断章「商店街で」
「――ユダ、おはよう!」
「なんだよ……もう朝なのか?」
オレは目を擦りながら、体を起こす。
隣ではレイラが笑いながらこちらを見つめていた。
「んだよ、面白いことでもあったのか?」
「ユダっていつもうるさいじゃん。だから寝てる時もうるさいのかなーって思ったけどそうでもなかったな……っていう面白さ」
「なんだよそれ……」
オレはそう言いながらベッドを降りる。
かれこれレイラと交際を始めてから一か月が経った。
ぶっちゃけ何をしてやればいいのか未だに分からないままだ。
恋愛相談とかトウマやザギンクにやってみたものの、オレが恥ずかしいということ以外に必要な情報は得られなかった。
すると、レイラも体を起こしては欠伸をした。
「んん、今日は珍しく任務がないとかリキアが言ってたね」
「そうだな。どこか一緒に行くか?」
「そうしよう!」
快活な声音を上げ、レイラが布団を飛ばしてベッドの上で立ち上がった。
彼女は嬉しそうな笑みを浮かべ、こちらを見つめていた。
思わずレイラの笑顔を見て、オレは自身も嬉笑を湛えていることに気が付いた。
「と、とにかく……早く着替えろよ」
「あんまり女の子を急かしたら駄目だよ! もっと余裕を持った男にならないと」
「なんの話だよ。別にどうだっていいだろ?」
「むぅ……頑固だなあ」
「うるっせぇ」
いつもであれば叫ぶであろう台詞を叫ばずに、オレは『白銀の豺虎』の制服を着る。
まあオレはこれ以外にまともな服持ってねぇからな。
「ユダ、制服しか持ってないの?」
「まあな……そもそも何着りゃいいのか分かんねぇし」
「じゃあさ、今日は商店街に行こうよ! 服、アタシが選んであげる」
「お、おお……そうだな、商店街に行くか」
楽しみと思っているのか、レイラが微笑みながらそう言った。
「着替えるからあっち向いてて」
「一緒に寝ることはできるくせに、着替える時だけは恥ずかしいのかよ」
「もう!! そんなことは気にしない!」
「分ぁったよ」
やばい、心臓がバクバクする。
ぶっちゃけレイラと一緒に寝るのは日常茶飯事だから慣れたが、その……レイラの下着とか裸とか見たことないから本当にそんなことを連想させるのには弱い。
やめてくれ。オレがオレじゃなくなりそうだ。
彼氏が彼女に恥ずかしがっててどうする。
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「――にしても、ここが商店街とは」
「凄い沢山の店があるね!! どこから行く……?」
「ん、オレは別にどこでもいい」
「もう……そんなこと言わずに、ね?」
オレは頭を掻き、
「分ぁったよ……なら飯だな」
「ええっ!? 朝食はリキアの食べたじゃん! それにまだ時間は朝の十時みたいだし」
レイラは時計塔の時計を指差しながらそう言った。
「なら……今朝に言ってた服屋とか?」
「その言葉を待ってました!! さ、行こう」
「そ、そうだな……」
レイラに手を引かれながら、オレ達は商店街の中を駆け抜ける。
レイラの後ろ姿を眺めながら、どことなく、オレはぼーっとしていた。
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「つーか、レイラもセンスないじゃねぇかよ」
「そ、それはだって……男の人の服を選んだのは、初めてだから……」
あの後、レイラと一緒に服屋へ行き、衣服を購入したのだが……。
レイラが選んだのはピンク色でよく分からん紋様が描かれたシャツであった(ズボンとかは買ってない)。
まるでどこかの民族衣装のような服だった。
「なんかごめん……ユダの言う通り、アタシはセンスないのかも」
「――」
レイラが悲しそうに下を向いているのを見て、オレの心の中に靄のようなものが立ち込める。
「でもよぉ、よく見たらこの模様可愛いじゃねぇかよ。オレは結構好きだな」
「え、本当……!」
「ああ、本当だ」
ぱあっと表情を明るくさせたレイラを見て、オレは安堵した。
折角レイラがオレのためにこの服を選んでくれたのだ。今度から外に出る時はこれ着よう。
「――もう夕方だし、公園にでも行かねぇか?」
「公園か……何だか懐かしいな」
「懐かしい……?」
「ユダには言ってなかったっけな」
すると、レイラが何かを偲ぶような表情をする。
そんな彼女の横顔が、夕日に照らされて映えていた。
オレはレイラに思わず見惚れてしまい――、
「ユダ、どうしたの?」
「あ、いや……なんでもねぇよ」
「ははっ、さてはアタシに見惚れてたな?」
「そ、そんなわけねぇだろ!!」
オレは顔を熱くし、それを隠すようにそっぽを向いた。
いや、本当に見惚れていた。
ずっとあの横顔を見つめていられそうなほどに。
どうも、焼き鮭です。今回はユダとレイラがもし付き合っていたらというIF的な話でしたね。
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「面白い!」「ユダとレイラのこういうシーンが見たかった」「ユダが初心すぎて良き」
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