1「無理解」
――私がアジトに戻り、皆に今後のことの話をしてから数時間が経過し、時間帯は既に夜となっていた。
その最中、私はコーヒーを一口飲んでは訝しむように目を細める。
「――ラスキア大将軍が帰ってきたのか」
一通の便箋を手に、静かにそう言った。
誰もいない食堂にある椅子に腰かけ、テーブルの上に乗った封筒へと目を向け、私はコーヒーをまた一口飲んだ。
「まずいな……」
クーデターを起こす際に大きな妨げとなるかもしれないが、まあ私の方が強い。
「その心配は必要ないか」
私はそう呟き、便箋を破り裂いた。
そして席を立ち、部屋へと向かう。
「なるべく、早めにクーデターを起こさねば世界征服などは難儀かもしれんな」
私は別に焦っているわけではない。
世界征服をなるべく効率的に、早急に済ませたいだけだ。
すると、
「リキア様、こんな時間にどうしたんですか」
「ザギンクか。なに、ちょっとした暇つぶしだ」
「そうですか」
ザギンクは機械の腕をタオルで磨きながら、私にそう言った。
そんな様子の彼と会話を終えると、私は自身の部屋へと戻るために再び足を進めた。
すると、過ぎ去り際にザギンクが笑って、
「すみません、リキア様。話があるのですが……」
「話、だと? なんだ、言ってみろ」
「――あんまり夢を追いかけすぎないことですよ。結局、破滅にしか向かいませんから」
「――?」
ザギンクは先ほどの笑顔とは相反した、とても冷たい声色でそう言った。
私は思わず彼の言葉の真意が汲み取れず、困惑する。
すると、申し訳なさそうな顔をしたザギンクが、後頭部に手を置いて取り繕うように笑顔を浮かべた。
「すみません、今のは聞かなかったことにしてください――それじゃあこれで」
「――何か隠しているのか?」
「“隠している”……?」
その瞬間、ザギンクの顔面から笑顔が消え去った。
「――誰にだって隠しごとの一つや二つくらいあるんじゃないでしょうか。リキア様だって知られたくないことぐらい、ありますよね?」
「そんなものはない。私が隠しごとなどの弱みになど頼るはずがない――私は基本的に真実を述べるまでだ」
「相変わらず頑なですね。まあそこに惹かれるんですけど」
そしてザギンクは笑顔を三度作り直し、
「今はそう思っていても、後々絶望することになりますよ」
「その時は、絶望など忘れるくらい笑ってやるとも」
意味深なザギンクの忠告に笑い返し、私はそう言った。
そして彼を後に、廊下を進んでいった。
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「――お前、記憶を失ったんだって?」
ぼんやりとした意識の中、僕は目を開いた。
声がした。聞いたことのない、男の声が。
「誰……?」
「そうか、お前はボクと会ったことないんだったな」
視界に映る白髪の少年はニヤリと笑い、痣のある右手を伸ばしてきた。
そして僕の頬に優しく触れ、まるで僕の存在を確かめるかのように何度も撫ぜる。
「ボクは『――・カタストロフィ』。偽名だが、アベンジって名乗ってたな」
「アベンジ……」
「そうだよ。最低な名前だろ?」
すると、少年は急に笑い出した。
「あははっ! ボクってばセンスあるよね、流石はみんなのお兄ちゃんだ」
「お兄ちゃん……?」
「ん、お前はさっきから元気ないね。なんでだよ」
「分からない……」
「そうか。――そうだ、いいことを教えてやろう」
少年は不気味な笑みを湛えたままこちらへと顔を近付けてきて、
「――ボクとお前は一緒なんだよ。互いに、心を殺した者同士ね」
どうも、焼き鮭です。
もし
「面白い!」「ザギンクと、後半の話の謎がやばい」「自分もリキアと話したい」
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