3「誘拐と好奇」
私は宮殿の会議室に全員を集め、私は
「――トウマとエルヴィットが攫われた」
「嘘……!!」
椅子に座っていたウテナが立ち上がり、
「トウマ君と、エルヴィットが……そんな」
驚愕と焦燥の混合した激情を瞠目として表し、ウテナは食堂を出ていこうとした。
しかし、その手をレイラが止めた。
「――ウテナ、駄目」
「レイラ……どうして」
「無闇にあたし達が動いても、敵の情報の一切も掴めてないんだし――意味がないよ」
「でも……」
ウテナは唇を強く噛み締め、下を向く。
そんなウテナを隣から引き留めるレイラ。
二人の光景を見ながら、私は頬を強張らせる。
「レイラの言う通りだ。トウマとエルヴィットを攫った愚連隊は私が特定してみせる――だからウテナ、一まず席に座ってくれ」
「ごめん……」
ウテナは小さな声で謝り、とぼとぼと椅子に座った。
すると、ザギンクが手を上げて――
「一つ聞きたいのですが」
「構わん」
「よりにもよって何故、トウマさんとエルヴィット様が攫われたのでしょうか」
「分からんな……もしや何者かの煽動かもしれないな」
「つまり、トウマさんとエルヴィット様を攫うことで『白銀の豺虎』を誘き寄せようと……」
「そうなるな」
ザギンクは歯を食いしばり、「なんてことを」と呟く。
「何かの物音がし、窓が開いていたのがエルヴィットの部屋だった。よって、何者かはエルヴィットを使ってトウマを誘ったのかもしれない」
「なるほど……ですが、エルヴィット様は何故?」
「口封じに決まっているだろう。流石に証人を残していれば、あちら側も黙っちゃいられないからな」
真剣な表情をしたまま、ザギンクはテーブルへと視線を落とす。
「思ったより、事態は深刻になっているのだな」
今、ここにいる『白銀の豺虎』メンバーは、私とウテナ、レイラ、ザギンクだけだ。
ユダを失い、トウマとエルヴィットも失ってしまえば――かなりの戦力を喪失することになる。
それだけは避けておきたい。
それに、私の玩具としての存在も潰えてしまうからな。
「しかし……」
何故トウマとエルヴィットを狙ったのだろうか。
もしや――二人の極秘情報が漏洩したのか?
だとしたら、その情報は騎士団達の間で噂になるはずだ。
それならば、当然私の耳にも入ってくる。
しかし、それがない。つまり、かなりの地位を持っているものが情報を入手しては、混乱を巻き起こさないためにも秘匿しているのだ。
帝国騎士団での最上位――それが『大将軍』である。
シャロンは死亡したが、代わりに帝国へと舞い戻ってきた者がいる。
トウマとエルヴィットが攫われたのはきっとその大将軍――ラスキアの仕業であろう。
それ以外に考えることができない。
「くそ……甘く見ていた」
私より実力が下だと思って甘く見ていた。
しかし、彼女は同じ大将軍。
実力はほぼ等しいと言える。
「まずいな……一刻も早く二人を奪還しなければ」
私は焦慮しながら、椅子を立つ。
「皆よ、これから私はラスキアの軍を攻めてくる」
「ですが、リキア様とはいえ、どうやってラスキア大将軍の相手を……」
「精霊神から借りた精霊騎士達がいるだろう? 彼らを利用すればいいだけのことだ」
「確かにそうですね! ですが、ラスキア大将軍と戦争などをしていては帝国の安泰が……」
「そんなのは気にするな。私の目標は全世界を巻き込むものだ。そうだというのに、その程度の混乱で取り乱すな」
ザギンクの言葉を余所に、私はニヤリと笑った。
ラスキアをここで潰せば、帝国の中で私に楯突く者はいない。
そして帝王を処刑し、幼い帝王のご子息を後継者にさせ――浸け入ることができれば、次は別の国を支配することができる。
「――ふふふ、楽しみだ」
二人が攫われたことなど、私の好奇心を駆り立たせるものでしかない。
私は微笑したまま、食堂で立ち尽くしていた。
どうも、焼き鮭です。
もし
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