12「神獣と双鬼」
――周りの景色の情報が、視覚に追いつけなくなるほどの速度で私は刀を振るう。
それを見事に受け止めた男であったが、赤黒い閃光が消失してしまった。
「なに――『異空変化』の魔法を刀に付与していたのか!?」
「そう驚くな。消失したのは閃光だけではない……貴様の剣までもだ」
「――っ!!」
男は剣が手元から消失しているのを見て、歯軋りをする。
そして肉弾戦でもするつもりなのか、拳を上げる。
しかし、
「『雷戦曦叡縷』!!」
髪が静電気で逆立ち、バチバチと電流の音を生む。そして失明しそうなくらいに眩い、金色の閃光が出現し――男を襲った。
男は成す術もなく、絶大な威力の電流を喰らった。
「があああああああああああっっっっっ!!!!!!」
服が破け、全身が真っ黒に焦げる。電流の痕が付き、彼は目から血の涙を流す。
「本当に、貴様のような奴がシャロンを倒せたのか――甚だ疑問だな」
私は電流の波に呑まれ、悶絶している男を遠目にそう言った。
こんな雑魚にシャロンはどうして負けたのだろうか。
瞬殺だったぞ。
「――帝国最強の大将軍を侮るな、痴れ者め」
最初は彼のことを強いと思った。だが、剣を失えばただの弱者。
興味など薄れてしまった。面白味の欠片もない。
私はこの場を離れて、トウマ達の方へと向かおうと魔法陣を展開する。
「グロォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
「なんだと……」
しかし、それを阻むかのように、何者かの咆哮が聞こえた。
鼓膜に痛みがし、私は両耳を手で覆う。
「――っ! なんなんだこの鳴き声は」
金属を擦り合わせたかのような高くて、不快な音色がする。
耳の痛みに私は堪えるように歯を食いしばる。
「神獣タイラントだと……!?」
禍々しいほどに黒い色をした体と、忌々しいほどに赤い巨大な眼球。
背中には無数の棘があり、尻尾の先まで続いている。
口からは巨大な牙を突き出し、頭にも巨大な角を生やしている。
そう、神獣タイラントだ。
神獣タイラントは、その名の通り神であり、この世界で語り継がれている神話に登場する。
しかし、何故そのような神獣がこの精霊界に現れたのだろうか。
私は聳え立つタイラントを見て、制帽を被りなおした。
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「当たらないというのがオチだな……!!!」
グーデッドはひひっと笑いながらそう言う。
トウマはそんな彼に斬りかかるも、軽やかな身のこなしで躱されてしまう。
異常なまでに見開かれた双眸に血を走らせ、グーデッドは魔法陣を展開する。
「出てこい、『狡猾鬼』、『簒奪鬼』!!!」
すると、刀と金棒を手にした二党の鬼が現れた。
緑色の体色をした鬼――『狡猾鬼』は刀を手に携え、こちらの様子を窺っている。
青色の体色をした鬼――『簒奪鬼』は金棒を肩に乗せては一息吐き、トウマ目掛けて振り下ろそうとしてきた。
「避けてっ!!」
「ウテナ……ありがと、助かった」
ウテナのお陰で金棒の一撃を躱すことができたトウマは、龍神剣を構え――深呼吸する。
前は瘴気を使うことができた。だからこそ、今も使えるはずだ。
「『龍鬼殄戴』!!!!!」
瘴気を纏った剣は、狡猾鬼目掛けて振るわれる。
しかし、狡猾鬼はトウマの動きよりも早く動いていた。
剣を持っていた右腕が切断されたのだ。
血飛沫が飛び散り、トウマは痛みに悶絶する。
「ぐああああっ!!!!」
「トウマ君……!」
ウテナがトウマの方へと駆け寄ってくる。
だが、
「避けてくださいっ、ウテナさん!!!」
「オオオオオ」
「あああっ!!」
ウテナは簒奪鬼の金棒によって思いきり地面に叩き潰された。
尋常じゃないほどの血がトウマの顔に飛び散り、トウマは絶望に目を見開いた。
「トウマ、何をしておる!!」
「エルヴィットさん……ごめん」
トウマはエルヴィットに声をかけられ、目の前に立つ狡猾鬼を睨む。
左手に龍神剣を手に持ち、ゆっくりとだが回復している右腕を確認した。
「お前は、僕が倒す!!!」
「アアアアアアア」
狡猾鬼は獰猛な顔をしたままこちらへと駆けてくる。
「『龍鬼殄戴』……!!!!」
どうも、焼き鮭です。再生能力ってチートですね。
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「面白い!」「神獣と鬼ってヤバくね」「自分もリキアに電気でいじめられたい」
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