12「把捉」
――僕は部屋を出ようとしたナツナの手を引いた。
「と、トウマ君……?」
「仕事、見学してもいいかな」
「メイド長に聞かないと、厳しいかも……」
「そうなんだ……」
ナツナは考え込む素振りをする。
なるほど、メイド長とやらに許可を取らないといけないのか。
どうやら一筋縄ではいかないらしい。
「そのメイド長と言うのは今どこに?」
「アイツなら、多分、屋敷の世話を――」
「ええ、アイツならここで貴方の世話をしてますとも」
「な――」
黒髪の女がいつの間にかナツナの前に立っていた。
それを見た僕は内心驚きつつも、事情について説明した。
「えっと、あの……ナツナさんとメイドの仕事を見学できないかと話をしてまして」
「メイドの仕事を見学……? 構いませんが……」
女はじっと、慎重で深刻な面付きでこちらを睨んできているような気がした。
僕は彼女の視線に心の中を見透かされているかのようなおぞましさを感じ、すぐに目を逸らした。
すると、彼女は途端に口元に穏やかな笑みを湛え、
「トウマ様、どうぞ」
「あ、ありがとうございます……」
メイド長の女は僕を扉の外まで案内すると、ちらとナツナの方を見やった。
ナツナはびくりと体を跳ねさせ、「あはは」と苦笑いをする。
「トウマ様、ナツナが何かしましたか?」
「いや、別に何も……」
女は目をぎっと細めると、ナツナの方を睨み付けた。
ナツナは怯えるようにして僕の後ろに隠れる。
「えっと、メイド長さん……そこまでにしてやっといてください」
「カレンと、そう呼んでください」
「カレンさん……分かりました」
カレンと名乗った女はそれだけ言うと再び柔い笑みを浮かべた。
そしてナツナはべーっと舌を出して、カレンを挑発した。
「ナツナ、後で御仕置ですからね」
「す、すみません」
ナツナはか細い声でそう言うと、僕の隣に立ち、「行こっか」と耳打ちした。
「ナツナ、トウマ様にやはり何かしましたね?」
「ほ、本当にしてないってば」
「ん……はぁ。貴方には何を言っても通用しませんし、もういいです」
カレンは呆れた表情をしては、僕を廊下へと進めた。
燭台に灯された火が揺らめき、豪奢な雰囲気を鮮烈に醸し出している。天まで突き抜けそうなほどに高い天井と、そこに描かれた美しい絵画。
その絵画には数名の男女が描かれており、何かの獣と対峙する様子が表されていた。
僕は思わず肩を竦めてしまい、隣で平然と佇むナツナへと目をやった。
「何か色々と凄いね」
「まあ、お館様が物好きだからね」
「ナツナ、口を慎んでください」
「だりーな」
ナツナは舌打ちをし、そして僕の方を見てはニッコリと明るい笑みを浮かべた。
「トウマ君、面白くはないかもしれないけど見ていってね」
「うん。楽しみにしてる」
本当に楽しみだな。
この屋敷、メイドが普段何をして、どんな時間帯にどんな仕事をしているのかを把握することができるし。
どうも、焼き鮭です。
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