7「夢なんてもう見たくない」
「――ルリオーネさん、あれ!!」
「扉か……しかし数が多すぎるな」
ルリオーネと僕は正面に立ちはだかる二つの扉を発見した。
「私はこちらの扉へと行くが……少年はどうする?」
「僕はこっちへと行ってみるよ」
言葉を交わし、僕とルリオーネは互いに別々の扉を開ける。
そして一度ルリオーネがこちらを見て、
「少年、気を付けるんだぞ」
「大丈夫……それにルリオーネさんも気を付けて下さい」
「ふっ、そうだな……」
ルリオーネはそう言い終えると扉の向こうへと行った。
僕も続けて扉の向こうへと進む。
「ここは……」
惣暗と敞閑。
その二つを孕んだ空間に、僕は一人で立ち尽くしていた。
その直後、後ろから扉が閉まる音がした。
僕は後ろを振り返るも、暗闇のあまり何も見えなかった。
「お兄ちゃん」
「――!?」
あの声がした。
しかし、今までとは違ってより鮮明に聞こえた。
僕は目を見開きながらその声のした方を向く。
「えへっ、お兄ちゃん気付いてくれた」
「そりゃ……」
続きを口にしようとしたところで、僕は異変に気が付いた。
先ほどまで闇に覆われていた世界が、ある草原へと移り変わっていたのだ。
「トウマ、俺のことまで忘れちまったのかよ」
一人の少年が、眉を顰めながらそう言った。
「お兄ちゃん、わたしはオリビアだよ」
「俺は――だよ」
二人は矢継ぎ早にそう口にする。
僕は唖然としたままその場から動くことができなかった。
この二人のことを僕は今まで忘れていたのか。
「どうして僕は……!!」
僕は自分の愚かさを呪った。
この二人は僕にとって大切な人であったはずだ。
なのに、どうして僕は……。
「トウマ君、ここにいたら危ないよ」
「エヴァ……」
「あ、覚えててくれたんだ――でも、とにかく逃げて!!」
「逃げる……?」
その瞬間、轟音を立てて世界が崩落しだした。
草原が崩れて、深淵のように暗い空間が再び顔を出す。
「早く逃げてっ!!!」
エヴァの必死な叫び声に、僕は駆けだす。
どこに行けばいいのか分からない状況の最中、僕はただ真っ直ぐに進んでいく。
ただ、本能が走れと叫んでいる。
だからこそ、僕は足を止めなかった。エヴァの言葉に耳を貸した。
「あれは……っ!!」
目の前に、突如として眩い一つの扉が現れた。
僕はその扉を開け、息を切らしながらその向こうへと行く。
すると、先にここへと来ていたのかルリオーネがいた。
「少年、大丈夫だったか?」
「うん……なんとか」
僕はルリオーネに笑みを返し、呼吸を整える。
すると、ルリオーネが眉を顰めて両目に怒気を露わにしていた。
「それにしても、あの空間は居心地が悪かった」
ルリオーネは何かを憎悪するかのような低い声でそう言った。
「――故人を一時的に蘇らせ、そして情に訴えかけてくるとは」
「ルリオーネさん……」
「とても不快だったが……少年はどうだった?」
「逃げろって言われてここに来たって感じ、かな……」
「そうか。そう言った者は、少年のことを大切に想っていたのだな」
「――?」
ルリオーネが何故か安心した表情をするのを見て、僕はその真意が読み取れずに困惑する。
「さあ、少年よ。早くこの忌々しい屋敷から脱出するぞ」
「そうだね……」
「ちなみにだが、私は故人からこの屋敷の出口を聞いた」
「そ、そうなんだ!」
「確か……」
すると、ルリオーネが聖邪剣を召喚して目の前を切り付けた。
その瞬間、空間に裂け目ができる。
「これは……?」
「元の世界に帰るための出口だ。さあ行くぞ」
ルリオーネはその空間の裂け目へと進んでいく。
しかし、僕は一つ気になったことがあった。
それは――ルリオーネが何故あそこまで何かを憎悪していたことだ。
僕は大して何かを憎むほど悪い景色を見た覚えはない。
だが、そのことは彼女に聞いてはいけないと思う。
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「――私の役目はこれで終わりかな」
「エヴァ……」
エヴァとオリビアは走り行くトウマを見送りながら、そう言う。
すると、少年が顔色を変えた。
「二人共、危ないっ!!!」
「あっ……!」
その瞬間、エヴァの心臓を剣が貫いていた。
「死んだ奴をもう一度殺すなんて……俺様の趣味じゃねえんだけどな」
「エヴァ……!!」
「はい、次はお前だ」
「きゃっ!!」
男がいた。
男は剣をエヴァから抜くと、視線をオリビアへと移す。
「あ、ぁ……」
そしてオリビアは首を絞められ、そのまま呼吸ができずに窒息死した。
男は最後に、腰を抜かした少年を睨み付けた。
「や、やめっ……」
「あの世で大人しくしてろ」
男は少年の喉笛に剣を突き刺した。
そして少年は血を吐かずに死した。
その後男は三人の骸を眺めては溜め息を吐いた。
「――変な仕事を頼まれたものだ」
どうも、焼き鮭です。また新たな登場人物と、謎が出てきましたね。
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「面白い!」「トウマの活躍が見たい!!」「自分もルリオーネに憎悪されたい」
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