20「新たなる強敵」
「――緊急の依頼だ!」
私はユダとレイラ、トウマ、エルヴィット、ザギンクを呼び、そう言った。
「明日から帝国中に蔓延する、謎の病の病原菌をばら撒く悪党共と戦いに行くことになった」
「「「謎の病?」」」
レイラとトウマ、エルヴィットが首を傾げた。
「実は帝国のヘルディア市街という場所で謎の病が流行ってるんですよ。俺はそこに行ったことがあるんですが……酷い有り様でした」
ザギンクが深刻な表情をし、
「路上には病人の死体が転がっていて、店は全て閉店――人気もなく、まるで幽霊の町のようでした」
「本当にそうなんだ……でもそこにいったらアタシ達も病気にかかっちゃうんじゃ……?」
「安心しろ。その謎の病というものは病気にかかった者と接触しない限りなることはない」
不安な表情をするレイラに私はそう言い、エルヴィットへ視線を移す。
「エルヴィット、現地の人々の血を飲まないような」
「それは心得ておる」
「私の可愛い可愛いエルヴィットが病に侵されるのは嫌だからな」
「そういう呼び方はやめろっ!!!」
顔を赤くするエルヴィットを揶揄い、私はトウマの方を向く。
「トウマ、ウテナの体の状態はどうだ?」
「まだ行かせたら駄目だと思う……」
「――私も行く」
「ウテナっ!?」
玲瓏の音が、私の耳へと入り込んだ。
それはウテナによるものだった。
ウテナは包帯を外し、トウマを見て微笑む。
「もう傷は治ったから……私も行く」
「そうか。では『白銀の豺虎』の全員で行けるのだな」
私は口元を綻ばせ、全員を見渡した。
「ではまた明日……早く起きろよ?」
そう言いながら、私はエルヴィットを見る。
すると、エルヴィットが身をのけぞらせるようにしてまた顔を赤くした。
「解散だ」
私は他の全員へ「おやすみ」と声をかけ、自分の部屋へと戻る。
「リキアちゃん!」
「ソフィアか……」
部屋に戻る途中、ソフィアと出くわした。
ソフィアは風呂にでも入ったのか、バスタオルを一つ体に纏っただけの格好をしていた。
「さっきお風呂に入って来たけど凄い広かったよ……本当にやばかった」
「そうか。それは何よりだ」
「リキアちゃん、何か冷たくない?」
「私は付かれたんだ。よりにもよって右手を失っているんだぞ?」
「ああ、義手付けてあげようか?」
「頼む」
すると、ソフィアは太陽のように眩しい笑みを浮かべ――、
「何だか久しぶりだな……こうやってリキアちゃんと会話できるの」
「まあな」
「ていうか、宮殿の中に私の作業室を設けてくれてありがとね」
「颯か……部屋の一つくらい、いつでも貸してやるが」
「やった! じゃあ実験室も作ってくれる?」
「断る」
すると、ソフィアは豊満な胸を揺らしながら頬を膨らませ、
「ええ!? さっき『いつでも貸してやるが』とか言ってたじゃん!」
「お前に実験室なぞ与えたら大変なことになるだろうが。大事なアジトで未確認生物でも作られたら困るんだよ」
「そんなことしないよー!」
「嘘吐け」
私は言いながら、自分の部屋へと入る。
「じゃ、また明日な」
「うん……おやすみ」
ソフィアは私に手を振り、私もそれに左手を振り返す。
私はドアを閉め、溜め息を吐く。
「そういえば報告書を書かねばな……」
机の上に乗せられた紙を見て、私は頭を掻く。
すると、突然私の部屋のドアが開き、
「――ごめんっ! 義手付けるの忘れてた!!」
「ソフィアか……」
「さっきと同じ台詞言わないでよ」
言いながらソフィアは私の部屋へと入ってきて、私の右肩に手を置く。
「リキアちゃん、ちょっと作業室に来てくれる?」
「ふっ、構わないぞ」
そう言葉を交わし、私とソフィアは微笑んでいた。
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「痒い……」
頭を掻き毟り、少年はそう呟く。
痣のある頬を乱雑に爪で傷を付け、紫色の斑点が浮き出た首にまで手を伸ばす。
「全身が痒い。誰か助けてくれねぇかな……そう簡単には来ないか」
少年は右腕から瘴気を出しながら、ある家の屋根に飛び乗る。
「――はっ、家の中に籠ってても無駄だって言うのに」
少年は屋根を殴り壊し、中にいた家族の前へと着地する。
「お前ら、楽しみの時間だ……」
すると、少年の体から三人の男女が姿を現した。
少年の体を突き破るようにして現れた三人は、家にいる家族を睨み付ける。
「ひっ……!!」
「母さん、逃げろ!!」
「お母さん、怖いよ……」
母親と見られる女が、幼い少女を連れて逃げようとした。
しかし――、
「逃がすわけないじゃん。行け、ヴァルハ」
「お兄ちゃんの仰せのままに」
そう言いながら、一人の青年が母親へと飛びかかる。
「俺はこの父親を殺させてもらうぜ……殴殺刑だな、ひひっ」
「ちょっとハスク、たくましい男は私が殺るのよ!」
もう一人の男と、女が言い争う。
「駄目だよ、二人共……お兄ちゃん、本気で怒るよ?」
そう言いながら、『お兄ちゃん』は母親と一緒にいた少女を睨み付ける。
「ボクより年下の子は……全部お兄ちゃんのものだからね」
『お兄ちゃん』はニヤリと笑いながら、生気を失った目をする少女へと近付く。
「やめろっ、近付くな!!」
「黙れよ」
青筋を浮かべた『お兄ちゃん』は、父親を睨み付け――彼の全身を枯れ木のように細くした。
全身が皮一枚になった父親は軽い音を立ててその場に倒れる。
それを見届けた『お兄ちゃん』は、少女へと歩み寄り――、
「さあ、いいことしよ」
「うん!」
母親を仲間である青年に強姦させ、『お兄ちゃん』は少女の体を弄んだ。
どうも、焼き鮭です。
実は、この回で第1章は終了となります。
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