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15「白銀の豺虎vs海賊③」

 「まさか、堕天使ルシファーの力を使うことができるとはな」

 

 男は五つほど『魔殲球サジスト)』を浮遊させ、私に放つ。

 しかし私も『魔殲球サジスト)』を唱え、それぞれを衝突させる。 

 

 「『魔殲鏖花サジェスタ』!!」

 「ほう……」

 

 男は両手から黒い光線を放ち、それと同時に『魔殲球』を十個もの数放って来る。

 それらを全て躱し、私は『霖氷鋭刃エジヒット』を唱え、氷の刃を男に飛ばした。

 男に刃は直撃し、彼の体に刺さる。

 しかし、男は私に笑い返し、再び『魔殲鏖花』を放ってきた。

 

 「『異空変化ガゼル』」

 「なに――っ!?」

 

 黒い光線を異空間へと送り、私は魔法陣を展開する。

 そして衝撃波を発生させ、男を客室ごと吹き飛ばしていく。 

  

 「私を甘く見たことが原因だな。もう諦めろ」

 「く……ハハハっ!! オレの負けということか」

 

 男は笑い出した。

 

 「しかし、貴様が最後放った『魔殲鏖花サジェスタ』も『魔殲球サジスト』もかなりの威力だった。私であろうとも喰らっていれば死んでいたかもしれない」

 「そうかよ」

 

 男は血を吐き、立ち上がろうとする。

 

 「交渉があっただろ? オレは負けた……それって、オレの率いる海賊団が敗北したのと同じだよな?」

 「そうだ」

 「だからこそ、オレは交渉に誓っててめぇの仲間にならねぇといけねぇんだな」

 「そうだな……だが、貴様も潔く負けを認めるのだな」

 「オレは自分より強い奴と戦えて、楽しかったよ。こんなに悦楽を得るのは初めてだ」

 

 私はよろめく男に左手を差し出し、

 

 「私は大将軍リキアだ。それにしても――私の右手を斬り落とすとは大したものだな」

 「そうかよ……オレはユダ。巷じゃ最強の海賊って言われてたけどよ……それももう終わりだな」

 「ユダ、取り敢えず王城へと向かおう。そこにある医療施設へと入り、傷を回復してきてくれ」

 「あいよ……オレ、移動魔法使えねぇからよろ」 

 「ああ」

 

 私は男を王城へと移動魔法を使って転移させた。

 

 「さて……あの魔力の反応について調べに行くか」

 

 そう言いながら私は跳躍して、客室から甲板の上へと移動する。

 すると、息を切らしながら走っているトウマが目に入った。

 

 「どうした、トウマ」

 「実はエルヴィットが見つからなくて……近くにいたはずなのに」

 「ん……エルヴィットが消えたのか。もしやあの魔力の反応は空間を移動する魔法か?」

 

 そうだとすれば、何者かが『亜空転移グゼル』を使った可能性が高い。

 それも、かなりの実力者が。

 

 「エルヴィットではない誰か、か……しかし、海賊団の船員である可能性は低いな」

 

 ユダが率いていた海賊団には、強大な魔力を持っている者はいなかったはずだ。

 しかし、これは私の推察だが。

 

 「トウマ、レイラはどこにいるか知らないか?」

 「アタシはここだよっ!!!」

 

 すると、レイラが私の方へと駆け寄ってきた。

 

 制服の袖が破けている。私のように腕でも切断されたのか?

 まあ腕の再生は済ませてるみたいだから問題はないか。

  

 「あれ、リキア……腕が」

 「気にするな。義手にすればいいだけの話だ」

 

 私の右腕が欠けていることに、レイラが目を見開いて心配する。

 だが、私は腕が千切れようがどうでもよかった。

 

 「しかし、ここらで謎の多大な魔力の反応を感じてな。何か心当たりはないか?」

 「アタシはあまり強い魔法なんて唱えてないよ」

 「僕は『龍鬼耀戴』を使ったけど……前にもリキアの前で使ったことがあるから、違うか」

 「そうだな……私が思うに、『白銀の豺虎』のメンバーが使えるレベルの魔法ではなかったからな」

 

 空間転移魔法など、そもそもこの帝国では私以外誰も使えないのではないだろうか。

 

