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2「記憶喪失の少年」

 風を切るほどの速さで、鎌の猛威が私のすぐ近くを過ぎた。

 少年は無表情で私をじっと見据え、何度も鎌を振り下ろしてくる。

 

 「まだまだだな」

 

 私はニヤリと笑い、少年の背後に回っては蹴りを入れた。

 その衝撃に少年は吹き飛ぶ。

 続けて私は少年の体を蹴り上げ、そして首を絞める。

 しかし、少年も黙ってはいない。少年は私の手を払いのけて懐へと潜り込み、鎌で腹部を引き裂こうとした。

 

 「甘い」

 

 私は氷壁を作って鎌を凍らせ、地面と固定させる。そして少年を蹴り飛ばした。

 見事なことに少年は受け身を取り、何事もなかったかのような顔をして立ち上がった。

 そして少年はどこからか数本のナイフを取り出すと、私の方へと投げつけてきた。

 

 「『炎武麗懋エンブレム』」

 

 私は右手から炎を放ち、ナイフを消却。

 少年は次に、こちらへと走ってくる。

 殴りかかってきたのだ。

 

 「軽いな……本気で私を倒そうとしているつもりなのか?」

 

 連続して放たれる拳を全て受け止め、そして腕を掴み、少年を地面に叩き着ける。

 

 「『雷戦霆獄ラゼゴ』」

 

 少年の全身を波打つ電流が呑み込んだ。

 私は続けて氷の槍を作り、少年の腹へと突き刺した。

 血が飛び、少年は力なく絶命する。

 

 「なに――!?」

 

 すると、少年の全身が突然と発光し始めた。

 そして貫かれたはずの腹部が回復し、氷の槍が溶ける。

 私は後方へ跳躍して少年と距離を取り、警戒心を脳内で総動員した。

 

 「あれは何だ……」

 

 今まで見たこともない事態だ。

 あの光が少年の体を治癒するということか。しかし、術者が死ねば魔法などは唱えることが不可能なはずだ。

 

 「これは面白くなってきたな」

 

 私は好奇心を煽られ、立ち上がる少年を見据えた。

 少年は目を瞑り、そして巨大な魔法陣を展開する。

 

 「出てこい、『龍神剣ナハドメレク』!!」

 

 少年は叫び、手に神々しい剣を携えた。

 顕現した剣は金色の閃光を刀身に纏わせ、世界を歪ませるほどの異質さを放っている。

 

 瞬間、少年は目の前にいた。

 

 「――っ! 『嵐鼕鳴動ラドメア』!!」

 

 私は少し遅れて魔法を唱えた。

 それによって少年は竜巻により宙へと投げ出され、そして雷が直撃した。

 しかし少年は無傷であった。

 そのまま少年は体勢を立て直して剣を構え、私に飛びかかってくる。

 

 少年の振るう剣の一撃を躱し、私は反撃として『魔殲球サジスト』を飛ばす。

 しかしそれは切断され、少年は再度飛びかかって来る。

 私は少年の攻撃を躱したが、その後放たれた彼の蹴りによって、大きく吹き飛ばされた。勢いよく貧民窟の住居へと私は衝突し、住居は衝撃によって崩れる。

 

 「ふふっ……やってくれるではないか」

 

 私は立ち上がり、少年を睥睨へいげいする。

 

 久しぶりに私と匹敵する強者と戦うことができる。それは私にとって、とても嬉しいことであった。

 

 「初めて傷を負ったな。これも嬉しいことだ……」

 

 少年は音を置き去りにするほどの速度で私へと迫り、そして剣を振るう。

 しかし、先ほどとは打って変わって私は反応が遅れることはなかった。

 

 「ぐ……!!」

 

 少年は地面へと倒れる。立ち上がろうと藻掻もがくが、それは無駄だった。

 

 「貴様にかかる重力の負荷を倍増させた。これならば貴様でも抵抗することはできまい」

 

 私は少年のいる方へと歩み寄り、そして魔法陣を展開した。

 

 「殺すのは勿体ない。もしよければ……私と来ないか?」

 

 少年の剣を魔法によって別空間へと送り、そして手足の自由を奪い、私は尋ねた。

 

 「駄目だ……」

 

 すると、少年が俯いたまま小さく言った。

 

 「僕はまだ、人を殺さないといけないんだ」

 

 少年は顔を上げ、大きく言った。

 そして無機質な両目で私を見る。

 

 「何故貴様は人を殺すことに執着する」

 「それは言えない」

 「答えろ。でなければ殺す」

 

 すると少年は緘黙を諦めたのか、渋々と口を開いた。

 

 「なんでか分からないんだ」

 「ん……それはどうしてなんだ?」

 「僕は、自分のことも何をしたいのかも分からない」

 

 少年は悲しそうな表情をして、そう言った。

 

 「ただ――僕は誰かを殺さないといけない。だからこそ、人々を殺すことに決めたんだ」

 「無関係の者まで戮殺するつもりか?」

 「分からないから、探してる」

 

 そんな少年の言葉に、私は思わず笑ってしまった。

 

 「ふははっ、最高に面白いじゃないか。私は貴様を気に入った――」

 「――?」

 

 困った顔をする少年へ、再び私は投げかける。

 

 「もしよかったら、私と来ないか?」

 

 $ $ $ $ $ $ $ $ $ $

 

 「住む場所は私が提供してやる。あ、食料もな」

 

 少年を連れ、私は自身の部屋へと案内していた。

 まだ出会ったばかりの男を部屋に招き入れるのは普通だったら危険だが、流石に私を襲う者などいないだろう。

 

 「一応私は王城に住んでいるからな……別名『寮』と言うのかもしれない」

 「広い……」

 

 少年は男性にしては低めな身長で辺りを見渡し、そう零す。

 私は何だか誇らしくなり、「凄いだろ?」と声をかけた。

 

 「でも……」

 「どうした? 何か気に入らなかったか?」

 「僕はこれからどうすればいいんだ?」

 「なに、人殺しが目的なんだろう? ならば私と共に戦争をすれば、その分多くの人々を手にかけることができるぞ」

 「なるほど……」

 

 少年は考え込むような素振りをする。

 

 「そういえば、名を聞いていなかったな」

 「トウマ」

 「ん、名前は覚えているのか」

 「うん……何でかはわからないけど」

 「私はリキアだ。これからよろしく頼むぞ、トウマ」

 「うん」

 

 さて、これからトウマをどうしようか。

 貧民窟で戦っていた時、彼の体を包み込むように出現した光。そして、龍神剣ナハドメレク。

 

 実際に私がトウマをスカウトしたのも、これがあったからだ。

 これから鍛えていけば、私を超える実力者へと変貌するかもしれない。

 それは楽しみだ。

 

 「トウマ、私は決めたぞ」

 「な、何を……?」

 「――私とトウマで世界を征服しようじゃないか」

 

 トウマはとても驚いたような顔をした。

 

 「安心しろ……全世界を征服した暁には、人殺しが罷り通る世界にしてやればいいだけだ。そうすれば、トウマの目的も達成するはずだ」

 「うん……そうしよう!!」

 

 トウマは明るくて優し気な笑みを殺意に染めて浮かべ、そう頷いた。

どうもこんばんは、焼き鮭と申します。

「面白い!!」「これからトウマとリキアはどうなるの!?」「自分もリキアに蹴られたい」

と思った方はブックマーク、

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