プロローグ「帰国」
――久しぶりの光景だ。
エルヴェル帝国の繁華街の一角で、人波をあしらうように横目で見据え、私は魔車を牽いていた魔獣の頭へと手をやる。
「なんだか新鮮だね」
「久しぶりに帝国へ戻って来たからな……そう思うのも仕方あるまい」
トウマが感懐を抱いたかのような表情で周囲を見渡す。
それをちらと見やり、私は口元に微笑を湛えた。
私は魔獣の頭から手を離し、魔車から降りてきたエルヴィットとザギンクへと目をやる。
「エルヴィット、昨日はちゃんと寝れたか?」
「寝れたのじゃ……」
目の下に隈を作ったエルヴィットはそう言い、それを見た私は彼女を抱きしめた。
エルヴィットは驚きの声音を上げるが、私は気にせず彼女の頭を撫でた。
「何か悩みでもあるのか?」
「ないのじゃ!! いいから離してほしいのじゃ!」
「断る」
「むぎゃあああああああああ!!!!」
胸の中で暴れるエルヴィットに笑いかけ、私はそのまま頭を撫で続ける。
すると、その光景を見ていたザギンクが、
「リキア様、そのくらいにしてあげてください」
「む、もっと撫でていたかったのだがな――触り心地いいし、可愛いし」
「余は撫でてほしくないのじゃっ!!」
「そうなのか……悲しいな」
私は悲しそうな表情をわざと浮かべる。
すると、エルヴィットが手をあたふたと振り、
「別に嫌じゃないぞ! 嫌じゃ……」
「そうか! じゃあもっと撫でさせてもらうぞ」
「なあっ!? そ、其方、余を嵌めたなー!!!」
「可愛い奴め」
「おぶっ!? ぶふうぶう!!」
私の胸の中にエルヴィットを埋め、彼女は呻く。
そんな最中、ふと、魔車の中から無表情のウテナと項垂れているレイラが姿を現した。
やはりレイラはユダが死んでからあの状態のままだ。
私は口元を固く結び、レイラから視線を逸らした。
「お前達、早くアジトへ戻るぞ――アジトに着いたらこれから行うことについての説明をする」
早くエルヴェル帝国を支配しないとだな。
そのためにも――、
「――帝王を震撼させてやる」
クーデターを早く起こさねば。
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精霊騎士達を王城へと連行し終えた私は一息吐き、魔法陣を描いた。
そして移動魔法を行使し、アジトである宮殿に戻った。
「リキアちゃん」
「ソフィアか……なんだか久しぶりに会ったような気がするな」
「確かにね……アタシはちょっと諸事情で席外したしね」
「諸事情……?」
「ちょっとしたことだから気にしないでいいよ」
何かを隠すかのような笑みを浮かべてそう言うと、ソフィアはどこかへと行ってしまった。
私はその後背を見届け、
「ソフィア……」
警戒心に目を細めた。
どうも、焼き鮭です。ついに人間界の話が来ましたね。
もし
「面白い!」「クーデターか」「リキアに抱きしめられたい」
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