11「陰惨」
「隊長! 前方に人を発見しました!」
「人だと……?」
馬車に乗ったエルヴェル帝国騎士団の一隊が、目の前に立つ謎の人物に注目する。
その内の隊長である髭を生やした男が腕を組み、馬車を止めさせる。
「貴様は何者だ!」
このヘルディア市街では、市民が一人も外へ出ていなかった。それは病気に感染することを恐れるためであろう。
しかし、
「それはこっちの台詞なんだが」
人物は剣を背に抱えた男であった。
男は剣を背から抜いた直後、趨走した。
「隊長っ!!!」
男は不気味な笑みを浮かべ、馬車を斬り裂いた。
馬という走者を失った車体はそのまま地面を擦っていく。
「まずい! 全員、戦闘態勢に入れ!!」
隊長は兵士達に叫ぶ。
「へぇ、獲物がたくさんいるじゃん」
「なっ、き、貴様は誰だ!?」
車内にどこからともなく姿を現した一人の少女が呟く。
それに隊長は剣を抜き、斬りかかる。
「ごめんねぇ……あたしはカンナって子を守れって神に言われたからさ。獲物ちゃん達は一人残らずに殺さないといけないんだ」
少女がそう言った瞬間、彼女の体から牙を剥き出しにした『何か』が現れた。
それは伸びていき、隊長の体を食いちぎった。
車内にいた他の兵士達は、怯えながらも剣を構えて少女へと斬りかかる。
「無駄なのにな」
直後、車内を斬り裂いて侵入した男が、兵士を鏖殺した。
それを見た少女は微笑む。
「後は……ウテナって子とレイラって子とユダって子が乗っている馬車を破壊すればいいと」
「俺はこんな仕事したくないんだがな……人を殺すのは飽きた」
「そう言って、トウマって子の家族を殺してたじゃん」
「――仕事だからだ」
男と少女はそんな会話を繰り広げ、馬車を離れていった。
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「貴様は何者だ……!」
「ごはん」
少女は無表情でそう呟く。
私は彼女の言葉の意図が読み取れず困惑する。
なんだあの少女は……。
何を考えているのかが全く分からない。
「きさ、ま……貴様!!」
少女は大声で言うと、こちらへと走り出してきた。
すると、ザギンクが私の前へと出て、
「リキア様、ここは俺に任せてください」
「分かった。では頼むぞ」
ザギンクは両腕と両足から火花を散らし、
「械瑩術式『業火絢爛』」
「ごはん」
少女は瘴気を放ち、鮮やかな赤を燈した炎を灰にした。
続けて少女は跳躍し、ザギンクの機械の右腕に噛り付いた。
「ザギンクっ!!」
エルヴィットが血の楔を少女に向けて放つ。
しかし、少女の頬から口が現れ――血の楔を食した。
「くく、お兄ちゃんカンナと一緒に帝国軍と戦えて幸せだよ」
「し、あわせ……!」
「何だと……」
私は少女と『お兄ちゃん』が会話をする光景を目に、驚愕を口にした。
まさか、あの少年と少女が合体したのか?
瘴気の煙幕と、頬から現れる口。それはつまり、少年の能力を引き継いでいるということに他ならない。
「リキア大将軍、ここはあのサイボーグの青年に倣い――私も行かせてもらう」
ルリオーネは聖邪剣を召喚し、ザギンクの元へ駆けていく。
すると少女の首元から目が出現した。
「ルリオーネ! あの目の視線から離れろ!」
私は叫ぶ。
すると、ルリオーネはニヤリと笑った。
「何を……あれが危険であると私も知っていた」
ルリオーネは刀身を煌めかせた。
剣を鏡のように使ったのだ。
すると、少女の首元に生えていた目が萎んだ。
「何で見抜けるんだよ……」
「みぬ、けるんだよ!」
少女はそう言いながら、拳に瘴気を纏わせた。
「『龍鬼耀戴』!!!!」
トウマは龍神剣を手に、少女へと斬りかかる。
トウマとルリオーネに挟み撃ちにされた少女だが――少女は特に二人を気にしてはいなかった。
「ごはん」
少女はザギンクの左目に指を突き刺す。
「ああああっ!!!!」
ザギンクは悲鳴を上げる。
それを見たエルヴィットが血の結晶を創造し、少女を血の結晶に閉じ込める。
「ザギンク……大丈夫か!!!!」
エルヴィットがザギンクへと駆け寄り、必死にそう尋ねる。
「だい、じょうぶです……」
ザギンクは突き刺された左目を押さえながら立ち上がる。
「「はああああっ!!!!」」
トウマとルリオーネが同時に少女を攻撃した。
血の結晶に閉じ込められていた少女であったが――
「ごはん……お兄ちゃん、貴様」
少女は結晶を砕いて再起し、見えざる力でトウマとルリオーネを吹き飛ばした。
ルリオーネはすぐに体勢を立て直したが、トウマは遥か彼方の方へと飛ばされていってしまった。
「『魔殲球』」
私は漆黒の球を無数、出現させて少女へと飛ばした。
それを見た少女は口元に笑みを浮かべた。
「幸せ……!」
少女は見えざる力を使い、漆黒の球体を遥か上空へと吹き飛ばした。
そして自身にもその不可視の力を使用し、途轍もない速度で私の方へと向かってきた。
「瘴拳殺――伍式『兇雅褻絶』」
「せつぜつ!」
空間ごと全てを切り裂く拳が、私に振りかかってくる。
私は氷の壁を作ってそれを防ぎ、しかし不可視の力によって両足を地面へと接着された。
足が動かない。まさか重力でも操ったというのか?
「ぐっ……」
私は足を動かそうと力を入れる。
しかし、微動だにしなかった。
「――っ、『龍鬼耀戴』!!」
「せつぜつ!」
トウマが少女へと斬りかかっていく。
しかし、トウマは空間ごと引き裂く拳の一撃を喰らい――。
「トウマっ!!!」
トウマは血を吐きながら、吹き飛ばされていった。
どうも、焼き鮭です。
もし
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