、お前もか」

 

 嫌悪を示すミアと、それを笑い飛ばすリキア。

 両者は不敵な笑みを浮かべては、強く睨み合っていた。

 

 $ $ $ $ $ $ $ $ $ $

 

 「――トウマ君、大丈夫?」

 

 転げた僕に手を伸ばすのは、一人の女性。

 女性は穏やかで柔らかな微笑を湛えたまま、こちらに手を差し出してくる。

 その手を取り、苦笑いしては僕は彼女に謝った。

 

 僕は女性の顔を見上げては、安心感がして前を走った。

 

 「こら、またこけるよ!」

 「大丈夫だって」

 

 そう言いながら、僕は女性――エヴァの前を駆けていった。

 

 『一つ、質問をしてもいいかな』

 

 声がしたかと思えば、見覚えのない緋色の髪をした少女が目の前にいた。

 

 「君は……?」

 『勇者と言ったら分かるかな』

 「勇者……!! あの伝説の!?」

 

 まだ幼かった僕にとって、勇者は憧れの存在だった。

 だからこそ、とても気分が高揚した。

 

 『さて、質問だけど。

 

 

 ――君は、いつまでナハドメレクに支配されているの?』

 

 心の奥深くに、その言葉が突き刺さった。

 絶望と恐怖が入り混じり、軈ては困惑と恐慌へと変わっていく。

 

 『龍神剣ナハドメレク……君が創造する、唯一の神剣だよ』

 

 少女の声が鼓膜を穿たって心臓の鼓動を貫いてくる。

 その場に僕は倒れ、目を閉じた。

 

 $ $ $ $ $ $ $ $ $ $

 

 「――っっっ!!!!!????」

 

 僕ははっとし、周囲を見渡した。

 そこは見知らぬ屋敷であって、増しては見知らぬ少女が二人、メイドの格好をして料理をやっている。

 

 「トウマ君、どうしたの? もしかして、お腹減った?」

 「――多分」

 

 銀髪の少女がそう言ったのと同時に、彼女の正体、自分が今どこにいるのか――更に、これからしなければいけないことを思い出した。

 

 「僕は、早く……ウテナのところに戻らないと」

 

 ウテナ。待っていてくれ。

 

 「もう少しで」

 

 屋敷の情報は全て掴んだ。

 だから早急にこの屋敷から脱出してみせる。

 

 『お兄ちゃん、本当にできるの?』

 「オリビアか……」

 『その通り。でも――本当に、「裏切者」のお兄ちゃんに何ができるの?』

 「裏切、者……?」

 

 その瞬間、僕の頭がズキリと痛んだ。

 

 次に、脳裡にある火事の光景が浮かんだ。

 

 荒れ狂う龍のように暴れ回り、広がっていく火炎と、人々の悲鳴と血肉の嵐。

 そして町の中心で一つの剣を持ったまま項垂れている一人の少年。

 傍らに打ち捨てられている少女の骸。

 

 最後には――憧れだった一人の女勇者が、少年を静かに見下ろしていた。

 

 『一つ、質問をしていいか?』

 「――」

 『どうして、君はここまで変わってしまったのか』

 

 「――ウマ君! トウマ君!!」

 「ナツ、ナ……」

 「良かった。さっきからずっとぼーってしてるけど、ホントに大丈夫?」

 「心配しなくていいよ、大丈夫だから」

 

 ナツナの声で目が覚め、そして彼女はふっと目を細めて――

 

 「味見してくれる? ほら、口開けて」

 

 僕は口を開け、ナツナの作った料理を味わう。

 

 「どうかな?」

 「美味しい」

 「なら良かった!!」

 

 嬉々とした表情で、そう言ったナツナをじっと見据えたまま、僕は偽りの笑みを浮かべた。

どうも、お久しぶりです。焼き鮭です。

もし

「面白い!」「トウマが裏切者?」「自分もナツナの手料理を食べたい」

と思った方はブックマーク、↓の☆を押して評価をしていただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