7「狂信」
「――犯罪者の組織を処刑したはいいものの、まさか因縁を付けられるとはな」
「教祖様と幹部達をよくもっ!!」
「教祖も何も、犯罪者が犯罪者のこと語ってんじゃねぇぞ」
シャロンは、集団で現れた男達に囲まれていた。
男達は血走った目でシャロンを睨み、鈍器を手にしている。
その絶対的に狂気と言えるであろう光景を見て、シャロンは不敵な笑みを浮かべた。
「精霊界でこそ暴動を起こすてめぇらが悪いんだよ。俺は別に教祖とか興味ないから」
「黙れぇぇぇええええ!!!」
男達が叫喚しながら飛びかかってくる。
それを全て躱し、全員にカウンターとして思いきり拳と蹴りを打ち込んだシャロン。
彼は地面に手を翳し、魔力を注ぎ込んだ。
「『植地暴化』」
地面がうねるように動き出し、地面から触手らしきものを生やした。
しかし、それは触手と言うよりも蔦と言った方がいいのかもしれない。
蔦は鋭利な棘が無数に生えており、
「縛り殺せ」
シャロンの合図と共に、蔦が男達の全身に絡みつく。
蔦に生えた棘が男達の全身に突き刺さり、血飛沫を上げる。
断末魔を上げ、男達は血の雨を降らせながら命を落としていった。
「これで終わったか……やっと帝国に戻れるわ」
「お見事と言うべきかな」
「――誰だ?」
すると、一人の少女が現れた。
先ほど血の雨が降ったと言うのに、少女は不自然にも真っ白な服を着ており、赤髪を陽光の下に晒している。
シャロンは頬を強張らせ、魔法陣を展開する。
「獲物ちゃん、そこまで警戒しなくていいよ……獲物ちゃんの相手はあたしじゃないから」
「なに――!?」
「俺だ」
後方を振り返り、シャロンは血を吐いた。
心臓を思いきり貫かれたのだ。
「――また血だ。もう見飽きたな」
「見飽きた、だと……!!」
「ああ、そうだとも」
無表情の男は剣に付着した血を払い、倒れたシャロンを見下ろす。
「リリエル、こいつなら喰っていいぞ」
「本当に!? ダザエル、ありがとね」
「なん、だと……」
シャロンは視界が薄れながらも、眼前に少女と狂気が迫りくることを悟った。
それは見事的中し――、
「ん、やっぱり美味しいな……!!」
「俺には分からん」
シャロンは体から口のある触手を出し、シャロンの死体を丸呑みにした。
触手がシャロンを咀嚼し、体内へと摂り込む。
「リリエル、本当の仕事はリキアって女の部下を殺害することだろ? こんな寄り道してたら神に怒られるぞ」
「そんなの気にしないでいいよ。あたし達はどうせ――」
少女は愉快そうに顔を歪め、
「リキアの部下を惨殺するんだから」
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「――精霊神メリア、これでならどうだ?」
「うん……貿易も、人手も、戦争の手助けもいいよ!!」
「それなら良かった。この協定を仮に『戦助協定』とでも名付けておこう」
私とメリアは今、協定について喫茶店で話をしていた。
協定こと『戦助協定』の内容は、精霊とエルヴェル帝国間での貿易、精霊達の行う仕事の人手不足を改善、精霊界やエルヴェル帝国でもし戦争が起きれば軍隊を派遣してくれるというものだった(エルヴェル帝国に軍隊を派遣してくれるとは述べたが、主に私が戦争を行った際に協力してくれると言うことである)。
メリアは優しげな笑みを浮かべ、「それじゃ」と言って席を立つ。
「待て」
「ま、まだ何かあるの?」
「トウマについてだが、聞いていいか?」
「ん」
私がそう言った瞬間、先ほどまで優しかったはずの彼女の表情が険しくなっていく。
「彼のこと?」
「そうだ。何か根に持つようなことがあったのか?」
「根に持つようなこと、か……」
メリアは席に戻ると、目を細めた。
「彼とは、特に何もないよ」
「ならば何故、私達が精霊界に訪れた時あの顔をした」
憎悪と敵愾心を充満させたあの表情。あれは確実にトウマへと向けていた。
すると、メリアは優しげな笑みを取り戻し、
「そんなことなかったよ。じゃあ、今度こそわたしはこれで」
そう言って、逃げるように喫茶店を出ていった。
「ご注文のコーヒーです」
「ああ」
私は精霊の男が運んできたカップを受け取ると、冷ますために息を吹きかける。
コーヒーを啜り、私は店内を見渡した。
「それにしても……精霊界も人間界と同様、発展しているみたいだな」
喫茶店が存在するなど、精霊界も大したものだ。
どうも、焼き鮭です。シャロンがやられてしまいましたね。
もし
「面白い!」「精霊界って喫茶店あるんだな」「自分もリキアと一緒にコーヒーを飲みたい」
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