13「鏖殺」
ユダは翼を使って空を舞い、地上から触手を放ってくるリリエルを見て舌打ちした。
腕の中で痛みに喘ぐレイラを一瞥し、ユダは背中に括り付けていた鎌へと片手を伸ばす。
「死堕鎌ナーガ、力を貸してくれ」
ユダは瞑目し、大鎌へと魔力を注ぐ。
すると、大鎌の形が変わっていき――肉塊を纏った邪悪な鎌へと移ろった。
その変化を見ていたリリエルが顔色を変え、
「忌々しい……やっぱり悪魔には虫唾が走る」
「勝手に言ってろ!! てめぇがオレの力の源を嫌いだろうがなんだろうが、オレには関係ねぇんだよ!!」
「――っ! 大罪人め!!!!!」
人が変わったかのように叫び出したリリエルは、体の半分を巨大な口に変化させる。
巨大な口から出でる舌先と鋭利な牙。
リリエルは続けて背中から硬化した触手を生やし、地面に突き刺した。
そして触手を折り曲げると、勢いよくぴんと張らせた。
すると、リリエルは途轍もない勢いで空へと飛んでいき――空中にいたユダを捉えた。
「堕ちろ!!!」
リリエルは触手で思いきりユダを殴りつける。
しかし、ユダは彼女の触手を鎌で切り裂き、攻撃を躱した。
続けてリリエルの体目がけ、鎌を振り下ろす。
「ぎゃあああああああっ!!!!」
リリエルは体を切り裂かれ、血飛沫と悲鳴を上げる。
その後にユダは彼女の体を地面へと蹴り落とした。
ユダはそれを見届けて、
「レイラ……」
体をゆっくりとだが再生させているレイラへ目をやり、ユダは口元を固く結ぶ。
すると、レイラが力なく笑って、
「どうしたんだよ」
「もう傷が癒えてきたから……下ろしてもいいよ」
「そうだな。一まず地上に降りるか」
ユダはゆっくりと降下し、そしてレイラを下ろす。
周囲には教徒の男達も、教祖も、トウマ達もいなかった。ただリリエルの死体が転がっているだけである。
すると、レイラが立ち上がっては吐息を零した。
「ありがとね、ユダ……」
「礼なんざいらねぇよ。オレはオレの好きなようにやっただけだ」
「なんかユダが変……」
「ああ!! どこがだよ!!!!」
「いや、やっぱりいつものユダだった……」
「――っ、まあいいけどよぉ」
ユダは頭を掻き、レイラから目を逸らす。
翼と触手を消失させ、元の姿に戻った彼は大鎌を背中に直す。
すると、
「ユダ!?」
「――は」
ユダを見て、レイラが叫んでいた。
なんと、ユダの心臓を一つの触手が貫いていたのだ。
「がっ……なん、だよこれ……」
ユダは膝を付き、口元を手で押さえる。
そして掌を塗りたくる赤い液体を目に、目を見開いた。
「大罪人め……よくも私の体を!!!」
白目と黒目の位置が入れ替わったかのような両目に、血痕を残した服を身に纏う一人の少女が、ユダの背後にいた。
彼女――リリエルは額に青筋を浮かべ、乱れた赤い頭髪を逆立たせている。
「『殲氷地凍』……!!!」
あまりにも暴力的な氷が、地面を伝う。
地面、空気が凍っていき――その猛威がリリエルを襲う。
「『暴喰天使』」
リリエルは体を引き裂いて巨大な口を顕現させた。
巨大な口から火炎が放出され、迫りくる冷気を焼却する。
「そんな……」
レイラはその光景に、目を見開いた。
「――大罪人もろとも、獲物ちゃんはあたしが鏖殺する」
リリエルは体から生えた巨大な口で笑った。
どうも、焼き鮭です。
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