16「魔王の右腕」
――殺しますよ、か。
「できるものならな」
私は少女に嘲笑を送り、魔法陣を展開する。
仮面を被った男はやれやれと言ったばかりに頭を振り、姿を消した。
「――っ! 死神が逃げた!!」
「おい、余所見などするな。貴様は私を殺すのであろう?」
「そうでしたが……」
少女は焦った様子で、口を開く。
つまり、この少女はあの仮面の男を狙っていたわけか。
ならばエルヴィットのことも容易に帰してくれてもいいのではないだろうか。
「何故そこまでしてあの男を追う?」
「そうではないですよ……私はただ、魔王様のためにあの死神を消さないといけなかったんですから」
「しかし……貴様は何故自分のことを秘匿する? 明るみになったら大変なことになるのか?」
「そりゃあ大変なことになりますよ」
少女は魔法陣を展開し、
「私を目撃した者は、ただちに処分しなければ――本当に本当に、魔王様へ迷惑がかかっちゃいますからね」
「ふっ、面白い……やはりあの魔力の反応は貴様のものであったか」
私は『魔殲球』を唱え、漆黒の球体を少女へと飛ばす。
しかし、少女は溶けるように地面の中へと消えて球体を躱した。
「『死の舞踏』」
その瞬間、私がいた空間が歪み始めた。
「貴様……このレベルの魔法をいとも簡単に唱えるとは」
「あなたも『魔殲球』という高位魔法を使えるではないですか」
「確かにそうだな……言っておくが、私は高位魔法しか扱うことができない」
そう言いながら、私は『雷戦霆獄』を唱える。
地面を眩い電流が走り、空間全体を襲った。
しかし、少女には命中せず。
「ほう……」
「受け止めるとは」
鬼神双斧ムラギリを使い、もう一人の分身体である少女が私に斬りかかってきた。
少女は両手に巨大な斧を携えており、それを振るうスピードが異常に速かった。
「だが……私に勝てると思ったのが判断ミスだ」
私は言いながら、少女を斧ごと凍らせる。
そして銃を構えてこちらの様子を窺う少女を睨み、
「『炎武麗懋』」
火炎を放った。
少女は火炎を正面から喰らい、黒焦げとなって骸を晒した。
「ふふっ、流石はエルヴェル帝国最強の大将軍ですね……」
地面の中から少女が現れ、分身体の少女を消した。
それと同時に斧と銃も消失し、それを見届けた私は腰から刀を抜く。
「あの少女は返してあげますよ。私とて、ここで足止めを喰らっていては目的の遂行ができないので」
「ほう、魔王軍である貴様があっさりと人間である私を帰してくれるのだな。情報が漏洩することを恐れていたのではないか?」
すると、少女は私を睨み付け、
「もし私のことを口外すれば――その時は私が本気であなたを殺しに行きます」
「ふっ、できるのならばな」
私はそう言葉を返し、エルヴィットを抱きかかえる。
「――あなたとはまた、どこかで会えそうな気がします」
少女が嬉々とした声音でそう言ったのを最後に、私は亜空間から元の世界へと戻った。
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「リキア!!」
「トウマ、エルヴィットは無事だぞ」
私が観光船へと戻ってきた途端、近くにいたトウマが駆け寄ってきた。
トウマはエルヴィットを見て、とても安心した表情をする。
「良かった……エルヴィットちゃんは無事だったんだね」
レイラまでもが駆けつけてきて、眠っているエルヴィットに微笑む。
私はふと、この場にいない一人の少女が気になった。
「二人共、ウテナはどうした?」
「ウテナなら僕がアジトに送ったよ」
「そうなのか……」
私は安堵し、「さて」と二人へ声をかける。
「任務は達成した。早速アジトに戻るぞ!!」
「「おう!!」」
二人は同時に返事をした。
私はそのまま移動魔法を唱え――そして左腕に抱えられたエルヴィットを見つめる。
「本当に愛おしい奴だ……」
どうも、焼き鮭です。
もし
「面白い!!」「エルヴィットを自分も抱えたい!!」「自分もリキアに抱えられたい」
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