17「追跡」
「――リキア様!!! どうか俺を『白銀の豺虎』へと入れてください!!!!」
「きゅ、急にどうした……」
アジトに戻った途端、サイボーグの青年が私へと駆け寄り、そう言ってきた。
彼の目がとても輝いており、私は思わず直視できなかった。
「と、とにかく落ち着いてくれ……私はエルヴィットを寝かしに行かねばならん」
「おいおい、兄ちゃん……大将軍様を困らせてんじゃねぇよ」
低い男の声がしたかと思えば、ユダがいた。
ユダはソファに座り、胴を包帯で包まれている。
「ユダか。医療施設には行ったようだが……そこで安静にしていなかったのか?」
「けっ、オレがじっとしていられるわけねぇだろ。またオレはてめぇと戦いてぇんだ」
ユダは「痛ぇ」と言いながら立ち上がる。
すると、サイボーグの青年がユダを睨んで、
「お前、何故リキア様のアジトにいる」
「なに、『白銀の豺虎』とやらへ入らせてもらったからだよ」
「リキア様、それは本当ですか?」
「ああ。堕天使ルシファーの力が使える男なのだ……殺したりするのは惜しい」
「ですが……」
「――いくら敵であろうが、戦力にはなる。私は私のために、彼をここへ誘っただけだ」
青年は口を開けたまま、私を見つめていた。
「青年、名を何と言う?」
「俺は帝国騎士団所属騎士、ザギンクです!!」
「ザギンク、貴様を『白銀の豺虎』へと入れてやろう」
「ほ、本当ですか!! ありがとうございますっ!!!!」
礼儀良くザギンクは一礼をする。
「よし、そうとなればザギンクのその体――もっと強いものにしてやろうではないか」
「部品を交換するんですか……?」
「そうだな。ザギンクの両腕、胴、両足、全てのパーツを更に強化されたものへと交換し――飛躍的にザギンクの実力を上げるんだ」
「それは楽しみですね……俺、どこに行って交換してくればよろしいでしょうか!!」
「安心しろ、アジトには一人――科学者を呼んできているからな」
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「トウマとレイラはウテナの看病をしに行ってくれ」
「ああ」「了解っ!!」
二人はそれぞれ呼応して、ウテナのいる部屋へと走っていった。
私はそれを見送り、エルヴィットを部屋へ寝かせに行く。
「夜ごはんの時、どうやって起こそうか」
私はそう言いながらエルヴィットの寝顔を見つめ、微笑んだ。
その後、部屋の外で待っていたザギンクと合流し、科学者へと会いに行った。
暫く歩き、『作業室』と幼稚じみた字で書かれた札が貼ってある部屋へと到着した。
「おっ、リキアちゃんじゃん!!」
すると、緑色の髪をした女がドアを開けて私の方へと駆け寄って来る。
「ソフィア様じゃないですか……!!!」
「おっ、噂のサイボーグ君じゃん」
ソフィアはザギンクに近付き、彼の腕を掴んで眺める。
「そう興奮するな……後でじっくりと観察などできるだろ?」
「ごめん……ワタシ、こういう機械系好きだからさ」
「ソフィアは何にでも好奇を示すだろ。今までどれだけのものを調べ尽くしてきたことか」
実はソフィアと私は昔に同じ研究者としての同期だったのだ。
私は研究者から大将軍へとなったから彼女とは疎遠になっていたのだがな。
「別にいいじゃん!! それでこうやってリキアちゃんとまた会えたんだし」
「まあ、お前の技術力は本物だからな。それで有名になって再会できたのも頷ける」
ソフィアは帝国でも随一の技術力を誇る科学者だ。
「で、サイボーグ君の体を強化してほしいとのリキアちゃんから依頼が来てね……サイボーグ君、ちょっと着いてきてくれる?」
「は、はいっ!! 是非とも宜しくお願い致しますっ!!!」
ザギンクはそう言い、ソフィアと共に歩いていった。
「ソフィアの奴め……」
私が少し癪に障ったのは、ソフィアが去り際にこちらを向いてウインクをしてきたことだった。
ソフィアがザギンクに変なことをしなければいいんだがな。
「大将軍様よぉ」
「ユダか」
すると、ユダが宮殿の柱へ寄りかかってこちらの様子を窺っていた。
そして、私を海淵のように深い青の瞳で見据えている。
「あのサイボーグの兄ちゃんが、どうやってこのアジトへと来たのか知ってるか?」
「それは知らないな」
「大将軍様のように移動魔法を使って移動してたのさ。この宮殿に」
「なに――!?」
移動魔法は、一度行ったことがある場所にしか行くことができない。
つまり、あの青年は『白銀の豺虎』のアジトであるこの宮殿へと訪れたことがあるということだ。
「――用心しないとな」
私は帽子を被り直し、そう口にした。
どうも、焼き鮭です。
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