 すると、一人の青年がウテナを抱えてこちらへと走ってきた。

 

 「リキア様!!」

 「ん、確かサイボーグの青年だったか……いたのか?」

 「いや、一応いたのですが……あの大鎌を持った男にやられてしまい」

 「そうか。そういえば確かに海賊船には機械の部品みたいなのが散らばってたな」

 

 青年はかちかちと機械の腕を振り、

 

 「確かにそうですが、俺の体は首の根元に付いているコアが壊れさえしなければ元通りになるので」

 「そうなのか……それは凄いじゃないか」

 「あの男はどこに行ったのでしょうか? 一応、応援の要請はしておきましたが」

 「その必要はない。もう男は討伐した」

 「では、俺は観光客の避難を手伝ってきます」

 

 青年はウテナを置き、そして客室の方へと走っていった。

 

 「リキア、あの人は……?」

 「帝国騎士団の青年だ。サイボーグなのが結構話題になっててな」

 「なるほど……でもあの人は仲間に入れないのか?」

 「いや、入れるとも」 

 

 私は帽子を被り直しながら、続ける。

 

 「彼は優秀だ。全ての戦場を生き抜いてきている」

 「そうなんだ……でも追いかけなくていいのか?」

 「いや、今はエルヴィットを探すことを優先しないとな」

 

 私は左手で空気中を探る。

 すると、指先に妙な冷気を感じた。

 

 「二人はウテナを連れて観光客の避難をしに行ってくれ」

 「リキア、何をするの?」

 

 レイラがそんな問いかけを私にする。

 

 「――亜空間へと行ってくる」

 

 そう言いながら私は冷気のする部分に指先で穴を開けた。

 傍から見れば妙であろう。突如空間に穴が開いたのだから。

 それを広げ、私はその先に広がる真っ白い空間へと入る。

 

 「リキア、気を――」

 

 レイラが何か私に言ったが、それは空間の穴が閉じて最後まで聞き取ることはできなかった。

 

 「――おや、客人ですかね」

 

 その空間にいた黒髪の少女が、私を見てニヤリと笑った。

 彼女の足元には気を失ったエルヴィットがいる。

 

 「貴様か、エルヴィットを攫ったのは」

 「攫ったなんて言い方はどうかと思いますが……まあそれは本人の自由なので構いません」

 

 少女はそう言いながら、三人に分身した。 

 

 「ほう……かなり良い武器を持っているじゃないか」

 「知ってますか?」「鬼神双斧きじんそうふムラギリと」「呪姦銃じゅかんじゅうエクソシストですよ」

 「ああ、知っているとも。古代、魔界と精霊界に存在していた伝説の武器だろう?」

 

 すると三人の少女はそれぞれ歪んだ笑みを浮かべ、

 

 「ご存知でしたか」「ですが」「私はあなたと争うつもりはありません」

 

 そう言いながら、一人の仮面を被った男へと攻撃を仕掛ける。

 

 「面倒だな……俺の魔法障壁を破るとか、どうやったらできるんだよ」

 

 男は後頭部を掻きながら、面倒くさそうに零す。

 

 「ていうか、どっかの帝国の大将軍様まで来てるし」

 

 そう言いながら、男は銃撃と斧による攻撃を全て軽やかに躱す。

 それを見た少女は舌打ちをし、魔法陣を展開する。

 

 「戦っているところ悪いが、私はあそこに倒れている吸血鬼の少女に用があるのでな。少女を連れて帰らせてもらう」

 「それは駄目です」

 「何故だ?」

 「私のことを見た……今まで秘匿されてきた私の情報があの少女によって公になれば、魔王様へ迷惑になりますから」

 「魔王……それはつまり魔王ガレアのことか?」

 「ええ」

 

 少女は私の問いかけに頷いた。 

 

 「無理にでもあのエルヴィットとか言う少女を連れていくというのであれば――」

 

 そして少女はこちらを向いて、途轍とてつもない殺気を漂わせる。

 

 「殺しますよ?」

どうも、焼き鮭です。

もし

「面白い!!」「あの黒髪の少女、マキナって子は一体何者?」「自分もリキアと亜空間へ行きたい」

と思った方はブックマーク、そして評価をしていただけると幸いです。

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