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14「アジトにて」

 ――眠っているウテナとレイラ、ユダをそれぞれ見た私は溜め息を吐いた。

 そして自身の部屋にある椅子に座る。

 

 あんな病魔にここまでやられていては、先が思いやられる。

 

 私は頭を抱えて、悩み込む。

 すると、私の肩をとんとんと誰かが小突いてきた。

 

 「リキアちゃん、何かあったの……?」

 「はぁ、ソフィアには関係ないだろ」

 「でもワタシ達友達でしょ? 相談とかしてあげるけど……」

 

 私はその言葉にぎろりとソフィアを睨み付けた。

 

 「関係ないだろ」

 「ご、ごめん」

 

 ソフィアは苦笑いすると、そそくさと去っていった。

 私はその後もただ頭を抱えていた。

 

 「ウテナとレイラには体を八つ裂きにする拷問をしてやろう。どうせ体は再生するのだから」

 

 私は怒りのあまり、指で机をとんとんと小突く。

 

 「これしきで寝込んでいては、世界征服などもってのほか」

 

 再び溜め息を吐いた私は、食堂へと向かった。

 そして食堂にいる眼帯を付けたザギンクに話しかける。

 

 「ザギンク、目は大丈夫か?」

 「はい、ご心配なく」

 「またソフィアに体を強化してもらえ……数週間後には精霊界に行くからな」

 「精霊界に……?」

 

 ザギンクの問いかけに、私は上っ面だけの笑みを浮かべる。

 

 「そうだ。精霊界にいる精霊神ととある話をしに行くんだ」

 「そうなんですか……もしや帝国との貿易交渉などですか?」

 「少し違うな」

 

 精霊化に行くことには理由がある。

 それはこの帝国でクーデターを起こす際に当たって最も重要なことだ。

 

 精霊達の力を借り、帝王を狙うのだ。

 帝国軍の者達はなるべく殺すつもりはない。だからこそ、精霊達が使用する特殊な術式で洗脳をするといったわけだ。

 

 「他国との戦争が勃発した際に、武力介入の協定を結ぶんだ」

 「武力介入……?」

 「まあ詳しいことは後で話す」

 

 私はザギンクにそう言うと、龍神剣を磨いているトウマの方へと行く。

 

 「トウマ、それは包丁を研ぐための砥石なんだが」

 「えっ、そうなの……ごめん、間違って使ってた」

 「気にするな。それとだが――」

 

 トウマの耳元へと口を近付け、

 

 「今日の夜、私の部屋へと来い」

 「――!?」

 

 そう囁いた。

 それに顔を赤くしたトウマ。

 私は彼の表情にふっと微笑む。

 

 「約束だぞ」

 「う、うん……約束」

 

 そう言い終えると、私は次に部屋にいるであろうエルヴィットの元へと向かった。

 

 「エルヴィット」

 「な、なんじゃ……!?」

 「話がある」

 

 部屋の扉を勢いよく開け、私はそう言った。

 

 「エルヴィットはヘルディア市街で戦った敵を覚えているか?」

 「覚えているぞ」

 「そいつらの身元が判明した」

 「そうなのかっ……」

 

 エルヴィットは驚いた様子で、私の方へと走ってくる。

 

 実はと言えば、彼女はあることを気にしていたのだ。

 私が戦った少年こと『お兄ちゃん』が、吸血鬼の術式を使うことを教えたのだ。彼女はそれを気にしていた。

 

 「彼の名はない。しかし、『カタストロフィ家』の子であったことは分かっている」

 「『カタストロフィ』……」

 

 エルヴィットは考え込む素振りをする。

 

 「彼に加担していた者の身元も突き止めた」

 

 私はポケットから折り畳まれた資料を取り出す。 

 

 「まず、ヴァルハ・エヴァンドライト。彼はプリュード王国で生まれ、十五の時に行方不明となっている」

 

 しかし、

 

 「彼はヘルディア市街に姿を現した。エルヴィット達は戦っていないから知らないと思うがな」

 「戦っておらんな……確か、余が戦っていた者はハスクとか名乗っておったぞ」

 「そいつの情報もある」

 

 エルヴィットに資料を見せる。

 

 「ハスク・カルテリアと、ネクト・カルテリア……」

 

 エルヴィットはそう呟く。

 

 「最後に、カンナとか言われていた少女についてだが……彼女については一切の情報がなかった」

 「情報がなかった……?」

 「彼女が生きていた痕跡も、その素性も、家族関係も、友人も、出身国も、その他個人情報の一つも掴むことができなかった」

 

 私は帽子を外してそう言った。

 すると、エルヴィットが考える素振りをする。

 

 「関係ないのかは分からんが……余の母国で伝えられている民話があるんじゃが」

 「ほう、聞かせてくれ」

 

 エルヴィットは口を開いて物語を話し始めた。

 

 $ $ $ $ $ $ $ $ $ $

 

 昔々、ある国に一人のお姫様がいた。

 しかし、そのお姫様は冤罪えんざいをかけられて自身の婚約相手であった王子に処刑された。

 王子は別に婚約相手がいたのだ。

 それを知った王族達は王子を咎め――国外追放を成した。

 すると、ある日その王子が自殺したそうだ。

 

 王子はこの時、処刑されたお姫様に殺されたそうだ。

 何故死んだはずのお姫様が現れたのか。

 

 それは冥界の神が、お姫様に同情して現世に蘇らせたためだという。

 それも、復讐神として。

 

 お姫様は王子を殺した後、彼の本当の婚約相手であった王族を殺害し、自分を見捨てた国王を鏖殺した。

 

 続いて国を滅ぼし、そのことから彼女は『黝雪姫ゆうせつき』と呼ばれた。

 

 『黝雪姫』は魔族を殺戮し、それを知った魔王ガレアと大規模な戦争をした。

 しかし、彼女は魔界にいた大半の魔族を殺害し――ついには魔王ガレアと直接戦うことになったという。

 

 だが、流石の彼女も魔王ガレアを倒すことはできずに敗れてしまった。

 

 その時、彼女はこう言った。

 

 「必ず妾は復活する。その時が来れば必ず世界を滅ぼす――と」

 

 $ $ $ $ $ $ $ $ $ $

 

 「世界を滅ぼす、か」

 「それに……彼女についての文献があったのじゃが、それにはこう書かれていたのじゃ」

 

 エルヴィットは真剣な表情をして指を一つ立てる。

 

 「『黝雪姫』は記憶を失って復活する、絶対に死ぬことはない、復活した際にはある国に病気が流行する――と」

 「なるほどな……」

 

 今思えば、あの少女は体を引き裂かれても生きていた。

 それはヴァルハ達も同じだったが、再生にも限界があった。

 更に、確定的な証拠が『復活した際にはある国に病気が流行する』ということだ。

 

 これからの大きな障害になるかもしれない。

 

 私はその厄介さに目をすっと細めた。

 

 「エルヴィット、私達『白銀の豺虎』の目的を覚えているか?」

 「世界征服じゃろ?」

 「そうだ」

 

 私はそう言うとエルヴィットの耳元に口を寄せる。

 

 「今夜、私の部屋に来い」

 「ぶわっ!? な、何じゃ急に……」

 「変なことはしない。さっき言った世界征服について話があるんだ」

 「話……?」

 

 私は愉快さに目を細め、

 

 「そうだ……かなり重要な話だからな」

 「分かったのじゃ」

どうも、焼き鮭です。もうそろそろで第二章が終了します(あとは幕間とか終章とかぶちこむだけ)。

もし

「面白い!」「世界征服はどうなるんだ!?」「自分もリキアに囁いてほしい」

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